君の名前を呼んだ日、君を助けることができた、そう思ってた。
けれど、それは思い上がりだった。
壊れてしまった君の心を辛うじてこの世界につなぎとめただけだった。
どうすれば、君を助けることができたんだろう。
今も私は、自問自答を繰り返している。
暑い。
五月だというのに、何なんだ、この日差しは。
「あっつーい!」
「暑いよ……」
「アチい……」
無数の暑さに対する苦情が、青い空にとけていった。
嗚呼……。
ため息ばかり出てくる。
ため息をつくと幸せが逃げていく、そう聞いたことがある。
知っているはずなのに、気がつくとため息ばかりついている。
理由は特にない。
このままでは、私は不幸の塊になってしまう。
そんな折とあるテレビの番組で、ため息をつくと若干ではあるがカロリーが消費されると言っているのを見た。
眉唾ものの話ではあるが、私はその説を信じてみようと思った。
ため息ダイエット、果たして成功するだろうか。
薄暗い押し入れの上の段は、私にとって秘密の場所だった。
さしずめ秘密基地といったところだろう。
けれどもちろん押し入れは布団の収納スペースであるから、常時入れるわけではない。
なので、夕方布団を敷き終わってから夕飯までのわずかな時間に限られる。
独特の臭いがする薄暗く狭い空間は、安心することができた。
何をするでもなく、そこにこもっているとなんとなく落着き安心できた。
今や縦横に成長してしまった私は、もうそこには入れない。
薄暗い六畳の洋室に置かれたベッドの上が、今の私の唯一安心できる場所である。
約束、苦手な言葉だ。
交わすからには、必ず守らなければならない。
守れるかどうかわからないから、約束するのが嫌だった。
約束を破るという行為が許せないから。
だから、約束が嫌いだ。
約束は、守るためにある。
破るために交わすものじゃない。
そう頑固に思い込んでいる。
面倒くさい性格だなあと、自分でも思う。