すべてを失った自分をあたたかく迎え入れてくれた人。
その人を失いたくはなかった。
失ったら最後、自分をこの世に繋ぎ止めるモノが無くなってしまうとわかっていたから。
だから、あの人のためならば、自分はどうなってもいい。
そんな思いを抱いて、今まで生きていた。
剣を取り、無数の命を屠ってきたのも、すべてあの人のため。
それなのに、あの人はそんな自分を見て、いつもかなしげな表情を浮かべている。
どうして?
自分は、どこで間違ってしまったのだろう。
自分は、どこであの日の温もりを手放してしまったのだろう。
わからない。
けれど、戻ることのないあの日の温もりを抱いて、自分は今日も……。
「So, cute!」
夢の国という遊園地の中で、観光客と思しき外国人が、ネズミのカチューシャをつけた私を見てそう言った。
確かに155cmにも満たない小柄な私は、彼らから見たらかわいらしい存在なのかもしれない。
加えて東洋人は彼らからは若く見えるという。
けれど、私は何を隠そう昭和の生まれ。
これだけは隠しようのない事実である。
記憶は消えてしまうけれど、記録は永遠なのだろうか?
いや、データは劣化していつかは消えてしまうことがあるから、永遠に残るものなんて無いのかもしれない。
「はい、誕生日プレゼント」
そう言って君が押し付けてきたのは、一輪の花だった。
しかも花屋で売っているような名前のある立派なものではなくて、道端に咲いている雑草の花。
けれど、どんなに高価な物をもらうよりも嬉しかったんだ。
あの花は押し花になって、今も大切にしているよ。
この世界に魔法があったなら、人間はとうの昔に滅んでしまっただろう。
今の世の中を見ていると、なぜだろうかそう思わずにはいられない。
魔法も科学も、使い方を間違えれば毒にしかならないのだから。