岐路
私は今 岐路に立たされている。
此処に広がる二つの分岐点
どちらを選んでも、正解でもないし
不正解でもない。
だけど選んだ選択肢で間違いなく状況は
変わる。
不幸になるのか、幸福になるのか
確信に変わるのか 後悔をするのか
それは、選んでみなければ分からない。
だから私は、今 二の足を踏んで
動けずにいる。
私が尻込みをして動けずに居ると....
ポンと見えない空気に押される様に
背中に力が入り体が傾き一方向に押される。
途端に「大丈夫だよ!」と声が聞こえる。
「貴方の進みたい方向に進んで
誰も貴方を責めないから....
後は貴方の勇気だけ さぁ行って」
その言葉に励まされる様に 私は、足を
一歩前に進める。
後悔するかもしれない 失敗するかもしれない。
でも....私が歩んで来た跡が道になるなら
たとえそうなっても良いと思えるから....
さぁ足跡を付けよう その足跡を辿って
また、他の誰かが歩ける様に....
今度は、私が道しるべになるんだ。
世界の終わりに君と
世界の終わりに君と一緒に居られる事が
どんなに幸せな事だろう...
君と見つめ合い終わりの時に君とキスをする。
君と最期の瞬間まで愛し合いたいから
君を感じながら最期を迎えられる幸せを
噛み締め君と一緒に眠りに付いた。
安心と不安の続き
最悪
最悪だ....俺は、自分の運の悪さを呪った。
よりにもよって村上と一緒に居る時に
出くわすとは....
「あれ?相澤君.... あそこに居るの
槙君じゃないかなあ?」
やばい村上が気付き始めた。
「槙 いやあ こんな所にあいつが
居る訳ないだろう村上 他人の空似だ
世の中には自分に似ている人が三人は
居るって言うからなあ」俺は村上の背中を
押してさりげなく方向転換させる。
「え....でも...」村上は戸惑いながら
後ろを振り返っている。
俺は内心あんなデカイ奴がそう何人も居てたまるかと思っていたが だから絶対
あれは槙なのだが
今の槙に声を掛けるのは自殺行為だ。
何故なら絶賛 他校の不良連中と
喧嘩中だったからだ。
しかも拳と拳を交える割とマジな喧嘩だ。
俺一人だったらそのままスルーして
道を変えるのだが 今日は、間の悪いことに村上も一緒に居る。
友達を大事にする村上は知り合いを見つけたら必ず声を掛ける。
しかも喧嘩を見つけてもまずは話し合おうと言うタイプの為あの緊迫した雰囲気に
緊張を覚えない
慈悲深い菩薩様はどんな人にも平等に
振る舞うのだ
ある意味空気が読めないと言えばそうなの
だが しかし俺はそんな村上を責めない
何故ならそれは、村上の長所であるからだ
そんな菩薩様の優しさを踏みにじる輩が
悪いのだから....
とにかく村上を安全な所に逃がさなければ
そう思っていたら....
「あ~タケちゃんムラガミ様やっほ~」
空気が読めない事が短所でしか無い男が
大きな腕を振ってこっちに大声で声を
上げた為 俺の計画は脆くも崩れ去った。
しかも喧嘩途中で声を上げた為
喧嘩相手の不良連中もこっちを見る。
(あの馬鹿せめて全部相手を倒してから
こっちに声を掛けろ!)
こうなったら仕方ないと俺は速攻で
プランを変更村上が槙に声を掛ける前に
俺は村上の手にいくつか小銭を握らせた。
「村上 向こうの方に自動販売機があったからこれで飲み物買って来てくれ
俺はコーラで槙はセンブリ茶でもトマトジュースでも何でも良いから適当で
村上は何でも好きな物買って良いから
じゃあ頼んだ」
村上は、最初キョトンとしていたが....
「うん!」と頷いて自動販売機の方へ
歩いて行った。
この隙に.....
「ほらさっさと片付けるぞ!」俺は久しぶりに拳を握る。
「えっ!もしかしてタケちゃん加勢してくれるのぉ~珍しい~」
「お前は、どうでも良いが村上に怪我させる訳には行かないからなあ」
「あっなる程 同感じゃあさっさと片付けますか!」俺と槙は背中合わせになる。
「じゃあ俺は後ろタケちゃんは前って事で
じゃあ行くよ!」
俺と槙は合図と共に飛び出した。
こうして村上が帰って来る前に何とか
片付ける事が出来た。
「ぷっはあ~やっぱり運動した後のジュースは最高だわ~このトマトジュース美味っ~」と槙はこぼれた液体を手の甲で拭いながら言った。
(おっさんかよ....こいつ...)
