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5/13/2025, 8:32:51 AM

ただ君だけ

おはようって言いたい。
おやすみって言いたい。
一緒に歩いてほしい。
一緒に休んでほしい。
どこかへ出掛けるときは隣りに居て。
どこに居ても独りにはしないから。

勝手に死なないで。先に死なないから。
無理に生きないで。死ぬ時は一緒でしょう?

愛さなくていい。
愛そうとしなくていい。
勝手に愛してるだけだから。

そう思ったのも、全部全部、ただ君だけ。

4/29/2025, 12:05:34 PM

好きになれない、嫌いになれない

連絡先を交換して1年が経った。季節イベントに誘ってみたり、休みを合わせてご飯や飲みに出掛けたり。県内をドライブしたり、1回は県外にも小旅行に行ったりした。仲良くなってはいる。お互いに思うことはあっても、友愛や家族愛の濃度は増したと思う。

ただ、段々と君の優先順位が変動している。

ほろ酔い以上に酔っていれば優先順位は高い。理由は単純で、足元が覚束ないせいとずっと構ってくれるから。君は酔っている時に話した内容は丸っきり覚えていないけど、それでも寝るまでずっと自分の方を見てくれている。
アルコールを摂取していない状態の君はいつだってスマホやゲーム機とにらめっこで、話し掛けたって生返事だ。すぐに怒るし自分の知らない誰かと行った旅の思い出話を聞かせてくれる。だから優先順位は低め。

「毎日一緒に過ごす友達よりも、月に1回会えるか分からない友達を優先する」
君は確かにそう言った。その考え方には同意する。但し、だからといって毎日一緒に過ごす友達を蔑ろにしていいわけではないと自分は思っている。君もきっとそう思ってくれているとは思う。自分との約束を反故にした数日後に、君は別の友達の為に早起きをして出掛けていったれど。

約束を反故にされる度に君の優先順位は下がる。どうにも君を信頼することが出来なくて、好きになれなくて、君の中の自分は都合の良いただの便利な人間で友達ですらないのではないかと勝手に落ち込む。

それなのに君は「結婚式をするなら」「一緒に住んだら」と未来の話をするようになった。未だにプロポーズの返事もしていないくせに、まるでこの人は自分から離れることなんてないと確信しているみたいに。だから嫌いになれない。

4/7/2025, 4:12:20 AM

新しい地図

「4月を記念日にして旅行に行こう」
君がそんなことを言った。年の始めの方にある誕生日を、半ばすっぽかされて拗ねた自分に君がそんなことを言ったんだ。付き合っているわけではないから記念日という感覚は無いけれど、確かに連絡先を交換したのは昨年の今頃だったかと思い出す。
しかし、なぜだか今年の頭から、自分自身への誕生日プレゼントのような形でもう1つ仕事が増えトリプルワークになった自分に休みはない。1月には誕生日休みという名目で3連休を取っていたけれど、君がやらかしてくれたおかげで(休みなど取らなくて良かったじゃないか)とワーカホリックが加速するだけに終わった。
そんな君の冒頭の台詞。
希望と猜疑心を半々に織り交ぜて「そうだね」と返した。次は忘れずに計画を立ててくれるだろうという期待を込めた希望的観測と、いつも通りお金はないし当日になったら寝過ごすんでしょ?という諦めにも似た猜疑心。有給を使わずにシフトの調整でわざわざ休みを作ったんだよ、という独り善がりな八つ当たりも添えて。

「12時に起きる!起こしてね」
そう言って君は昨日眠りについた。今朝の5時頃の話だ。眠る時間自体に問題はない。いつも通り。自分も同じ時間に寝たから、まぁ起きられなくてもいいやと思って。
目覚めは11時で自分としてはよく寝た方だ。君は12時頃にもぞもぞと動いて何かを言ったが言葉にはなっていなかった。「起こしてね」とは言われたが、アラームを掛けているわけでもない人を起こすのは忍びなくて起こさなかった。せっかくの休日だし寝ていればいい。最悪14時までに起きなければ君を置いてドライブに行くだけだ。君と一緒に行くと楽しさが増幅するだけで、特段一人がつまらないわけではない。起こさなかったら君は怒るだろうけどね。

