満天の星を見に行こう。
車を走らせたら行けるには行けるけれど、俺たちは違う方法を選んだ。
少し特別感のあるプラネタリウム。
無機質な空間なのに、どことなく神聖な感じを覚えさせる。
俺たちが座ったのは、円形の二人用の特別シート。
座ると自然に天を見上げられて、気持ちが落ち着いた。
始まると、清らかな空気、臨場感を高める音。優しく響く解説の声。
そして、広がる満天の星。
そっと彼女が俺の肩に頭を乗せる。その体温が心地好かった。
没入感が高いストーリーだけれど、彼女の体温が独りじゃないと伝えてくれる。
俺は自然と彼女の手を繋ぐと、彼女も応えるように手に力を入れてくれた。
いつか、ふたりでこの星空を見に行こう。
そして、今日のことを思い出して、沢山話したい。
おわり
お題:星空
さて、今日はどうしようか。
そう言えば、先日可愛い出会いがあったな。
とある救急隊員の青年と、不器用な女性の小さな出会い。
よく怪我をする彼女。
病院へ行く時に、青年が居るようにしてみようか。
偶然よ、きっかけとして働いてくれるかい?
ありがとう。
ああ、二人が楽しそうに話しているよ。
ほうら、やっぱりだ。
紡がれている糸の色が濃くなった。
良かった。
偶然よ、ありがとう。
お互いを知るきっかけになったよ。
さて。
あとは君たちで、その色をもっと濃く、もっと強くして。
そして、未来を紡いでおくれ。
おわり
神様だけが知っている
いつか……なんて、ちょっと考えている。
仕事の関係で、時々通るこの建物が視界に入ると、ついそんなことが脳裏に過ぎってしまうんだ。
仕事が直帰になって通ったその場所に、なんとなしにバイクを停めて、そこに足を向けた。
扉は開いていないけれど、一歩一歩近づく。
そこは、小さな教会。
彼女と暮らし始めて、まあ時間は経つ。
喧嘩もする。
怒ったり、注意されたりもする。
それでも居心地の良さを日々感じていた。
いつか。
家族になる時に、ここでお世話になるのもいいかもしれない。
この扉が開いて、この道の先に俺が彼女を待っていたい。
そんなふうに思った。
おわり
お題:この道の先に
待ち合わせの喫茶店に、仕事の関係で遅刻してしまった。
会社を出る前に、彼へ連絡はしていたものの、申し訳なさが先に出てしまう。
「遅れてごめんなさい」
先に来ていた彼は窓際のテーブルに座っていた。
陽射しを背負って、逆光に見える彼。
それでも満面の笑みで迎えてくれた。
ああ、彼は太陽みたいに笑う人だな。
〝好き〟の代わりに、胸に紡がれた。
私の想い。
おわり
お題:日差し
今日は二階にある喫茶店で待ち合わせをしていた。
青年の仕事と、恋人の仕事の都合を考えて、この喫茶店で待ち合わせにした。
ぽこん。
スマホに通知が来る。青年はスマホを見つめた。
『もう少しで着きそうです。遅くなってごめんなさい』
今日、出社する人も少なく、引き継ぎがなかなか出来ずに会社を出るのが遅くなった。そう連絡は貰っていた。
それでも、遅くなってごめんなさいと言ってくるのが、実に彼女らしいなと、青年は小さく笑ってしまう。
そうこうしている間に喫茶店の窓から、彼女の姿を見つけた。
相当慌てていたのか、髪の毛が跳ねているのが分かり、胸が暖かくなって笑ってしまった。
頬を付きながら、彼女を愛おしそうに見つめる。
「俺は待つのも楽しいけれどね」
おわり
お題:窓越しに見えるのは