俺は呆れたため息を吐く。
「槙君のお友達の人にも挨拶したかったなあ」村上が菩薩像のにこにことした笑顔で言った。
「まぁあいつらも忙しいから!」槙がにへらとした笑顔で言う。
(忙しかったのは俺だ....)と俺は内心で
毒突く
まぁ片付けた奴には口止めしたし
大丈夫だろう....
しかし今日は、厄日だった。
しかし今日で最悪の運は使い果たしたはず
明日からはまた普通の平日の穏やかな
日常が待っているはず そう信じたいと願いながら俺は二人と連れ立って家路の道を
歩いたのだった。
また会いましょうの続き
誰にも言えない秘密
科学捜査課に務める捜査員
水無月真名人(みなづき.まなと)には
誰にも言えない秘密があった。
それは科学捜査員の他に 今世間を騒がせて すっかり有名人になっている
怪盗Mと言うもう一つの顔を持っている
と言う事
怪盗と警察 全く真逆の二足の草鞋を
履きこなさなければならないと言う事
そうして水無月は今日も徹夜明けの目を
擦り 小さな欠伸を一つする。
そんな水無月のデスクにカタンと静かに
カップに注がれた温かいコーヒーが
置かれる。
「あんた また徹夜したの!どんだけ
仕事溜まってんのよ 一人で抱えて
ないで他の人にも仕事回しなさいよね!」
そう声を掛けたのは 刑事課の女性刑事
佐藤令子(さとう.れいこ)だった。
令子も徹夜明けなのか目の下に隈が
出来ていた。
「その台詞 先輩にだけは言われたく
ないんですけど....」
「私は良いの現場仕事なんだから一日中
走り回って足で稼がないと 給料
もらってるんだし.... でもあんたは
仮眠取る位の時間はあるでしょ?
時間は上手く活用しなさいよね!
って言うか 例の怪盗また逃げ仰せたんだけど本当ムカつくわよね」と令子は
ぐっと拳を握る。
そんな令子を見ながら水無月は
(って言うか先輩のせいで俺 寝不足なんだけど....)なんて思っていた。
いくら上手に逃げても令子は諦めない
それを撒くのに時間が掛かりいつも
水無月は寝不足なのだ。
(はぁ~)と水無月は心の中でため息を吐く
「まぁ....追い掛けていればいつかはその
怪盗も捕まえられるんじゃないですか?
まぁそのいつかがいつになるかは
分かりませんけど....」と言って
水無月はコーヒーに口を付ける。
「何よあんたはいつもいつも他人事だと
思って~」令子は水無月の背中をポカポカと殴る。
「まぁ徹夜は頂けませんけど....
その目の下の隈早くケアしないと肌に跡 残りますよ また合コン失敗し無きゃ良いですね」と水無月は令子を揶揄う様に言う
「うるさいあんたはいつも一言多いのよ
人が気遣ってやってんのに~
見てなさい次こそはあの憎っき怪盗を捕まえてあんたの前に連れて来てあげる
その時に私を大いに敬えば良いわ!」
そう令子は水無月を指差し高らかに
勝利宣言をして科学捜査課を出て行った。
「期待してますよ!先輩」そうひらりと手を
振って令子の後ろ姿を見送ると
水無月は小さく口角を上げて笑んだのだった。
狭い部屋
暗い狭い部屋に閉じ込められてどれ位の
時間が過ぎただろう
壁に石で傷を付けて日数を数える。
引っかき傷の音だけがこの空間の唯一のBGMだった。
体の不調から考えると一月位だろうか
リュックの中に入っていた食料も
どこまで持つだろうか
このまま訳も分からず誰にも見つけてもらえずに死んで行くのだろうか
そうして意識を手放してしばらくたった頃
光が顔に当たって意識が浮上した時
「大丈夫か!」と男性の声が聞こえた。
目を眇め久しぶりの光を感じた。
しかしやっと手に入れた光の世界は
どんよりと曇っていた。
建物は、倒壊し 人がぽつりぽつりと
疎らにいるだけ
遠くからは ドドドッと言う地響きみたいな音が聞こえた。
口をあんぐりと開けその光景を目に焼き付ける。
果たして暗い狭い部屋に居た自分と
外に出られた自分どちらがよりマシで
幸せだったのか
外に出てしまった自分には判断が付かなかった。