暗がりの中で
真っ暗な暗がりの夜道 街灯も無く
人の気配も無い真っ暗な道を二人で歩く
君と二人で.... 君の手の温もりを灯り火に
「大丈夫?」君の声を道しるべにして
早くこの暗がりから抜け出したいのに
家の明かりは、一向に見えて来ない
そうして歩いている内に思考がふと
立ち止まる。
私は、いつからこの道を歩いているんだっけ? 前を行く君に引っ張られる形で
進んでいる私 でも.... そもそも前を行く
この人は、誰だっけ?
暗がりで、はっきりとは前を行く人の姿は、見えない....
私の歩みが遅くなったのが分かったのか
私を引っ張っていた誰かが立ち止まり
「どうしたの?」と私に声を掛ける
私は、この人の声に答えられない
だって答えてしまったら今まで忘れていた
何かを思い出しそうだから....
でも足も止められ無い 引っ張られるまま
進むしかない だってこの暗がりから
早く出たいから....
私は、少しの違和感にすぐに蓋をして
君の声に答える「ううん 何でも無い」
私がそう言うと君は、安心したような
気配を残し 「そう もうすぐ着くからね」 君は何処に着くとは、私にははっきりとは言わず柔らかい声で私に話し掛けた。
私は、この暗がりの中で せめて明るい
場所に着くようにと強く願った...。
束の間の休息(番外編)23の続き
紅茶の香り(番外編)24
●お茶会
シズクちゃんは、今日は、帽子屋のナイト
白兎のミーナが主催するお茶会に来て
いました。
シズクちゃんは、灰色猫ハイネの
膝の上に乗ってサクリとしたクッキーや
甘いクリームの載ったケーキを紅茶の香りと共に堪能してご機嫌でした。
ハイネの膝の上で手足をバタバタさせ
幸せを噛み締めます。
「....美味しい....」「良いから落ち着いて
食べろ!」ハイネがシズクちゃんの頬に
付いたクリームを拭き取りながら
シズクちゃんを落ち着かせます。
「たくさんあるからどんどん食べてね!」
白兎ミーナがシズクちゃんに勧めますが
灰色猫ハイネがシズクちゃんが手を伸ばそうとしていたクッキーに待ったを掛けます
「お腹いっぱいになったら夕飯食べれなくなるから程々にな」シズクちゃんは、
ハイネの注意に「うん!」と頷き
最後のクッキーをゆっくりと味わいます
「あんたすっかりこの子のお母さんね」と
ミーナが突っ込みます。
「だってこいつ危なかっしいんだよ
仕方ねぇだろう!」
「仲良い事は良き事かな」魔法使いハロルドとその助手のマリアが微笑ましく
シズクちゃん達を見守ります
いつものメンバーで楽しくお茶会をして
そろそろ終わりが近付いて来た時....
不意に「楽しそうだね!」と言う見知らぬ
声が聞こえました。
皆が声のする方に視線を向けると
空いている椅子に黒いローブを纏った
男がいつの間にか座っていました。
そのローブからは、青い髪が覗いていました。
皆が楽しい雰囲気から一斉に立ち上がり
見知らぬ男から距離を取り緊張した
空気を醸し出すと....
一人だけ状況が分かっていなさそうに
「....あっ....!」とシズクちゃんが
ハイネの腕の中から抜け出して
黒いローブの男にトテテテッと近づきます
「あの時のお兄さん!」シズクちゃんの
声に皆 首を傾げます。
ハイネがシズクちゃんに「知り合いか?」と聞きます。
「うん!お父さんとお母さんの居場所を
教えてくれた人」
シズクちゃんがお父さんとお母さんを探しに森に入った時 森に入るきっかけをくれた男の人でした。
(いや.....それめちゃくちゃ怪しい奴じゃ
ねぇか....)ハイネが警戒レベルを上げると
シズクちゃんが「あの時は、お父さんとお母さんの事を教えてくれてありがとうございました お父さんとお母さんには
会えなかったけど....でもハイネと皆に
会えました本当にありがとうございました」シズクちゃんは、ぺこりと男の人に
頭を下げました。
果たして頭を下げても良い人物か
甚だ疑わしいのだが.....
「そんな事あったっけ....まぁ良いや....
僕の名前はルーク面白そうだから覗きに
来ちゃった」
「私の名前はシズクです」シズクちゃんが
ルークに自己紹介します
「よろしくね!」とルークがシズクちゃんに握手を求める様に手を伸ばし
シズクちゃんもルークの手を取ろうと
腕を伸ばし掛けた時....
