初心者太郎

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12/17/2025, 1:23:37 AM

—予知夢—

夢の中で未来を見ることができる友人がいる。内容はまちまちだが、夢の中で見たことが必ず現実になる素晴らしい力だ。

ある時はテストに出る問題を、ある時は天気が急変する未来を、ある時は事故が起きる場所を。

俺はそんな彼の能力に助けられた。
五年程前、その友人からおもしろい夢を聞いた。

『僕たちが立ち上げた会社が、数年後に大企業になる夢を見た』と。

俺は内定が決まっていた会社を蹴り、急いで準備に取り掛かった。
数年後、彼の言った通り、俺たちの会社は世界中が注目する企業にまで成長した。


「今日はどんな夢を見たんだ?」

通勤中、気になって電話で友人に聞いてみた。いい夢だったらいいな、と心の中で思った。

『今日はおもしろい夢だったなぁ』彼の少し震える声が聞こえる。
「へぇ、それは早く聞きたい」

暗く細い道に差し掛かった。朝早いせいか、人はいない。

突然、背後から走る足音が聞こえてきた。
ゆっくり振り返ると、ナイフを持った知らない男が近づいてきていた。

『君は最近ギャンブルを始めたんだね』友人は続ける。『会社の金を横領してやっているそうじゃないか』

男との距離はだんだんと近づき、そしてついに、持っているナイフで腹を突き刺された。
身体が熱い。

『それを知った僕は腹が立って、君を殺しちゃう夢を見たんだ』
「こんなことをしてタダで済むと思っているのか!」

今出せる精一杯の声で、彼に言った。

『大丈夫さ。だって夢では大丈夫だったからね』

あぁ、本当に素晴らしい力だな、と思いながら俺の意識は暗闇の中に沈んだ。

『今までありがとう』友人は最期にそう言った。

お題:君が見た夢

12/16/2025, 5:13:01 AM

—日の出のベンチ—

最近、早朝の公園を走っていると、いつも同じベンチにお爺さんが座っていることに気がついた。
僕は気になって声を掛けてみた。

「朝早いですね」

お爺さんはゆっくりと顔をこちらに向けた。

「君は、毎朝ここでランニングをしている少年かい?」
「はい、そうです。お爺さんは何をしているのですか?」
「朝を見ているんだ」

お爺さんは、東側の空を指差して言った。太陽が昇る方角だ。

「私はね、病気でもう先が長くない。でも、太陽が昇っているあの瞬間を見ると、生きているって感じがするんだ」

お爺さんは穏やかに笑った。

「ランニング頑張れよ」

それから数日後、お爺さんは公園に来なくなった。
僕は今日もランニングを終えて空を見る。
あの人が言っていたことが少しだけわかるような気がした。

お題:明日への光

12/15/2025, 4:53:08 AM

—人に避けられない方法、募集中—

俺は今、夢を見ている。
遠い遠い高いところから、自分を見下ろしているのだ。

学校の中の様子が鮮明に見える。
ただ廊下を歩いているだけなのに、みんなから避けられている。

「あっ、これ落としましたよ」

側を通った男子生徒が、ハンカチをポケットから落とした。俺はそれを拾って渡した。

「あ、ありがとうございます——」

ハンカチを受け取ったその男子は、そそくさに逃げ出した。
俺は気にする素振りも見せる事なく、また歩き始める。

避けられる原因はわかっている。金色の頭、鋭い瞳が原因なのだろう。髪色も目も遺伝なんだから仕方ないだろ、と思う。
だが、こんな反応をされることも、また仕方のないことだと思う。

いつものように机で寝たふりをする。
ここで夢は途切れ、布団の中で目を覚ました。

顔を洗いに洗面台に向かう。鏡に向かって笑顔を作ってみた。

「ちょっとはマシに見えるかな」

人から好かれるまではいかなくても、誰かと話せるくらいにはなりたいな、と思う。
今日も一日頑張ろう、と鏡の前で気を引き締めた。

お題:星になる

12/14/2025, 3:41:19 AM

—人間には見えない繋がり—

「ママ大変だ、ポチがいない!」

夫が額に汗を浮かべている。
どうやら愛犬が脱走したらしい。夫は庭の手入れを、私は二階で洗濯物を干していたので気が付かなかった。

「二手に分かれて探しましょう」
「あぁ、わかった」

急いで玄関を飛び出した。
夫は駅の近く、私は愛犬の散歩コースを探しに行く事にした。

「どこに行ったんだろう」

名前を呼びながら探すも、反応はない。
公園を出て、住宅街に入った。しばらく進むと、遠くから鈴の音が聞こえてくる。それと共に犬の鳴き声。

シャンシャンという音が、徐々に近づいてくる。

「見つけた!」

先程とは別の小さな公園にいた。
ポチは知らない犬と駆け回っている。一緒に遊んでいるように見えた。

「ポチ、帰るよ」

私がポチを抱えて帰ろうとすると、ワンワンと吠え出した。

「どうしたの?」

ポチの目線は、下にいるグレーの子犬に向けられている。寂しいのかな、なんて私は思った。
ふと、少し離れた木の下のダンボールが目に入った。子犬が一匹入る大きさの。
スマホをポケットから出して、電話をかける。

「ポチを見つけたわ。ねぇ、駅の近くにペットショップがあったでしょ?そこで、一本リードを買ってきて欲しいの。……何でって?いいから買ってきて」

私は二匹を連れて、家路に着いた。

どうしてポチはこの子犬に気がついたんだろう。人には見えない何かがあるのかな、なんて頭の中で考えた。

お題:遠い鐘の音

12/13/2025, 2:05:45 AM

—スノードーム—

雪が降っている。幸いそこまで積もってはいない。僕は雪の上を歩いていた。
何故ここにいるのかは、覚えていない。

「ハルト、雪合戦しようよ!」

一人の青年が駆けてきた。背丈は一七〇センチくらい。
彼は僕の名前を知っているが、僕は誰か分からなかった。目線は僕と同じくらいだから、歳はあまり変わらないだろう、と思う。

「いいよ」

彼をどこかで見たことがあるような気がする。気のせいかもしれないけれど。

僕たちは両手で雪玉を丸め、投げ合った。

「負けないぞ!」
「こっちこそ!」

楽しい。
あれ、前にもこうやって誰かと雪合戦をしたはずだ。だが、思い出せない。
頭が痛い。酷い頭痛がする。

「ねぇ、俺のこと覚えてる?」彼は訊いた。
「分からない……」

「また遊ぼう」その場でうずくまった僕を置いて、謎の青年は消えてしまった。

——

俺は病室でVRゴーグルを外した。仮想空間から帰ってきた。

「リク君、どうですか?ハルト君は何か思い出せそうですか」白衣を着た男性が訊いた。

彼は医師であり、記憶喪失に関しての研究を行っている斉藤さんだ。記憶を失ったハルトのためにサポートしてくれている。

「まだ分かりません」
「そうですか……」

俺たちが育った場所は、毎年よく雪が降る。よく雪合戦して遊んだから、何か思い出してくれるだろうと期待したけれど、そう簡単にはいかないようだ。

「では、もう少し様子を見てみましょう」
「はい、よろしくお願いします」

俺が絶対思い出させてやるからな、そう心の中で呟いた。

お題:スノー

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