『フランシア』
すっかり寝ていたのに、突然眩しい光が差し込んで
私は目を開けた。
あれ?
どうして私はここにいるんだろう。
目の前に広がる風景は、まるでおとぎ話のようだ。
メルヘンで可愛いピンクなお城。見慣れないお洋服を着た人たち。それから、知らない匂い。
私は確か自分のベッドで寝たんじゃなかったか。
昨日、美味しいものをたくさん食べて、
それから……どうしたんだっけ?
ただただ、大きなお城や街ゆく人々を見て呆然としていると、一人の男性が話しかけてきた。
「どうしたの?迷った?」
おそらくここは城下町で、慣れない人は迷うのだろう。
「…………あ、」
迷ったわけではなくて、ここがどこか分からないんです。と答えようとした。…のだけれど、声は掠れて出ただけだった。
「声が出ない?大丈夫?
…それに、見たことのないお洋服だね。
とりあえず一緒においでよ、家はあるの?」
横に首を振ると、
「ないんだね、分かった。
じゃあ今日は僕の家に行こう。」
そう言って、彼は私を自分の家まで連れていってくれた。いったい私がいたところはどこへ行ってしまったのだろう。
「君はどこから来たの?
文字は書ける?」
家に入ると、早速質問をされる。
紙とペンを渡されたので、
私は
《フランス》
と書いた。
「フランス?ほんと?
フランスって言うのは、この国になる前の国の名前なんだって。この国、今はフランシアって言うの」
フランシア。これは未来なのか。
「そっか…、君は遥か過去から来たんだね」
少しだけ悲しそうな顔をした君は、
昔の話をしてくれた。
お題:目が覚めると
『解かれた心』
私の手元には、封印の魔法によって封じられた日記がある。
これは、私に遺した彼の日記だ。
私に遺したというのに、私には開けない。
封印の魔法は解除の魔法をかけることにより解かれるが、その解除の魔法を知るのは、封印の魔法をかけた本人のみ。本人が記していない限り他の人は知ることが出来ず、永遠に閉ざされたままだ。
「……どうして見ることを許してくれないの」
よほど酷いことが?
いや、彼の性格上そんなことは書かない。
なら、なぜ?
そうして私は、彼の遺した日記など頭の片隅に追いやったまますっかり忘れてしまっていた。
あれから、弟子にして欲しいと懇願してきた子供の面倒を見て過ごしている。
それほどまでに時間が経ち、彼の死も受け入れて乗り越えることが出来た。
弟子のために古い魔術の本を探そうと家中をひっくり返していると、かつての日記が出てきた。
「…………これ」
結局、どう解くのか分からない。そのまましまって、見ないようにした。そうして乗り越えた、彼の死。今なら、冷静に見れる。
くるくるとその日記を回していると、日記の端の部分に微かな汚れがあった。剥げそうで、剥いでみようと思った。
『ルルと僕が、出会った日から……10日後。』
私と彼が出会った日のことは良く覚えている。
街がお祭りでどんちゃん騒ぎ、毎年魔法使いは舞台で技をお披露目する。
若い魔法使いなら修行の成果。余裕があれば楽しく見せる、綺麗なものを魔法で作る。など。
そんなお祭りの日は、毎年12月25日。
つまり、この封印の魔法を解く日にちは
1月4日。解除の魔法を唱え、日にちを言う。
すると、張ってあったはずの魔法は溶けて、日記が開いた。
「………………こんなこと、わざわざ日記に書いて何年も保存しないでよ」
『死んじゃっても、ルルのことが大好きだよ。』
また、引きずってしまうじゃない。
お題:閉ざされた日記
『微睡み』
ふ、と目が覚めた。
何時だろう、と考える間もなくスマホを見る。
あぁ、まだ4時か。
『3:56』とスマホに浮かぶ数字が教えてくれる。
普段なら6時半まで二度寝をする時間だが、今日はありがたいことに休みだ。
珍しく、起きてみようかな(どうせ眠くなっても平気だし)、と思った私はカーテンを開ける。
まだ薄暗く、空は夜明けを教える色をしていた。
ふわあ、とひとあくびをして洗面所へ向かう。
顔を洗って、とりあえず歯を磨いてキッチンへ向かう。
お湯を沸かして紅茶を淹れる。
カララ…と窓を開けてベランダに出る。
まだ少し肌寒い、のんびりと流れる時間。
朝とは言えない、この絶妙な時間。
まだ、ほとんどは寝ているであろうこの時間。
いつもとは少し違う世界に居るような気がして、
何故だか落ち着く。
とても静かな生活音を聞いて、
のんびりと過ごして満足したらお部屋に戻る。
なぜか早く起きてしまった日に良くやることだ。
あー、眠い。やっぱり二度寝しようかな。
現在、4:30分。
30分しか起きてないじゃん。
お題:《夜明け前》
『別れ』
ぽっかりと、心に穴が開いたようだった。
これが喪失感、というものだろう。
妙に冷静だった。
隣に君が居ないことを正しく認識し、
それでもなお、冷静だった。
君が居ないのだから君の荷物を片付けなければならないな、と思った。
君が買ってきたアイスもそのままだから、食べてしまわないとな、と思った。
君が好きだったお菓子、君の服、君の想い出全てがこの部屋に詰まっていて
片付けながら、涙が溢れた。
君はもう居ないのだ。
そう、また思ったとたんになにもやる気が起きなくなった。どんどん溢れる涙に戸惑いを隠せなかった。
もっと君と居たかった。
君も、きっとそうだった。
僕はこれからもずっとこの喪失感が消えないのだろう。
君がいた日々が、思い出になっても。
お題:《喪失感》
『こころのきらめき』
こころのきらめき
それは、みんながもってる、すてきなもの
だけど、いつか、なくしてしまうかもしれない
とてもとても、せんさいなもの
あなたにも、やどってる
あなたにも、ともされている
こころのきらめきは、いつだって、あなたのみかた
お題:《きらめき》