I LOVE....
「僕と付き合って下さい!」そう告白され
返す返事は、決まって...
「ごめんなさい 好きな人が居るの!」
だった。...
決まって告白した人は、この世の終わりみたいに撃沈して帰って行く。
ため息を零し 肩と背中を地面に下がらせ
俯いて 帰って行く。
異性の告白の呼び出しが終われば
次は、同性の苦情の呼び出しに行かなければならない。
中庭の人が少ない場所に呼び出されると
そこには、いつもの様に
お決まりのパターンみたいに
三人の女子グループが固まって私を
待っていた。
右側と左側の女子が眉尻を上げ
私を怖い顔で睨む。
真ん中の挟まれている子は反対に
気まずそうに友達二人を見つめていた。
「ちょっと この子の好きな人を振るって
どういう事 この子は、ずっとあの人の事
好きだったのに振られて それでもまだ
ずっと好きなのに...」
私は、首を傾げ にっこりと笑う
「そうなんだ 可愛いね!健気だね!
何で 貴女と付き合わないんだろう
不思議だね!」
私は、心の中で思った事を素直に口にする。
女子グループ達は、真ん中の子は瞳を
潤ませ 涙の膜を張らせ
左右の子達は、私を仇の様にさらに睨む
「何それ 自分が一番だとでも思ってんの!」 左側の子が声を荒げて私に
向かって言う。
私は、その子の言葉に嬉しそうに笑みを
浮かべ
「うん! だってあの人私の事一番に
愛してるなんて言うんだもん!
一番に私を愛してるのは私なのに!!」
その答えに女子グループ三人は、
ぽか~んと口を開ける。
私は、そんな三人の表情に疑問も浮かべず
もう用は済んだとばかりに踵を返した。
そう 私の好きな人それは、私
私は私が一番好き
寧ろ自分を嫌いなんて言う人に出会ったら
何で?と疑問符を浮かべる程
私は、私が好きだ
自分自身に愛を注ぐのに余念がない
学校から 帰ったら一日の疲れを
解す為に 全身マッサージをする。
勉強が終わったらストレッチをして
強張った体を柔らかくする。
食事は、嫌いな食べ物は絶対食べない
だって自分が嫌いと思ってる物を
食べたって苦しいだけでしょ?
夜は心身共にリラックスできるアロマを焚き 深い眠りに付く
そうして朝起きたら 鏡の前には、
可愛い私が出迎えてくれる。
おはよう私
I LOVE 私 これからもずっとずっと
貴女を愛してる。
街へ
「うわあ~でっかいビル!」私は思わず
大声になってしまう...
「やめてよ田舎感丸出しにするの恥ずかしい」隣を歩く姉に窘められる。
私達 姉妹は、初めて都会の街に降り立った。
閑散とした 田んぼ道とは違う
アスファルトが目に眩しい
上を見上げれば大きなビル群が連なる
上にそそり立つ建物など私の住んでいる
田舎では、考えられない事だった。
まるで別世界 桃源郷である。
見た事がないきらきらしたお店が
右側の道にも左側の道にも広がっている
人も同じ人間とは、思えない程
雑誌のモデルさんみたいな綺麗な人や
格好いい人でいっぱいだった。
「ここが東京! 都会だ~ぁぁぁ」
私は足を前に踏み出し走りだそうとする
その途端 グイッと姉に襟首を
摑まれた。
「ちょっと こんなに人が多いんだから
走り出さないで 迷子になるでしょう!」
姉に止められ 私は駆け出して行くのを
やめる
姉に従い まずは、原宿という所に行く
姉曰くそこは、可愛いが売っている
街だと言う...
私は首を傾げる。
どういう事?