先月の末ぐらいからせっせと作っていた、君と行きたいところを記した新しい地図は暫く役に立たなさそうだ。

1/14/2025, 2:28:05 PM

そっと

起こさないように、そっと。君の生活を邪魔したくないだけなんだ。君が普段寝ている時間に不自然に起きてしまうことがないように。ゴミを片すビニル袋の擦れる音では起きない。ホッとする。着替える際の衣擦れの音でも起きない。このまま。寝ていてくれと頼みながら、最後の難関に挑む。いつもここで起こしてしまって、寝ぼけて打った『がんばれ』の文字が届くのだ。玄関に置かれた鍵を手にドアを開けてそっと外へ出る。内から鍵を開けるのは大丈夫。外から鍵を描けるのも大丈夫。最難関は鍵をポストに入れること。どんなに慎重に事を進めても"カツンッ"という音が響く。あとは運任せ。車に乗った時にメッセージが届いていたら負けなのだ。今のところ勝率は五分五分。今日は勝てるだろうか。

機嫌を損ねないように、そっと。君の顔色を伺う。君の声音に耳を澄ます。何が悪かった?どれが駄目だった?怒っているのとは違う。拗ねているのとも違う。あるのは、自分が君の機嫌を損ねたのだという事実だけ。言い方が悪かったのだろうか。それともタイミングが悪かったのか。考えても分からなくて、自分が原因だということしか分からなくて。自分を見ているだけで機嫌を損ねるのではないかと、そっとその場を離れる。君の機嫌をまた損ねてしまった。



そっと消えてなくなってしまえば。

12/9/2024, 12:17:24 PM

手を繋いで

自分の記憶にないぐらいの年の頃から皮膚科兼アレルギー科のかかりつけ医がいる。幼少期は皮膚が弱すぎて、日光に負けて顔を火傷したり、膝丈程の草むらに入ったら全身に蕁麻疹が出たり。市販薬に負けるからと水疱が一つ出来ただけで病院に行っていた。病院に行ったところでステロイド軟膏に負けるから「清潔にしてください」と言われるだけだったらしいけど。
そんなこんなで自分は人との触れ合いが嫌いである。幼少期に慣れてないというのもあるけれど、過敏症で指先の感覚が少しばかりおかしいせいもある。蛇口を捻って出てくる水はスライムみたいに感じるし、手触りが良いと思う生地感はとても限定的で服やタオルはおいそれと買い足せなかった。まだ2歳ぐらいだった頃、出掛けた先で親が手を繋ごうとしたら泣いて嫌だと拒否されたと恨みがましく未だに言われる。
それでも酷かった手荒れは年齢を重ねる事に回復していて、今では季節の変わり目に水疱がぽつぽつと出来るぐらいだ。中学〜20歳ぐらいまで酷かった手掌多汗症も、環境が変わって躁鬱病が軽くなったら殆ど無くなった。過敏症は未だに治りそうではないけれど、自分の中の許容範囲が広がったのか水をスライムみたいに感じても(今日もスライム!)と思うだけ済むようになった。あれだけ気持ち悪くて泣きそうだったのに。

それなのに、親ですら拒否を示したのに、なぜか君とは手を繋ぐ。繋ぐと言うよりは一方的に握ると言った方が正確ではあるけれど。君は握り返すわけでもなく、ただただされるがままで、邪魔だと思った時は手の甲をぺっぺっと払ってくる。そういう時は大概トイレに行きたいだとか煙草に火を付ける時や誰かに返信をする時で、それ以外は(どうせ握るんでしょ)と言わんばかりに手をこちらに差し出してくる。差し出してくるだけで君から繋いで来ることはないから、たちが悪い。そんな君は最近、君が酔っている時にこちらから手を繋ごうとしないと時たま手を繋ごうとしてくる。シラフの時に聞いてみたら「友達と手を繋ぐの好きだもん」と返されて自分は首を傾げる。酔っている間だけ友達認定されている……?

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