ふとした瞬間
君のふとした瞬間の仕草にドキッとする。
君の頬杖を突く白い長い指その指先に
綺麗にピカピカに磨かれている爪と
色とりどりのネイル
そんな君の姿に見蕩れているとふと君と目が合った。
可愛い笑窪をへこませて口元を緩く上げ
笑う君の笑顔は、非常に罪作りな綺麗な
笑顔なので僕は、咄嗟に視線を下げ
どきまぎするのが精一杯だった。
あんな破壊力抜群の笑顔を向けられたら
免疫の無い異性は、いちころだろう!
それを分かっているのかいないのか
君は、クスクスと笑っていた。
その笑顔にまんまと引っかかっている僕に
君からは、もう逃げられないと悟った。
まるで蜘蛛の巣にかかった蝶みたいな僕
だけれど全然不快感を感じ無いのだから
もう仕方ないと諦めるしか無かった.....。
どんなに離れていても
どんなに離れていても君の電話口の声は、
「早く帰って来てね!」
「必ず帰って来てね!」の一点張りだ。
一つの所に長く留まれない僕の放浪癖が
彼女をそうさせるのだろう....
それが分かっていて僕は、また君を置いて
旅に出る
でもそれだって君が待ってるって知っているから出来る事なんだよ!
そう君に言ったらきっと頬を膨らませて
怒り出すんだろうなぁと想像出来る。
『そう思うなら離れないでよ』なあんて
言葉を添えて....
「こっちに恋」 「愛にきて」
【こっちに恋】
大通りを真っ直ぐ行くと右端にお洒落な
喫茶店がある ピンク色の外装がいかにも
メルヘンチックだ!
ドアを開けると内装も可愛いが散りばめられ客層も女性客やカップルでごった返している。
結論から言うと男の俺には、非常に
入りづらい店だった。
なのに何故俺は、お店のドアを開けてし
まったのだろうと顔を赤くしながら
後悔するもドアの前に立ち尽くしていると
「いらっしゃいませ~ お一人様ですか?」 その声にドキリと俺の胸は、高鳴る。「こちらへどうぞ!」とにこやかな
笑顔で席まで案内される時間 俺の頭は、
真っ白になっていた。
長い黒髪をポニーテールにしてフリルの付いたこの店の制服であるスカートと白い
ブラウスとエプロンを着た彼女に席まで
案内され彼女が去った瞬間息が吐けた。
メニューを渡され去って行く彼女の後ろ姿を見ながらまた彼女が注文を取りに来たら
どうしようと焦っていた。
しかし注文を取りに来るのがまた彼女で
あれば良いと願ってもいた。
【愛にきて】
私は、今もの凄く機嫌が悪かった。
LINEのメッセージの噴き出しには
『ごめん 今 家出た』というメッセージと共に両手を合わせて平謝りする
スタンプが送られてくる。
私は、それを見て更に頬を膨らませた。
この喫茶店の外装が可愛くて前から行って
みたいと彼氏におねだりしていた。
やっと行けると思ったデートの今日何と
当日のデートの日彼氏は、寝坊した
電話で『先に行ってて良いよ』と言われたので先に店に来て待っていたらさっきの
LINEのメッセージであるそれで私の怒りは
MAXになったのだ
きっと出掛ける寸前で何かあったのだろう
彼の家は、大家族で兄弟達も多いと聞く
それに両親が仕事で忙しいらしい
だから年上の彼が年下の兄弟達の面倒を
見るのが彼の家では、当たり前になっている それは、分かっている仕方ない事だと 言う事も 重々承知な事も.....
けれど時々寂しくなる気持ちも無い訳じゃ
無い訳で..... 家族愛を少しだけ恋人に
向けてくれないかなあと言う思いも
私の唯のわがままだ 分かっている....
けど..... カランとドアベルが鳴った
店員さんの案内もそこそこに彼は、
真っ先に私が座っている席に向かい
肩で息を吐き下を向いていた。
「ごめん 待った!」その一言を彼が私に
放ち顔を上に向けた瞬間 汗をかいている
彼の顔に視線がぶつかる。
その彼の表情を見た瞬間私の中にあった
怒りや蟠りが一気に解ける。
私は、心からの笑顔で「ううん 全然
待って無いよ!」と 堂々と嘘を付く事が
出来たのだった。
(まぁ良いか!二番目でも!...だって..)
あんなに汗水掻いて走って来た彼の表情を
見れるのも彼女の特権だと思おう!
あんなに必死な表情で私の席まで私を
探して愛にきてくれたのだから!