可愛い 可愛い動物? 動物園
ペット屋さん
私は、想像を膨らませワクワクが
止まらなかった。
早速 原宿と言う街に行ってみる。
お店の内装がなんだかすごくカラフルな
店舗が多かった。
フワフワな犬の尻尾みたいなアクセサリーが売ってたり 犬耳や猫耳のカチューシャが売ってたり 動物の一部分を加えた
小物が多かった。
かと思えば ヒラヒラのレースが付いた
傘だったりドレスみたいにスカートの裾が
ふわりと左右に広がっていたり
お店ごとに全く系統が違っていたり
でっかい横文字が全面に広がった
サングラスや缶バッチがいくつも付けられる 透明なアクリル系のバックなど
私達が住んでる田舎では、絶対売っていないデザインの服や小物が棚に並んでいた。
飲食店もすごかった。
スイーツ系のお店はハート型を象った
アイスクリーム
七色の巨大綿あめなど 思わず携帯で
写真を撮りたくなる見た目の食べ物が
沢山並んでいた。
これが姉がよく口にする映えと言うやつか
私の地元は、携帯の電波も入りづらい為
インスタやSNSは、やっていないが...
姉は、ことある毎に私達の地元に疎らに
並ぶ 東京MAPをコンビニとかで
見つけるたびに買って来る為
私よりは、詳しく 都会の街の事前情報を
知っていた。
次は、クレープと言うスイーツを
食べた。
姉も私も原宿に来たら食べたかった物だ
薄いクレープ生地にバナナやイチゴ
生クリームやチョコレートを載せて
食べる。
最初 紙が巻いてあるので食べづらかったが食べて行く内に慣れた。
歩きながら食べれるので姉も私もご満悦
だった。
他にも色々な所を回り初めての東京観光は
とても有意義に終わった。
そうして私達 姉妹は、夢の東京観光を
楽しみ あそび疲れた後
帰りの特急電車の中でお互いの肩と頭を
枕にして 慣れ親しんだ 恋しくなった
地元に帰ったのだった。
優しさ
「生徒会長 これ部費の計算合わないんです どう計算しても もう一回計算し直しさなきゃ駄目ですかね?」
「そうねえ...」私は、渡された計算書に目を通す。
(これは、もう一度やり直した方が良いかもしれない...) 私は、聞いて来た
会計の人にやり直しを頼もうと顔を上げる
「これ もう一度....」私がそう言い掛けた
時 「終わった 早く帰ろう!」別の子が
会計の子に話し掛けた。
「えっと...」会計の子が困った顔で
その子を見る。
私は、それを見て 咄嗟に...
「私がやって置くから帰って良いわよ!」
会計の子が私を見て 戸惑った表情を見せる。
立ち止まる様に動きを止めるが
私は、もう一度同じ言葉を繰り返し
会計の子を促す。
「友達を待たせたら悪いわよ 大丈夫!」
会計の子は申し訳なさそうに私に頭を下げると 友達の子と連れだって 生徒会室を
後にした。
私は心の中で またやってしまったと
胸の中でため息を吐く
そうして部費の計算書をもう一度
資料の方と照らし合わせて 電卓を叩く
放課後 夕日が差し込み 空が紫と赤の
コントラストを作り出した時
私は、校門を潜ろうと足を踏み出すと...
校門の壁に寄りかかる様にしゃがむ
人影が映った。
私はその姿を見て苦笑して...
「また先生に呼び出されたの?」
「うるさい!お人好しに言われたく無い」
そこには、制服を着崩して ボタンを緩め
制服の上着を肩に掛けて
不機嫌そうに私を見上げる
幼馴染みの姿があった。
また喧嘩でもしたのだろう...
私の幼馴染みは、所謂 不良と言われる
部類の人間だ。
でもこうして 呼び出されて遅くなったからって ついでみたいに私を待っててくれる。
その優しさを知る人は、あまり居ない
同じ様に....
「また 仕事引き受けたのかよ!
お人好し!」
私が必要以上の仕事を引き受けてしまうと
言う性格を分かってくれる人もあまり
居ない....
私は、幼馴染みを見上げて苦笑し....
