いつか……なんて、ちょっと考えている。
仕事の関係で、時々通るこの建物が視界に入ると、ついそんなことが脳裏に過ぎってしまうんだ。
仕事が直帰になって通ったその場所に、なんとなしにバイクを停めて、そこに足を向けた。
扉は開いていないけれど、一歩一歩近づく。
そこは、小さな教会。
彼女と暮らし始めて、まあ時間は経つ。
喧嘩もする。
怒ったり、注意されたりもする。
それでも居心地の良さを日々感じていた。
いつか。
家族になる時に、ここでお世話になるのもいいかもしれない。
この扉が開いて、この道の先に俺が彼女を待っていたい。
そんなふうに思った。
おわり
お題:この道の先に
待ち合わせの喫茶店に、仕事の関係で遅刻してしまった。
会社を出る前に、彼へ連絡はしていたものの、申し訳なさが先に出てしまう。
「遅れてごめんなさい」
先に来ていた彼は窓際のテーブルに座っていた。
陽射しを背負って、逆光に見える彼。
それでも満面の笑みで迎えてくれた。
ああ、彼は太陽みたいに笑う人だな。
〝好き〟の代わりに、胸に紡がれた。
私の想い。
おわり
お題:日差し
今日は二階にある喫茶店で待ち合わせをしていた。
青年の仕事と、恋人の仕事の都合を考えて、この喫茶店で待ち合わせにした。
ぽこん。
スマホに通知が来る。青年はスマホを見つめた。
『もう少しで着きそうです。遅くなってごめんなさい』
今日、出社する人も少なく、引き継ぎがなかなか出来ずに会社を出るのが遅くなった。そう連絡は貰っていた。
それでも、遅くなってごめんなさいと言ってくるのが、実に彼女らしいなと、青年は小さく笑ってしまう。
そうこうしている間に喫茶店の窓から、彼女の姿を見つけた。
相当慌てていたのか、髪の毛が跳ねているのが分かり、胸が暖かくなって笑ってしまった。
頬を付きながら、彼女を愛おしそうに見つめる。
「俺は待つのも楽しいけれどね」
おわり
お題:窓越しに見えるのは
ろうそくの火のように、簡単に消えちゃいそう。
それが彼女の第一印象だった。
彼女が怪我をして、俺が助けて、怪我をしては、助けての繰り返しの彼女。
いつものように好きな飲み物を配っていると、渡したその飲み物を大切にしてくれていたと知った。
自分の好きな飲み物を教えると、新商品のその飲み物を俺に渡してくれた。俺も渡していたから同じものを交換しただけになって、笑いあった。
俺に後輩ができた頃、彼女にも後輩ができていて、その姿に頼もしさを覚えんだ。
好きな色、好きなもの。
それと、重なる時間が嬉しいんだ。
振り回され、自分の気持ちを押し付けられることばかりの俺を、気遣ってくれる人。
彼女が良いって思うのは、自然な流れだと思った。
「引き寄せた……よね?」
何気なく見つめた左の小指。
絶対に彼女にも繋がっている、よね。
おわり
お題:赤い糸
「うわあ……」
外に出て車を走らせる。
角を曲がりビル群から抜けて見えた空は、自分が大好きな爽やかな水色。
真っ青な空の下から白い縦長の三角雲に感動を覚える。
視界に広がる水色の中に立ち上る真っ白な入道雲は、とても綺麗だった。
車を端に寄せて、降りてスマホを向ける。
ぱしゃり。
スマホの画像を確認すると、先程見た水色の空が写っていた。
そして、迷わず恋人に、この写真とメッセージを送る。
『見て見て、綺麗な空だよ』
車のドアを開いて座席に座り込むと、スマホが震えた。
『すごいきれいですね!』
早い返事に自然と頬が緩む。
この後、すぐ会えるのに早く見せたくなったのだ。
ぽこんと通知が入る。
『雨が降る前に、迎えに来てくださいね』
その文字を視界に入れてハッとした。
あの雲は夏の風物詩の入道雲……積乱雲と言うやつだ。という事は、これから雨が降る!?
スマホをポケットにしまい、シートベルトを付けると周りの車を見ながらアクセルを踏み込み、積乱雲に向かって車を走らせた。
雨が酷くなる前に迎えに行かなきゃ!!
おわり
お題:入道雲