ハイネが咄嗟にシズクちゃんの体を抱き上げ自分の腕の中に戻します。
「? ?」シズクちゃんは、何故ハイネに
止められたのか分からず頭に疑問符を
浮かべます。
「お前 知らない奴と握手なんかするな
危ないだろう!」ハイネがシズクちゃんに
注意しますがシズクちゃんは
「知らない人じゃないよ!ちゃんとあの時話した人だって覚えてるもん!」と
自信満々です
ハイネが言っているのは、そう言う意味では無いのだが しかしシズクちゃんに
厳しく注意し過ぎてシズクちゃんに泣かれると困るのでハイネはシズクちゃんには
やんわりとしか注意出来ないのだった
その様子を見ていたルークは、クスクスと
笑っていた「何だか初対面なのにえらく
嫌われちゃったなあ.....まぁ良いや
今回は、挨拶しに来ただけだからこの辺で
失礼するよ! またどっかで会ったら
遊ぼうね!」そうしてルークは、最後に
シズクちゃんから余ったクッキーを貰い
皆に胡乱な視線を送られて去って行った
シズクちゃんだけは、ルークに
「バイバイ!」と元気良く手を振っていた
こうしてシズクちゃんに新しいお友達が
出来たのでした。
(めでたし?めでたし?)
行かないでの続き
愛言葉
テレビから流れて来る
『愛してる』『可愛い』と言う言葉達
一度は、好きな人に言われてみたいと
言う憧れを持つ女性達
そんな恋愛モニター番組がなんの気なしに
付けていたテレビから流れていた。
(くだらねェ....)ハイネは、ぼーっと欠伸を
しながらそろそろチャンネルを替えようかとリモコンに手を伸ばしかけた時....
『そう言う事をちゃんと言葉に出来る
男の人って良いですよね....
せっかく彼の為にお洒落したのに
何にも言ってくれないと正直
冷めますね....』と言う番組の台詞に
何故か心にグサッと針が刺さった
様な痛みを覚えるハイネ
『両思いになった途端愛情表現をして
くれなくなったと言うか前は、キスや
ハグを定期的にしてくれて可愛いって
褒めてくれたのに両思いになった途端
言わなくても分かってるだろうって態度に
なったりして何だかそれにこっちも急に
熱が冷めてこの人と別れたいなあとか
思ったり.....』
別れたいと言う言葉がハイネの胸に矢の
様に刺さった....
ハイネは、今までの自分の行動を無意識に
振り返る。
【片思いの時 好きな子に意地悪や悪口ばかり言っていたしやっていた】
【両思いの時 キスなんてハードルが高いし自分は別に一生しなくて良いと思っていた 可愛いなんて言葉を片思いの時から
一度も本人を目の前にして言った事が
無い事に今気付く】
もしかしてこれをこのまま放置しておくと
シズクの口から....『私....ハイネと....別れたい.....』なんて言われてしまったら
どうしよう.... ハイネの中に急に
危機感が生まれる。
そうして後日....
ハイネ恋愛で困った時にはナイトミーナ
カップルに相談するのが常だった
「キスってどう言う時にすれば良いと
思う.....」ハイネぼそぼそと二人に
恋愛相談をする
それを聞いたミーナとナイトの二人は
「「え?まだしてなかったの...」」と
同時に突っ込んだ
その突っ込みにハイネ顔を赤くして
膝を抱えて俯く
「どう言う時って.....したい時にすれば良い
じゃない」
「部屋で二人っきりになった時とかじゃない」とナイトミーナがそれぞれ返答するが
「しっ したい時とかなんてねェし....
二人っきりとか....そう言うの意識したら
逆に上手く喋れなくなるし無理」ハイネ
久しぶりにヘタレの部分が出てしまう
ミーナとナイトは、溜息を吐いて
((両思いになっても手が掛かるなあこの人))なんて呆れ半分苦笑半分でハイネを
見つめていた。
「まぁそう言うのは、あまり意識せずに
普段通りにしてれば良いんだよ」
「そうよむしろ無理矢理そう言う事やったらそっちの方が最低よ!!シズクを傷つけたら
許さないからね」
そう言って二人は、「後は、ハイネ次第だよ!」「シズクを泣かせる様な事するん
じゃ無いわよ」と言って部屋から出て行った。
ハイネは、思わず二人を引き留めそうに
なったが四人で居たらハイネは何も言わず
だんまりを決め込んで何も言わず一日が
過ぎるだろう 二人もそれを分かって居る
から部屋を去ったのだろう
そうして暫くしてシズクがいつも皆が
集まる部屋にやって来た
シズクが部屋に入るとハイネしか居なかった どうやらミーナとナイトはまだ来て
居ないか 帰ってしまったらしい....
