テレビのニュースが梅雨明けを告げる。「異例の早さでの梅雨明けです」という言葉に、去年も聞かなかったかな?と思い、きっと私がお婆ちゃんになる頃には梅雨なんてなくなってしまっているかもしれないと少し寂しくなる。
梅雨は、意外と好きだ。何故かと問われるとうまく形容し難いのだけど、世界が平等に雨に苛まれるところ、だろうか。なんの理由もなく晴れよりも雨のほうが好きな人はあまりいないと思うし、別に全人類の不幸を願っているほどでもないけれど幸せそうな人を見ると卑屈な自分が顔をだしてしまう私にとっては、丁度いい。それに、人々が傘をさして歩く景色はなかなか面白い。雨が降ったら傘をさすという習慣もだし、様々な絵柄のそれは色んなことを思わせる。綺麗なお姉さんは晴雨兼用の折り畳みであろうもの、サラリーマンはコンビニで至急調達したであろうビニール傘。個性溢れる傘選びは見ものである。
梅雨が終われば夏が来るわけだけど、私はあまり夏が好きではない。
妙にアクティブな季節だし、夏だからという理由で起こるイベントが軒並み興味がないからだろうか。水着を着たくないから海は好きではないし、虫は活発になるし、そうめんも好きではない。唯一夏祭りには浴衣やりんご飴、綿菓子などに風情を感じて心が躍るけど、確定演出の人混みに参加する前から気が滅入ってしまうため滅多に参加した記憶がない。夏にあまりいい思い出がないのだろうな、と思う。では寒い季節にはあるのかと問われると、別にそういうこともないけれど。梅雨と同じような理由で、冬もなんだか許されているような気がするから、好きなのだと思う。
けれども、夏の音楽を聴いたときにしか得られない感情があるのは事実だ。夏の曲は、どの季節のそれよりもなんだか情景描写がリアルなものが多い気がする。それだけ夏が人に与える影響が大きいのだと思う。蝉の音と踏切の警報音から始まる音楽にハズレを知らない。フェードインして、一瞬の静寂の後かき鳴らされるギターの音がたまらないのだ。冬に聴いたって同じく素敵なことに変わりはないけれど、やはり夏に聴く夏の曲良い。
私はこの先もずっと夏が好きにはなれないけれど、夏がくるたびに鬱陶しさを感じながらも終わる頃には寂しさを覚えるのだろうと思う。ずっと自分のことを追いかけていた男の子が、突然自分から興味を失ってしまった時のような。自分勝手に振られてしまったような気分に。
そんな、夏がくる。
6/29/2025, 8:38:38 AM