タイムマシーン
「ねぇ近い将来 ロケットで宇宙旅行が
出来るなら 遠くない未来
タイムマシーンで時間旅行も出来るかもよ」と唐突に一緒に住んでる
彼女が言って来た。
また何かのテレビ番組に感化されたなあと
僕は、思ったが 黙って彼女の話を聞く
「ねぇそうなったら君は未来と過去どっちに行きたい?」彼女が究極の二択を
突き付ける様に僕に聞く
「う~ん考えた事ないから良く分かんない
しいて上げるならどっちにも行きたくないかなあ・・」と僕の答えに彼女は途端に
不機嫌になる。
思っていた答えと違ったのだろう...
彼女が答えて欲しかった返事とは
違うと分かっていたが これが僕の
ありのままの本心だった。....
過去の事を考えると 二度と体験したくない出来事を思い出すし...
未来の出来事を知るのは 怖いし 退屈に
なる気がする
そう僕が理由を述べると彼女は、
何故か胸を張って
「タイムマシーンの操縦士やコンダクター達がお客様を不快にさせる旅行プランを
立てると思う?」
一瞬僕は、何の話をしてたんだっけと
首を傾げる。
「いい 君 あくまで私達はお金を
払って 時間旅行を楽しむ為に
タイムマシーンに乗ってるんだよ
それを誰が好き好んで 自分の過去や
未来を知りたいと思う?」
「あれ そういう話じゃないの?」と
僕は思わず疑問符を返してしまう
「発想が暗いな君 もっと 未来の流行の
最先端を先取りするとか
過去に戻って 行列がすごくて入れなかった 人気カフェのパンケーキを今度こそ
食べるとか 見逃した番組を過去に
戻ってもう一度見るとか
未来に行って まだ完成していない
テーマパークを先に楽しんじゃうとか
まだ発売していない漫画雑誌の続きを
見るとか... あとは...」と彼女が際限なく
欲望を吐露しそうだったので 僕は、
「ストップ!!」と言って止めた。
彼女は、僕の声を聞いて押し黙る。
「遠い未来にタイムマシーンが出来るなんて それこそタイムマシーンがなければ
分からない事なんだから... それより
今 出来る事をした方が良いんじゃない」
と僕は彼女に二枚のチケットを見せる。
「あーそれ!!」彼女が椅子から
勢い良く立ち上がる
それは、彼女が 前々から行きたいと
言っていたライブのチケットだった。
人気のライブで中々チケットの予約が
出来ない事で有名だった。
彼女の目がきらきらと輝く
「じゃあ 少したったら出掛けようか!」
僕が促すと・・・
彼女は、嬉しそうに笑顔になって頷いた。
「うん!」彼女のその笑顔を見て僕は
チケットを渡せて良かったなあと
つくづく思った。
過去も未来も関係無く 今この時の
彼女の笑顔を見れるのは 今此処に居る
僕だけなんだと思うと やっぱり当分
タイムマシーンは、要らないなあと
僕は、密かに思った。
1/23/2024, 5:53:54 AM