巡り逢い
君と巡り逢った奇跡がとても愛しく思える。
この奇跡に乾杯したい位に嬉しい事なんだ
そんな事を思って僕たちは、グラスをかちりと合わせ上に持ち上げ掲げ星空を背景に
星の巡り逢わせに感謝した。
春恋の続き
どこへ行こう
南ハル 十六歳 彼は、今 人並みに
悩んでいた。
(一体 何処に行こう?....)
今の季節だとお花見だろうか.....
桜は、まだ見頃だった気がする.....
学校へ行く時は、全くやる気が出ない
南だが こと 遊びとなると話は、
別だった お花見に必要な物は、
何だろうと考える。
お弁当は、もちろん必須だ....
レジャーシートも場所取りの為に必要だろう その為には、人数が居る
誰を呼び寄せようか....
南は、スマホの電話帳を開く
そうして一人の友達の番号にかける。
「あっ もしもし アキ ハルだけど...」
「忙しい!」 「まだ何も言ってないけど...」「お前が俺を誘う時は、大抵録でも無い事をする時だ」
「いやだなあ~ 俺は、唯 次の休みに
何処か行こうって誘おうとしただけじゃん
お花見とかどうかなあと思って....」
ハルのそんな言葉を聞きアキは、電話口で
ため息を吐いた。
「ハル!お前の誘いが嬉しく無いわけじゃ
無いが.... いい加減 お前 他に友達作れ
お前高校に入ったら自分で友達作るって
息巻いてただろうが~ 入学前の
テンションは、どうした? 俺は、
お前とは、学校が違うんだから 学校帰りに待ち合わせする位しか手助けできねぇぞ!」
アキの指摘にハルは、電話口で一瞬黙る。
「だって.... やっぱり髪の色が目立つからか何となく皆 俺に近寄りがたいオーラを
出すと言うか....何と言うか....」
ハルの声が尻窄みになって行く
ハルの赤い髪の色は、地毛だ おまけに
顔も綺麗に整っているからか 周りの人達は憧憬の眼差しで、ハルを見て居る人が多い それは、決して悪い視線では、無い事もハルは、理解しているのだが....
その容姿のせいで中学では、大多数の人に
告白され 謂われの無い嫉妬で喧嘩を
売られ 散々な目に遭って来たのだ
だから唯一の話しやすい友達のアキとも
別れた高校に入り 一からやり直そうと
頑張ろうとしたがやはり視線は、変わらず
人に話しかけられない様にひたすら寝た振りにかまけていたら今では、何処でも本気で寝れる様になってしまい いつでも眠気を催す様になってしまった....。
「一人位 居ないのかお前が仲良くなれ
そうな奴 もう学校通って随分立つだろう」 アキの言葉にふいにハルの頭に浮かんだ一人の人物
「一人.... 面白そうな子が居て 思わず
一緒に帰った子が居たけど....」
「それって....お前の方から一緒に帰ろうって言ったのか?」 アキの質問にハルは、
「まぁ....」と素っ気なく言う。
「凄い進歩じゃ無いか どんな奴なんだ」
「隣の席の子なんだけど....」
「良かったじゃ無いか」とアキは、嬉しそうにハルに向かって言う
しかしアキのその言葉にハルは、煮え切らずに言う。
「いい子なんだけど....その子 女子なんだよね....」
その言葉にハルのトラウマを知っている
アキは、何となく察する。
「ねぇアキ....男女の間に友情は、成立すると思う?」
その言葉にアキは、しばらく逡巡し....
「お前もしかしてその子が自分の事好きに
なったらどうしようとか考えてるだろう...」
アキの言葉にハルは、「何で分かるの?
やっぱりアキは、凄いね!」と嬉しそうな
声を上げたがそれに対してアキは、
怒鳴った。
「馬鹿か~お前はぁ~そんな事で尻込みしてどうする それでその子がお前の事好きになったらお前は勝手にその子に失望する
のかよ~ そんなのその子に失礼だろう!
たとえ同じ状況になったとしても同じ結果になるとは、限らないだろう!勝手に想像して諦めてんじゃねぇ!」
アキのその言葉にハルは、目を丸くする。
「アキ....」ハルは、アキの名前を呟き
電話口で下を向いていた。
そうして決意した様に....
「うん!分かった俺頑張ってみるよ!
何かあっても俺には、アキが居るしね!」
「おう その意気だ頑張れよ!」
そうしてアキは、ハルとの電話を切った。
(たとえ思わずでもあいつが自分から
誘って話しかけたんだ これは凄い進歩だ
これは....もしかしたら もしかするぞ....)
あいつは、相手に夢中になられる事を
心配してたけど.... もしかして 案外
逆になったりしてな.... まぁそれはそれで
あいつにとっては、良い傾向だけど....)
そんな事を考えアキは、片手で頬杖を突いて口端を上げた。