すべてを失った自分をあたたかく迎え入れてくれた人。
その人を失いたくはなかった。
失ったら最後、自分をこの世に繋ぎ止めるモノが無くなってしまうとわかっていたから。
だから、あの人のためならば、自分はどうなってもいい。
そんな思いを抱いて、今まで生きていた。
剣を取り、無数の命を屠ってきたのも、すべてあの人のため。
それなのに、あの人はそんな自分を見て、いつもかなしげな表情を浮かべている。
どうして?
自分は、どこで間違ってしまったのだろう。
自分は、どこであの日の温もりを手放してしまったのだろう。
わからない。
けれど、戻ることのないあの日の温もりを抱いて、自分は今日も……。
2/28/2025, 6:02:48 PM