—愛の方程式—
最近、妻と会話をする事が減った。結婚してから三十年も経つのだから、仕方ないとは思う。
付き合っていた頃は、いつも何かを話していた。会えない時には、電話越しに夜更けまで会話したものだ。
もちろん、以前のような胸の高鳴りはない。
「なぁ、今度映画館にでも行かないか?」
私は妻をデートに誘ってみた。
「いいですよ。一緒に出掛けるなんて久しぶりですね」
妻はそう言って笑みを浮かべた。
恋という感情はとっくの昔に消え去ってしまった。それでも一緒に居たいと思うのは、愛がある故である。
だからもし『愛 — 恋』という方程式があるならば、その解は愛であると思うのだ。
お題:愛 — 恋 = ?
—幸せはもうここに—
子供の頃は病気がちで、よく入院していた。父はお見舞いに来てくれる時に、よく梨を持ってきてくれた。
大人になってから知ったことだが、病気見舞いで梨を持っていくことはあまり良くないらしい。でも私は梨が好きだから、むしろ嬉しかった。
「お父さん、早く良くなると良いね」
私が大人になって、今度は父がよく入院するようになった。
「いつもありがとうなぁ。俺も梨が好きなんだべ」
そう言いながらむしゃむしゃと食べる。
食が細くなったせいで、父の体はだんだんと弱々しくなっていく。
「何か欲しい物があったら言ってよ」
「それなら、アイの幸せな話が聞きてぇな」
まだ冗談を言う余裕はあるらしい。私は父が食べ終わった皿を回収した。
「じゃあまた来週来るから、ちゃんとご飯食べて元気にしててね」
「何で無視するんだべ。まぁいいや、いつもありがとうなぁ」
「うん、またね」
そう言って、病室を後にした。
今度は、私が父に恩返しをする番だ。父が好きな梨をまた買っておこうと思う。
お題:梨
—最高のライバル—
親友が、大学進学の為に上京するという。その大学はサッカー部が強い。何人ものプロ選手を輩出している、有名な大学である。
駅の改札口で彼の後ろ姿を見つめていた。
「他の奴らに負けるんじゃねぇぞ」
俺は、小学校の頃から彼と一緒にサッカーをプレーしてきた。だから、周りの誰にも負けてほしくなかった。
「当たり前だ。今度は敵同士で——」
俺は地元の大学に進学し、サッカーを続けるつもりだ。
「また会おうな」
「あぁ。試合であたったらボコボコにするからな」
俺がそう言うと、彼は笑った。
最後に手を振って、彼が見えなくなるまで見送った。
「絶対負けない」
次会う時には、絶対に彼よりも上手くなって見せる。彼と再会できるのを楽しみにしながらも、心は闘志で熱く燃えていた。
お題:LaLaLa Goodbye
すみません、後日書きます。
お題:どこまでも
—New Game—
知らない交差点で、目を覚ました。断片的な映像を辿りながら、昨日の出来事を整理する。
夕方、渋谷駅で中学の時の友達と待ち合わせた。そして十年ぶりに再開して、近くの居酒屋で一緒に呑んだ。もちろんその店だけでは話し足りず、何軒か梯子して……。
呑みすぎた。一軒目を出た後からの記憶が曖昧だ。
「まずい……」
ポケットの中に手を突っ込んだ。スマホがない。昨日の夕方は持っていたはずの、バッグもない。あそこには財布が入っていたのに。
詰んだ。
体育座りをして、顔を埋める。
「ダイジョウブデスカ?」
カタコトの外国人が話しかけて来た。俺は涙交じりの目を彼に向けて言った。
「大丈夫だったらこんなところで座ってません……」
「ニホンジン、ミンナイイヒトダカラネ、タスケテアゲルヨ!」
彼はそう言うと、千円札を渡した。俺は震える手でそれを受け取る。
「あぁ……、ありがとうございます……!」
「バイバイ」
彼はそう言って去っていった。
まるでゲームのイベントのようだった。
お題:未知の交差点