「じゃあ帰ろうか...!」と幼馴染みを
促し先を歩く
幼馴染みは 不機嫌そうな顔をしながら
私に付いて歩く
こうやって自分の事を分かってくれる
人が一人でも居る事が たまらずに嬉しい
事だった。....。
ミッドナイト
暗い 寝静まった人気の無い路地裏
隠れる様に佇む 一軒の建物
隠れ家の様に潜むその建物は一見すると
古びた空き家みたいな様相を呈するが
木材製のドアには、一つの金属プレートが
掛かっていた。
プレートには、『ミッドナイト.バー』
その名の通り真夜中に佇むバーである。
仕事終わりに終電を逃したサラリーマンや
OL 夜の仕事をする者達など
仕事終わりにふと立ち寄る者も居れば
居場所を求めてなんの気無しにドアを
開ける者も居る。
そんな社会に雁字搦めになり身動きが
取れない者を 一時的に俗世の枠組から
外すそんなバーである。
一時的にしろ訪れる者にとっては
唯一の安全地帯 憩いの場なのである
今日も真夜中のバー
『ミッドナイトバー』は開店する。
人々の息を吐ける場所として...
何でもないフリの続き
安心と不安
俺 相澤武(あいざわ.たけし)は、
今 学校で 安心材料と不安材料
二つの者を抱えている。
「相澤君 おはよう!!」
「よぉ 村上 早いな」
「生徒会の仕事があってちょっと早めに
来たんだ!」
「生徒会長も大変だなあ...」
この菩薩みたいな笑顔を浮かべる男子
村上剛(むらかみ.たけし)は
俺の友達だ
名前が同じって言うのもあるが...
(それにしてもこの学校の たけし率
高いなぁ...)
何よりこの菩薩みたいな笑顔が俺に
安心感を与えてくれ 今や俺の心の
オアシスみたいになっていた。
ちなみにクラスで一緒に学級委員
副委員もやっている それも仲良くなった
理由だ。
誰にでも優しく 男女問わず人気だ
こいつが怒った所を俺は、
見たことがない
まるで菩薩の様に穏やかで慈悲深く
俺の心を穏やかに整わせてくれる
俺の安心材料だ
俺の心が静かに 凪状態に入っていると...
突然 後ろから...
「あっタケちゃん ムラガミ様おはよう!」
突然 後ろから馴れ馴れしく大声で
呼ばれる。
俺の心は一気に波だった。
「槙君 おはよう!!」村上は愛想良く
挨拶しているが 俺は、意識的に足を速める。
「おはようムラガミ様!」
槙は、大きな体を縮めて村上に挨拶する
ちなみに槙が廊下を通った瞬間人がはけて
行ったが 村上も槙もそんな事は
気にせず普通に会話をしている...
そうして俺は、槙の大きな腕で肩を摑まれる。
「あ~タケちゃん無視しないでよ
朝の挨拶は基本でしょ!
全く ムラガミ様を見習いなよね!」
(お前に言われたくない...)と俺は内心で
悪態を吐き 腕を引き剥がそうとするが
さらに力を入れられ固められる。
俺は腹が立ち
「分かったから離せ 気持ち悪いんだよ!」 俺は槙の腕を肩から退かす。
勢い良く離したのにそいつは気分を
害する事も無くにへらと笑う
このガタイが大きい男の名前は
槙洋介(まき.ようすけ)
正直に言うと俺は、こいつの事を友達だとは思っていない。
付き合いだって全力でやめたい位だ...
だがある事情からこいつの友達を
やらなければならない...
しかしこいつが言うこいつの野望の事は
一切無視をして 拒絶しているので
今の所付き纏われるだけですんでいるが...
俺の中でこいつは災害級の問題児だった。
もうトラブルを擬人化したらこいつになるんじゃないかって位...
俺の不安材料だった。
こうして 俺の学校生活の日常は
槙(トラブル) 村上(オアシス)に
囲まれながら過ぎて行く....