Saco

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1/10/2024, 10:49:52 AM

20歳

1月8日今日は成人の日
そして成人式だ

派手な晴れ着を着て精一杯のおめかしを
して 大人の仲間入りを果たしたと
自分に言い聞かせ大人ぶる。

友達とお互いの晴れ着を褒め合い
記念写真を撮ろうとスマホのカメラを
向ける。

しかしカメラを向けられて 無意識に
ピースサインをしてしまう所が
まだまだ子供だなあと自分で思う。

そして あの人にとっては、私は、いくつ
年を取ろうといつまでも子供なのだ。

「お~い!」呼びかけられて私は
振り向く 近所に住むあの人
成人式が終わり迎えに来てくれたのだ。

大きく手を振り ニカッと歯を見せて笑う
あの人 助手席に乗せてもらい
私の家まで車を走らせる。

「君も もう二十歳(はたち)か早いねぇ」
感慨深げにあの人は言う

「ねぇ 私も車の免許とろうかなあ...」と
唐突に私は、あの人にそんな事を言う

あの人は、笑って
「いいんじゃない 車を運転出来れば
いろいろな所に移動出来るし
自分の世界が広がるよ!
友達や家族をいろんな所に連れてってあげられるしね」

「....恋人もいろいろな所に連れてって
あげられるしね...」脈絡も無く私は、
そんな事を言う 言ってしまう....

(何を言ってるんだろう私は....)
少し気分が落ち込む

「そうかもしれないね!!だけど君の
彼氏になる人には、君に車に乗せてもらうんじゃなくて 君を車に乗せてくれる人を
僕は、希望するね!!」

ハンドルを握りながらあの人が言う
私は、思い切って
「貴方みたいな人が彼氏だったら私を車に
乗せてくれると思う?」

私は、上目遣いであの人を見る。

「そうだね まぁ僕のはただの送り迎えだけど... デートの行き帰りを送り迎えしてくれて 何より一緒に楽しんでくれる
大切な人が君に出来る事を僕は
願ってるよ!」 何の気なしにその人は
言う。

私は視線を外し...

「うん....そうだね ありがとう...」
窓の外を見ながらお礼を言う

そんな願いは、一生叶わないでと心の中で
願いながら....


あの人は、今三十二歳 
私は、今日やっと二十歳(はたち)

大人になろうがなるまいが あの人と
私の距離は、一生縮まらない

そんな現実を知る成人式なんて
大嫌いだ!!

(早く家に着いてよ!!)

心の中の子供っぽさをあの人に知られない
様にするのが今の私に出来る いっぱい
いっぱいの大人ぶる抵抗だった....。

1/10/2024, 1:41:57 AM

三日月

○月×日

月がニヒルに嗤った様な形の三日月が空に架かる。

闇夜に星々を鏤めて 月が悪戯を思い付いた子供みたいな顔で輝いていた。

そんな夜空に高く聳える尖塔を持つ城の中
大きな円卓の前で上等な椅子に座る
見目麗しい7人の青年がまるで会議でもするかの様に卓を囲んでいた。


青年達の背中には、それぞれ黒い翼が生えていた。

「やっぱり人間の血が一番美味しいよ!
こんなワイングラスに入った輸血パックの
血じゃなくてさ!」

ワイングラスを掲げて一人の青髪の青年が
言う

「口を慎めグエル人間の血を飲むのは
リスクが大きすぎる 我々の存在が
人間達に知られる恐れがある!!」

眼鏡を掛けた理知的な青年が窘める様に
グエルと呼ばれた青年に声を掛ける。

「アカーシャは、心配症だなあ人間が
僕達のスピードを視認できる訳ないじゃん
それに命を奪う訳じゃない少しお腹を
満たす為に摘まむだけだよ!!
虫に刺された位にしか人間は感じないって」

グエルの声を増長させるように黄色髪の
青年がそれに応える。

「僕もバーナードの意見に賛成
アカーシャは頭 固すぎ
僕どうせ血を飲むなら人間の女の子の血が
良いなあ柔らかくて美味しそう!」

手を挙げながらバーナードに同意する 
赤髪の青年

「お前は、軽薄すぎるサラマンダー
そんなんじゃいつか血を流す事になるぞ!!」
アカーシャが今度はサラマンダーを窘める。

そんなアカーシャの警告を
大笑いする声が聞こえた。

「アッハハハァ 吸血鬼が血を求めて
血を流すってアーちゃんそれギャグ?
笑い取りに行ってんの 俺様 腹が捩れて
死にそう~」

卓に足を投げ出して腹を抱えて大笑いする
紫髪の青年

「黙れヴァルドそのまま死んでもらって
俺は一向に構わんぞ!」

ヴァルドの茶々にとうとう怒声を上げる
アカーシャ

皆がやいのやいの言い始め 段々会議の体を成さなくなった部屋にボソッと小さな声が二つ聞こえた。

「ねぇ....」「ちょっと....」銀髪の髪の
顔立ちがよく似た二人だった。

「ん?何だ カイル カイン?」二人の声を聞き取ったアカーシャが声を上げる。

「これ...」 「拾った...」二人が片手ずつ
持って広げたものは 人間達が通う
学校の新入生歓迎パンフレットだった。

それを見て目を輝かせたのは、
グエル バーナード サラマンダーの
三人だった。
「何これ?」「楽しそう!」
「女の子いっぱいいそう!」

「此処...」「行きたい...」カイン カイルが控えめに口を挟む

「面白そうじゃん!」ヴァルドも
乗り気だった。

唯 一人アカーシャだけは...