「ハイネ....」シズクがハイネに呼び掛けるとハイネは、ソファーの上で肩をびくりと
震わせる。
「? ?」シズクは、ハイネの様子が
いつもと違うので首を傾げる。
「ハイネ....どうしたの?」
「べっ....別に....」ハイネは、ちらちらと
横目でシズクを見る
すると.... ハイネの顔がシズクに近づき
シズクの前髪の方へ視線を向ける
そこには、ハイネがバレンタインデーに
シズクにあげたヘアピンが留めてあった。
「これ....」ハイネは思わず呟く
するとシズクは、ハイネが気付いてくれた
事が嬉しくて「うん!」と頷く
「ハイネがくれたの使ってみたくて
付けて来たの....あっ....無くしたりしないから大丈夫だよ....」
シズクは、嬉しそうに にっこりと笑う
そんなシズクの笑顔に堪らなくなる
ハイネ 顔に熱が上がり下を向いて
俯くのが精一杯だった。
「っ....ク.....可愛い.....」ハイネは勇気を
振り絞ってぼそりと呟く
「うん!ハイネが選んでくれたヘアピン
とっても可愛いくて気に入ってるよ
本当にありがとう!」
「馬鹿シズク!!」「え?」
シズクは、目を丸くしてキョトンとして
いたが.....実は小声でハイネは
恥ずかしさを押し隠して
『シズク.....可愛い』と言ったのだが
シズクには、最初の言葉は、聞こえなかったのでヘアピンの事を褒められたと思い
若干ズレた返答をシズクは、
ハイネにしていた。
しかし言い直す事は、ハイネの心臓的に
無理だった。
シズクを褒めるだけでいっぱいいっぱいの
ハイネ キスなんてする余裕は、
ハイネには無かった。
自分のあげた物を嬉しそうに付けてくれるシズクを見るともっとその笑顔を見ていたくて顔を近づけたい衝動に駆られたが
シズクに変に思われたく無くて
ぐっと我慢するその衝動がナイトの言って
いた キスがしたい時に繋がるのだが
ハイネがそれに気付く事は、無かった。
こうしてハイネのシズクに対する
愛の言葉は、微妙にシズクに届かず
今日もハイネは、好きと言う愛言葉を
馬鹿と言うけなし言葉に変換してしまうの
だった。....
友達
友達? 友達って不思議 突き詰めれば
他人なのに 状況や環境 親密度によって
呼び方も変わる。
初めて会った初対面の頃は、クラスメイト
そのうちだんだん 会えば挨拶程度は
交わす友人となり そうして月日が経つ頃には お互い胸襟を開く無二の親友に
なったり また冒険を共にする相棒に
なったり 悪戯の共犯者を気取る悪友に
なったり また命を預ける戦場に
放り出されれば お互い苦楽を共にし
命を掛け合う戦友になったり
此処まで一生の友を得る事は、あまり無いし難しいだろう
そんな友にもし出会えたなら僕は、
一生を賭けて大切にするだろう....。
ココロオドルの続き
行かないで
10月31日
ハロウィン 皆 思い 思いの仮装を
楽しむ日 かぼちゃお化け
魔女 悪魔 吸血鬼 それぞれの仮装に
着がえるメンバー
ナイト 吸血鬼
ミーナ 悪魔
シズク 魔女
ハイネ かぼちゃお化け
ハロルド ネクロマンサー
マリア 死霊術士
「ハイネ 本当にその仮装で良いの?
顔見えないよ」とナイトが問いかけるが
「はぁ 何でこんな奇抜な格好だけでも
嫌なのに顔見せるとか拷問かよ!」
「でもハイネ吸血鬼 僕より似合うと
思うなあ....今からでも交換する?」
「断る!!」と男性陣がお互いの格好を弄って
いる横で女性陣は、「シズクとっても可愛いわよ!」「ありがとうミーナ 綺麗だよ!」とお互いの仮装を褒め合っていた
「っていうかハロウィンって何すんだ...」
ハイネ ハロウィンなんかやった事が無いので勝手が分からない 嫌 子供の頃に
両親からお菓子を貰った記憶があるような
ないような....
「子供達お菓子をあげよう」とネクロマンサー ハロルドが言う
「局長 違います まずお菓子を貰う方から トリックアトリートと言うんです」
「そんなこと言わなくてもちゃんと此処に
準備してるのになあ....」とハロルド
テーブルに広げたお菓子を両手で指し示す
(って言うか局長達....顔にハロウィン仕様のメイクをしてるだけでいつもと格好
変わんねぇんだけど....)とハイネが心の中で
思っていると....
「そうだ!!お菓子をあげる代わりに
私にそれぞれ悪戯をしてくれないかい?」
「悪戯?....」シズク ナイト ミーナが
それぞれ首を傾げる。
「局長 確か悪戯は、お菓子を持って無くてあげられなかった人が受ける物では?」
「良いじゃないか だって絶対私は
お菓子を準備するって決めてたし
絶対皆にあげるつもりだったし....
