逆光
暗い闇夜の中を私は、息を切らして
走っていた。
必死に誰かの背中を追い掛けていた。
やっとその背に追い付いて顔を上げると
後ろの街頭の灯りを背にして立っている
その人の顔が 振り向いた顔が
逆光が邪魔をして見えない
ただその光に目が眩み
目をどうしても開けられない・・・
その人の顔を確かめたいのに
見えない
あれは一体 誰だろう...
その時 別の方向から声が聞こえた。
「起きて!」肩を揺さぶられ 私は、
目を覚ます。
「もうとっくに下校時間だよ」
隣の席の男の子にそう声を掛けられる
私は、大きく伸びをして
その男の子の方を見る
「ありがとう」私は起こしてくれた事に
お礼を言い 立ち上がる。
そのまま自宅に帰ろうとして足を一歩
踏み出せば
「あの!」振り向くと起こしてくれた男の子が声を掛けて来た。
「よかったら一緒に帰らない?」
私は首を傾げる。
「何で?」と私は、思わず返してしまう
私にとってこの人は隣の席の男の子
それだけだ そんなに仲良くなった
覚えも無い 寧ろ 今 初めて喋った
様な気がする。
なのにその男の子は、・・・
「何でも無い気にしないで さようなら」と言って駆け出して行ってしまう
何となくその男の子の顔が寂しそうに
見えた 何故だろう....
そうして突然 私の中に何かの映像が
フラッシュバックした。
何か分からず首を傾げる。
でも思い出せない...
でも何となくさっきの夢の続きを見た様な
気がした。
僕は、駆けた さっきの言葉を無かった事にしたくて...
「何で声を掛けてしまったんだろう...」
自分の未練を呪う
彼女は、もう僕の事を思い出さない
どんなに近くにいても...
逆光が 掛かった夢のヴィジョンとしてしか彼女の中には、残らない
ある事故のせいで彼女の記憶の中の僕は
消えた。
無理に思い出してもらいたくはない
それは、本心だ
それなのに欲に負けた
「はぁ~」と僕はため息を吐く
彼女の命が此処にあるなら
他には何も要らない
そう誓った
たとえ僕という者を認識できなくなっても
僕は彼女の側に居ると決めた。
恋人と言う関係性に戻れなくても
赤の他人の認識でも....
僕は彼女の側に居続けたい....。
こんな夢を見た
皆さんこんにちわ お元気ですか?
って こんな挨拶から始まって
お前 誰だよって感じですね!!
単刀直入に言いましょう まず始めに
私が言いたい事は、私は、
人間では、ありません
皆さんの言葉では、何と言いましたでしょうか?
妖怪?妖 まぁ性質は、そんなものです!
私の姿形を説明しますと・・・
人間の言葉では、そうですねェ
獣の仲間の『獏(ばく)』と言う物に
近いです。
そうして人間達の間では、私達 獏は、
夢を食べると言われているそうですね
主に悪夢を....
私の性質は、夢を食べるとは、
また違うかもしれませんが...
私の生活水準では、あります。
どういう事かと言うと...
私は、妖怪 妖の類の性質だと
最初に説明したと思いますが...
妖達は、夢を見ないのです。
まあ ほとんどの妖怪達は
睡眠と言うものを必要としません
だから見ないとも言えるのかも
しれません
あとそうですねェ 妖は
基本 執着が薄いのです。
だから 心に留めて置くと言う事が
無いのです。
そんな妖達ですが 人間達が見る夢と
言うものに人知れず興味を抱いている
妖もいます。
そこで私は、考えました
人間達の夢を少しばかり拝借できないかと
断片的に夢の一場面だけを抜き取って
妖の仲間達に見せられないかと...
試しにやってみたら...
思いのほかすんなりと出来ました
その結果 妖達も睡眠と言うものを取る様になりました。
今まで長い夜を過ごす暇潰しに
喧嘩や荒事が多かった
私達の町も 思いの他
平穏で平和で静かになりました。
これは、人間達が見る夢のおかげと言える
のかもしれません
これからも私は ご要望がある限り
人間の夢を拝借し続けます。
のでそこら辺は、大目に見てくれると
助かります。
何より私自身が人間の夢に興味があり
今や私自身の生活水準を潤す糧となって
おります。
なので 人間の皆様にお願いがあります
色々と苦情や御不満もあるかと存じますが
少しでも妖の 御事情を鑑みて許して
下さる 心の広い人間の方がいらっしゃい
ましたら....
私は 僕は こんな夢を見たよと
ぜひ 御一報の程を
宜しくお願い致します。
タイムマシーン
「ねぇ近い将来 ロケットで宇宙旅行が
出来るなら 遠くない未来
タイムマシーンで時間旅行も出来るかもよ」と唐突に一緒に住んでる
彼女が言って来た。
また何かのテレビ番組に感化されたなあと
僕は、思ったが 黙って彼女の話を聞く
「ねぇそうなったら君は未来と過去どっちに行きたい?」彼女が究極の二択を
突き付ける様に僕に聞く
「う~ん考えた事ないから良く分かんない
しいて上げるならどっちにも行きたくないかなあ・・」と僕の答えに彼女は途端に
不機嫌になる。
思っていた答えと違ったのだろう...