「待て 待て 人間の学校に行くだと
そんなの本末転倒だろう自ら危険に
飛び込むなど...」

「あっそう じゃあ アーちゃんは
行かないって事で!」

ヴァルドがアカーシャに向かってひらひらと手を振る。

「....馬鹿言え そんな事をしたら
すぐに正体がバレるだろう 俺も監視の
為に付いて行く!」

そう言ってアカーシャも椅子から立ち上がる。

「素直じゃないアーちゃん可愛いい!」

ヴァルドの茶々をアカーシャは完全無視を
する。

こうして7人の青年は、秘密を抱えて
学校に通う事にする。

7人の秘密を知るのは 不気味に嗤う
三日月だけだった。

1/9/2024, 7:58:12 AM

色とりどり

キャンバスに何かを訴える様に色を
載せて行く君

豪快に鮮やかに色と色が混ざり合い
筆の毛先で色が淡く薄く濃く
力の入れ具合で暈かされたり
はっきり色彩が出たり

赤 青 黄色 緑 桃色 紫 朱色
灰色 茶色 黒 白

色とりどりな色が重ねられ
形を作って行く 陰影や光 一つ一つの
色合いが造形を深く美しく見せる。

また 叩き付ける様にキャンバスに
色を載せ一心不乱に筆を動かす君

僕は、君の絵を描く背中を見ながら
君の背中に色とりどりの翼が生えているような 光の幻影を夢想する。

僕は、その風景を留めて置きたくて
カメラを取り出し 夢中で
シャッターを切った。

1/7/2024, 11:54:23 PM



ぶるると体が震え 思わず布団から身を
起こした。
両隣には、旦那と6歳になる息子が 
寝ている。

意識が覚醒して また眠れる気がしないので 私は、モコモコのフリースのジャンバーと厚手の生地の肩掛けを羽織り階下に降り
リビングの窓を開けた。

寒いと思ったら やっぱり雪が降っていた。

一面真っ白 息も白い 窓のガラスも
曇っていた。

私は、冷気が入って来ない様に
急いで窓を閉めた。


私はスリッパの足でストーブを付けに行き
こたつのスイッチを入れた。

思わず足を伸ばしこたつ布団の中に入れる
あまりの寒さにもう一度寝室に戻る気がしなかった。

手も一緒に入れて暖める。

私は寒がっているが きっと息子は
大はしゃぎして喜ぶだろう

家の息子は、雪を見ると防寒具を着て
外に飛び出す。
そうして雪遊びを始めるのだ。

私と旦那は、その様子を庭を眺められる
大きなガラス窓から見る。

寒い中駆け回る息子を羨ましく
微笑ましく見守る。

それが家の冬の日常の風景だ。
そんなことを思っていると...

「わぁー雪だ雪だよ!パパ!」
息子の元気な声とその様子を苦笑しながら
見守る旦那の姿がリビングに映った。

「おはよう!」私は、二人に朝の挨拶をし
三人でこたつに入りながらとりあえず
息子の好奇心を抑えながら
着替えて 朝ご飯を食べた。

1/7/2024, 2:02:32 AM

君と一緒に

「家においでよ!」そう言って僕に手を
差し伸べてくれた君

檻の中に入れられ オークションで
売られるか それが叶わなかったら
無意味に殺処分されるのが決まっていた僕
奴隷になって生き延びるか

一つの現象として 生を淘汰されるか
それしかなかった。


そう....獣人である僕には、
それしか道が無かった。
君に出会うまでは....

最初は、人間である君の気まぐれで
僕は、生かされているのだと思った。

だけど 違った... 君は僕を檻から
出してくれただけで無く
いろいろな場所に連れて行ってくれた。

僕の手を引いて いろいろな物を
教えてくれた

いろいろな景色を見せてくれた。


春の暖かな日差しの中で咲き誇る
桜の花々 風に舞いひらひらと
舞い落ちる桜の花びらは 儚げで
すぐ地面に落ちて散ってしまう...
まるで 僕みたいだと思った。
地面に落ちて倒れても 誰にも
気に止めて貰えない僕みたいな桜

でも君は、地面に落ちて土に塗れた
桜の花びらを 一つ一つ拾い

「綺麗だね!」と笑った。

僕はその言葉を聞いて目を丸くした。
(綺麗.... 何で...汚く泥に塗れて居るのに)


「散って行くのは 命を終えた訳じゃないって私は思う きっと一生懸命に生きて
来た証なんだと思う だから散って
舞って行く桜の花びらは 私は
綺麗だと思うんだ!」

そう言って笑う君の笑顔が僕には

泣きたくなる程 暖かかった。

他にも君は 夏の青々とした緑の葉の濃さや   秋の色とりどりの葉の色彩や

冬のしんとした空気の中で佇む木々の
厳かさ 堂々とした佇まい

いろいろな季節の変化の風景の美しさを
教えてくれたね

君と一緒に過ごした時間は、
僕の心に色づきを齎してくれた。

君が僕に心をくれた。
ありがとう

誰かに出会えて良かったと思えるのは
初めての感情で....

願えるなら 君と一緒に過ごす時間が
いつまでも続きますように....

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