だったらその見返りに私に悪戯をしてくれ
ても良いだろう....」
何故か悪戯=罰ゲームを嬉々として受けたがるハロルド
「悪戯って....何をすれば....良いのかなあ」
シズクがハロルドに質問する。
「こんな事もあろうかと色んな悪戯を
籤にしてみたんだ さぁそれぞれ順番に
引いて見てくれ!」
ハロルドが紙製の真ん中に丸い穴が
空いた箱を用意する。
(何でそんなもの用意してんだよ...)とハイネ心の中で突っ込む
「じゃあまず最初は、シズク君引いてくれるかい?」最初に指名されびくりと背中を
震わすシズク「は....はい....」シズク
おそるおそる箱に手を伸ばし穴に手を入れる。
そうして出て来た紙を恐々開くと....
書いてあった文字は、....
【デコピン】シズクその文字を見て目を
丸くする。
「おお~シズク君悪戯の定番を引いたね
じゃあおでこに頼むよシズク君!」と
ハロルドシズクにおでこを差し出す
シズク一歩 後ずさり「痛そう 駄目 怖い」シズク目を瞑り拒否する。
「大丈夫だシズク君 遠慮しないで思いっきり来て良いよ」シズク涙を流しながら
親指と人差し指をくっつけてハロルドの
おでこに向かって指を弾く
ピッと小さい音が鳴っただけでデコピンの
衝撃は、あまりおでこに来なかった。
シズクは、「ごめんなさい....」と言って
おずおずと下がる。
ハロルドはそんなシズクににこにこしていた。
次は、ミーナ その次は、ナイトだった
ミーナの引いた紙は、....
【ビリビリ電流ペン】ペンのスイッチを
入れると持った人の手に軽い電流が流れると言う物 「本当に良いんですか?」
「いつでも良いよ!ミーナ君」
ミーナがペンのスイッチを入れると....
ビリッとハロルドの腕に電流が走った
「う~んこれは電気マッサージみたいだ
おかげで慢性的な肩凝りが直ったよ!
逆にありがとう!ミーナ君」
続いてナイトが引いた紙は....
【風船パニック】相手の耳元で風船に針を
刺して割ると言う物
ナイトがハロルドの耳元で風船に針を刺して割るとパアンと大きな音が響いたのに
またもやハロルドは、にこにこしていた
逆に大きな音の煽りを受けて
「うう~っ ふぇっうっぐすっ....」シズクの方が怖くなってしまい泣きそうに
なっていた。
それを見ていたハイネは、面倒くさくなる
前に方向転換してその場を逃げ出そうと
していた。
しかし「おやおやハイネ君ちょっと待ってくれ 行かないでくれ次は、君の番だよ」
引き留められて渋々振り返るハイネ
いつもだったら気付かれずに逃げられるのに今日は、かぼちゃお化けなんて言う目立つ仮装のせいで早々に気付かれてしまう
仕方がないのでハイネは、心の中で
突っ込んでいた事をハロルドにぶちまける
「これ何がしたいんだよ さっきから局長が微動だにしねぇから悪戯しても全然
もりあがらねェんだけど....」
「うん そうなんだハイネ君 問題はそこ
なんだ実は私は、あまり驚きと言うものを
昔からあまり感じなくてね試しに信頼している皆に悪戯をされてみたら驚きを感じられるかなあと思ったんだけど無理だった
みたいだ.....非常に残念だよ....」
(何のこっちゃあ....)ハイネが心の中で
呆れていると....
ガンッとハロルドの後頭部に凄い衝撃音がした。
四人は、その光景を目の当たりにして目を
丸くした。
見るとマリアが死霊術士の仮装の杖で
ハロルドの後頭部を叩いていた。
ハイネは、(あの杖今の今まで握ってなかったよなあ しかも凄い音がしたと言う事は、あれは、仮装用の杖じゃ無くて....
バインダー用の武器 局長 今ので死んだんじゃねェ....)
ハイネおそるおそるハロルドを見る
「マリア君今のは、驚いたよ!」
「お役に立てて何よりです」
マリアは、無表情でハロルドを一瞥すると
そのままハロルドを無視しツカツカと
シズクの所までお菓子を持って歩いて行く
「シズクちゃん怖がらせてごめんね
これ皆で食べてね!」
シズクは、風船の音に驚いてから
さっきから泣きっぱなしだったのだが
マリアにお菓子を貰い涙が引っ込み
「ありがとう」と微笑んだ
こうしてハイネ達はこのチームの力関係を
目の当たりにし今後マリアを怒らせる様な事は、絶対にしないと誓うのだった。