彼女が答えて欲しかった返事とは
違うと分かっていたが これが僕の
ありのままの本心だった。....
過去の事を考えると 二度と体験したくない出来事を思い出すし...
未来の出来事を知るのは 怖いし 退屈に
なる気がする
そう僕が理由を述べると彼女は、
何故か胸を張って
「タイムマシーンの操縦士やコンダクター達がお客様を不快にさせる旅行プランを
立てると思う?」
一瞬僕は、何の話をしてたんだっけと
首を傾げる。
「いい 君 あくまで私達はお金を
払って 時間旅行を楽しむ為に
タイムマシーンに乗ってるんだよ
それを誰が好き好んで 自分の過去や
未来を知りたいと思う?」
「あれ そういう話じゃないの?」と
僕は思わず疑問符を返してしまう
「発想が暗いな君 もっと 未来の流行の
最先端を先取りするとか
過去に戻って 行列がすごくて入れなかった 人気カフェのパンケーキを今度こそ
食べるとか 見逃した番組を過去に
戻ってもう一度見るとか
未来に行って まだ完成していない
テーマパークを先に楽しんじゃうとか
まだ発売していない漫画雑誌の続きを
見るとか... あとは...」と彼女が際限なく
欲望を吐露しそうだったので 僕は、
「ストップ!!」と言って止めた。
彼女は、僕の声を聞いて押し黙る。
「遠い未来にタイムマシーンが出来るなんて それこそタイムマシーンがなければ
分からない事なんだから... それより
今 出来る事をした方が良いんじゃない」
と僕は彼女に二枚のチケットを見せる。
「あーそれ!!」彼女が椅子から
勢い良く立ち上がる
それは、彼女が 前々から行きたいと
言っていたライブのチケットだった。
人気のライブで中々チケットの予約が
出来ない事で有名だった。
彼女の目がきらきらと輝く
「じゃあ 少したったら出掛けようか!」
僕が促すと・・・
彼女は、嬉しそうに笑顔になって頷いた。
「うん!」彼女のその笑顔を見て僕は
チケットを渡せて良かったなあと
つくづく思った。
過去も未来も関係無く 今この時の
彼女の笑顔を見れるのは 今此処に居る
僕だけなんだと思うと やっぱり当分
タイムマシーンは、要らないなあと
僕は、密かに思った。
特別な夜
キラキラと星が闇夜に瞬いている。
しんと静まった道には人っ子一人見当たらない もっと大通りに出れば人気も疎らに
あるだろう....
でも あえて僕と君は 人通りが無い
裏通りを歩く 田んぼが多い田舎道を
通る
「星が綺麗だね!」君が満面の笑顔を向けて
僕に話し掛ける。
「うん!」僕は、頷き 君の手をそっと握る
朝の光に嫌われ日の下を歩け無い君と
朝の光が来るまで眠れない僕
二人の時間を繋ぐ 特別な夜
君とこうやって手を繋ぎ 星を見上げる
時が 眠れない僕の特権だから
この特別な夜に感謝して
君と二人きりになれるこの空間が
いつまでも続きますようにと願う
そして 太陽が少しでも ゆっくりと昇る事を 僕は心の中で意地悪く
祈っていた。
海の底
船から海水に足を浸す
私は、今から初めてのスキューバダイビングに挑戦だ。
ウェットスーツみたいのに着替え
水中ゴーグルみたいのを付け
酸素ボンベを背負い
魚のヒレみたいなものを履き
付き添いの人と一緒に海にダイブ
シュワシュワと泡みたいな気泡が空気の
穴から抜けて行く
付き添いの人に誘導されながら
講習会で教わった通りに
徐々に海の底の方へ潜って行く
最初は、怖々 暗い海の底が見える。
緊張で体が強張るが付き添いの人の合図で
下を見る。
そこには、私が今まで見たことが無い
風景が広がっていた。
色とりどりの魚がいっぱい居た。
魚にこんなに色があるなんて知らなかった
大きな魚や小さな魚
肉食の魚を見かけた時は、少し怖かった。
海ガメやイカ タコもいて食卓で
お馴染みの魚やお寿司屋さんで並んでいそうな魚も居た
海の底に居なきゃ見られない
サンゴ礁なども見かけて キラキラして
綺麗だった。
だいぶ時間が経ってそろそろ陸に上がる
時間になった
私は船に戻り酸素ボンベを取り
水中ゴーグルを外し
息を吸う
初めてのスキューバダイビングは、
大成功で とっても楽しかった。
海の底には、其処に足を踏み入れた者しか
見れない宝石が眠っていた。
まるで宝石箱に閉じ込めるみたいに
海の底と言う蓋を掛けて...
海の宝石を守るみたいに...
海が優しく 時には厳しく
海の生物や私達人間達を見守っていた。
母なる大地が大切に大切に...
海と言う揺りかごで
私達全てを包みながら
今日も見守ってくれていた。.....。