優しさという言葉について、何度も考えたことがある。
私は優しいという言葉が嫌いだし
優しい人だと言われるのもあまり嬉しくない。
様々な考え方があるとは思うけれど
私は優しさの中身はそれと比例する量の偽善だと思っているから。
みんなが人のためになど生きていけなくて
自分のために生きていく。
誰かのためにしてあげたことなど一度もなくて
巡り巡って自分のために発言して、行動しているのに
そこに優しさなどあるのだろうか?
今、優しい人だと思われたなと感じる度に
私は自己への偽善のメーターが増えたように感じて
居心地が悪い。
けれども人に優しくしないということが、できない
嫌われたくないからだ。
誰から見ても優しくていい人だと思われたい。
優しさなどどこにも存在しないと主張するのに
何を言っているのだろうと思う。
ただ、物心ついた時から付きまとうこの感覚に
少し疲れてきてしまった。
誰かが優しいと受け取ったらそれでいいんだと、
今は少しだけ思えるようになった。
誰かが私の言動で温かい気持ちになったり
よかったと思えることがあるのなら、
私の中身がなんであれ、それで充分ではないか。
そんなことを思えるようになるまでに
多量の時間がかかった。
ここまで書いて、
けれども私だっていつでも優しいわけではない
ということに気づき、恥が生まれてきた。
ここまで優しさを考え抜いても
自分のために牙を振う時もある。
それでもいい
自分のために生きてもいい
誰かのために生きなくていい
その人のために行きたいと思った時にだけそうして
そうしなくてもいいと思ったらやめていい
みんなが自分のために生きているんだから
私だって自分のために生きても
なにもうしろめたいことはない。
なにも恥ずかしいことはない。
私はここまで書いたことを
半分も自分に言い聞かせられないけれど
だからこそこうして記した。
いつか読み返した日には
もう少しだけでも頷けるような人間になっていますように。
美しいものは全て嫌いだ
鮮明な色彩で彩られた絵画
視界いっぱいに広がる花畑
太陽の光を浴びて輝く紅茶
どこまでも続くように見える水平線
誰かからもらったずっと忘れられない優しさ
誰かがずっと大切にしている幸せ
誰かが目を輝かせて追いかける夢
誰かが信じてやまない愛情の欠片
そういう全部に私は、苦しめられていると思う。
ずっととか絶対なんて、ないことはわかっていたはずなのに
私は美しいものから捨てていた。
美しいから憧れたのに、美しいから手を伸ばして
美しいから近づいたのに、美しいから捨てた。
眩しいのだ、それらは全て。
その眩しさは私の目を、耳を、脳を、臓器を狂わせて
それに耐えられなくなったから、捨てたの。
ずっと大切に胸に抱えていられたら、どれだけ良かっただろうか。
美しさを浴びる存在を見ていると
それが終わっていく様を想像する。
その度に私は思うのだ。
私は、なんで愚かな人間なんだと。
だから美しいものは、全てが嫌いだ。
それは、君が見た夢の話だった
世界にはたくさんの生き物が住んでいてね
人間だけじゃない、
犬も鳥もクワガタも
ぬいぐるみもスマートフォンだって
みんなが喋ることができるんだ。
それはとても、素晴らしいことだと思わない?
けれどもね、ちっとも素晴らしくなんてないんだ。
言葉は時に姿を変える。
まるっこくてやさしい顔をする時もあれば
鋭く尖ってこちらを睨みつける時がある。
だから、言葉と意思を持ったものがたくさん存在するその世界は
どんどんとおかしくなっていったんだ。
言葉は愚かだ。言葉は呪いだ。言葉はときに人を殺すんだ。
そう、君がまるで何かに取り憑かれたように語った時
そういえばこれが君の夢の話だったと思い出した。
君はこの夢の中でどんな顔をしただろうか。
何一つわかることはなかったけれど
そんな夢を見た君が、どうか救われてほしいと、
まるっこくてやさしい言葉だけを浴びて生きてほしいと、
願うばかりだった。
駅の改札口で、女子高生が三人。みんな短すぎるプリーツスカートの下にジャージのズボンを履き、スクバにじゃらじゃらと大きなぬいぐるみを下げた子たちだった。一人の子が、「じゃあ気をつけてね!」と大きな声を出したことで私の意識はそちらに向いた。その表情はなんの曇りもなく相手を思いやる人のそれで、私は友情って本当にあるんだなと思った。そして同時にそれを恨めしく思ったり、悲しくなってしまわない自分を心底安心した。調子の悪い日は過剰反応してしまう部類の出来事なのである。ここまでの出来事はたった数秒で、私はその風景を横目に改札内に入った。すると恐らく一人が改札を通った後も、「元気でねー!」「頑張れ!」などと言った大きな声が響き渡る。よほど仲がいいのか、少し迷惑だなと思ったし、恥ずかしくもないのかなとも思った。しかしその後すぐ聞こえた声で私の気持ちは簡単に変わった。「離れてもずっと一緒!」私の中の何かが崩れた。あの子たちのことは何にもわからない。今を生きる女子高生だということしか、わからない。今は卒業シーズンではないし、引っ越しでもするのだろうか。涙が出そうだと思ったけれど、別に出なかった。ただそこに間違いなく正しい形をしたものを提示されたことに、酷く動揺した。同時にあの子たちが本当に"離れてもずっと一緒"であることをただ祈った。私のようにはなってはいけないよ、なんて思ったりもした。私は三人が今日まで過ごした日々、撮った写真、交わした言葉などを勝手に想像した。冬が近づく風が吹く地下鉄のホームに降り立ち、こういう時、私は思う。こんな人間になってはいけないよ、と。
先に行くよなんて、誰もいっていないのに
私は誰かがそう言い放つ未来に縛られた。
君は私の手を握ってしゃがみ込んでくれていたのに
私は下ばかり向いて君の顔なんて見ていなかった。
どうしたら君の顔を正面から見られるようになるだろうか
私はとっくにおかしくなったしまった頭で真剣に考える。
どうか、いかないでください
私を置いていかないでください