初心者太郎

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—日の出のベンチ—

最近、早朝の公園を走っていると、いつも同じベンチにお爺さんが座っていることに気がついた。
僕は気になって声を掛けてみた。

「朝早いですね」

お爺さんはゆっくりと顔をこちらに向けた。

「君は、毎朝ここでランニングをしている少年かい?」
「はい、そうです。お爺さんは何をしているのですか?」
「朝を見ているんだ」

お爺さんは、東側の空を指差して言った。太陽が昇る方角だ。

「私はね、病気でもう先が長くない。でも、太陽が昇っているあの瞬間を見ると、生きているって感じがするんだ」

お爺さんは穏やかに笑った。

「ランニング頑張れよ」

それから数日後、お爺さんは公園に来なくなった。
僕は今日もランニングを終えて空を見る。
あの人が言っていたことが少しだけわかるような気がした。

お題:明日への光

12/16/2025, 5:13:01 AM