内藤晴人

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 薄暗い押し入れの上の段は、私にとって秘密の場所だった。
 さしずめ秘密基地といったところだろう。
 けれどもちろん押し入れは布団の収納スペースであるから、常時入れるわけではない。
 なので、夕方布団を敷き終わってから夕飯までのわずかな時間に限られる。
 独特の臭いがする薄暗く狭い空間は、安心することができた。
 何をするでもなく、そこにこもっているとなんとなく落着き安心できた。
 今や縦横に成長してしまった私は、もうそこには入れない。
 薄暗い六畳の洋室に置かれたベッドの上が、今の私の唯一安心できる場所である。

3/8/2025, 4:14:31 PM