初心者太郎

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—人間には見えない繋がり—

「ママ大変だ、ポチがいない!」

夫が額に汗を浮かべている。
どうやら愛犬が脱走したらしい。夫は庭の手入れを、私は二階で洗濯物を干していたので気が付かなかった。

「二手に分かれて探しましょう」
「あぁ、わかった」

急いで玄関を飛び出した。
夫は駅の近く、私は愛犬の散歩コースを探しに行く事にした。

「どこに行ったんだろう」

名前を呼びながら探すも、反応はない。
公園を出て、住宅街に入った。しばらく進むと、遠くから鈴の音が聞こえてくる。それと共に犬の鳴き声。

シャンシャンという音が、徐々に近づいてくる。

「見つけた!」

先程とは別の小さな公園にいた。
ポチは知らない犬と駆け回っている。一緒に遊んでいるように見えた。

「ポチ、帰るよ」

私がポチを抱えて帰ろうとすると、ワンワンと吠え出した。

「どうしたの?」

ポチの目線は、下にいるグレーの子犬に向けられている。寂しいのかな、なんて私は思った。
ふと、少し離れた木の下のダンボールが目に入った。子犬が一匹入る大きさの。
スマホをポケットから出して、電話をかける。

「ポチを見つけたわ。ねぇ、駅の近くにペットショップがあったでしょ?そこで、一本リードを買ってきて欲しいの。……何でって?いいから買ってきて」

私は二匹を連れて、家路に着いた。

どうしてポチはこの子犬に気がついたんだろう。人には見えない何かがあるのかな、なんて頭の中で考えた。

お題:遠い鐘の音

12/14/2025, 3:41:19 AM