ほたる

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きみをつれて、なにもない場所までいければいいのに。


そこには青い空が広がっていて、まっしろなくっきりとした雲が浮かんでいて。地面はふかふかで、寝転がったらいつまでも眠ってしまいそう。
けれどもせっかくきみといるのだから、眠るのは勿体無いと言っていつまでも話そう。飽きたらやっぱり眠って、目を覚ませばまた隣にきみがいるんだ。

そこにきみと私を脅かすものはなにもない。
ただきみと私が存在しているだけ。

本当は美味しい食べ物や、綺麗な景色や、魅力的な音楽や、スマートフォンだってあったらいいなと思うけれど、そんな完璧な世界は別に求めてないんだよ。
きみが苦しいと認識するものがなければ、他にはなんにもいらない。世界から悲しみや痛みが消え去ったとして、その分だけ喜びや幸せが減ってしまったとしても。私は変わらずきみを愛しているという自信があるよ。きみがいて、私がいるという事実だけで、そこにうまれる温かさが絶対にあるんだ。

そんな世界に、いけたらいいのに。

ハッと我に帰ると、そんな景色はどこにもなくて。ここはただの、昨日までも何も変わらない日々。今もきみが悲しいと思い続ける世界。もし私がきみを連れ去ったら、きみは私をヒーローだと思ってくれるのだろうか。別に、そんなふうに思ってほしいわけではないのだけど。私はきみのヒーローになりたいわけじゃない、ただきみにヒーローみたいな人が現れてほしくて、それがあわよくば自分であればどんなにいいだろうと思うだけなのだ。

逃避行、なにもない、空想の世界に。
きみと私だけがいる、救われた先の日々に。

7/12/2025, 6:38:40 AM