三日月
○月×日
月がニヒルに嗤った様な形の三日月が空に架かる。
闇夜に星々を鏤めて 月が悪戯を思い付いた子供みたいな顔で輝いていた。
そんな夜空に高く聳える尖塔を持つ城の中
大きな円卓の前で上等な椅子に座る
見目麗しい7人の青年がまるで会議でもするかの様に卓を囲んでいた。
青年達の背中には、それぞれ黒い翼が生えていた。
「やっぱり人間の血が一番美味しいよ!
こんなワイングラスに入った輸血パックの
血じゃなくてさ!」
ワイングラスを掲げて一人の青髪の青年が
言う
「口を慎めグエル人間の血を飲むのは
リスクが大きすぎる 我々の存在が
人間達に知られる恐れがある!!」
眼鏡を掛けた理知的な青年が窘める様に
グエルと呼ばれた青年に声を掛ける。
「アカーシャは、心配症だなあ人間が
僕達のスピードを視認できる訳ないじゃん
それに命を奪う訳じゃない少しお腹を
満たす為に摘まむだけだよ!!
虫に刺された位にしか人間は感じないって」
グエルの声を増長させるように黄色髪の
青年がそれに応える。
「僕もバーナードの意見に賛成
アカーシャは頭 固すぎ
僕どうせ血を飲むなら人間の女の子の血が
良いなあ柔らかくて美味しそう!」
手を挙げながらバーナードに同意する
赤髪の青年
「お前は、軽薄すぎるサラマンダー
そんなんじゃいつか血を流す事になるぞ!!」
アカーシャが今度はサラマンダーを窘める。
そんなアカーシャの警告を
大笑いする声が聞こえた。
「アッハハハァ 吸血鬼が血を求めて
血を流すってアーちゃんそれギャグ?
笑い取りに行ってんの 俺様 腹が捩れて
死にそう~」
卓に足を投げ出して腹を抱えて大笑いする
紫髪の青年
「黙れヴァルドそのまま死んでもらって
俺は一向に構わんぞ!」
ヴァルドの茶々にとうとう怒声を上げる
アカーシャ
皆がやいのやいの言い始め 段々会議の体を成さなくなった部屋にボソッと小さな声が二つ聞こえた。
「ねぇ....」「ちょっと....」銀髪の髪の
顔立ちがよく似た二人だった。
「ん?何だ カイル カイン?」二人の声を聞き取ったアカーシャが声を上げる。
「これ...」 「拾った...」二人が片手ずつ
持って広げたものは 人間達が通う
学校の新入生歓迎パンフレットだった。
それを見て目を輝かせたのは、
グエル バーナード サラマンダーの
三人だった。
「何これ?」「楽しそう!」
「女の子いっぱいいそう!」
「此処...」「行きたい...」カイン カイルが控えめに口を挟む
「面白そうじゃん!」ヴァルドも
乗り気だった。
唯 一人アカーシャだけは...
「待て 待て 人間の学校に行くだと
そんなの本末転倒だろう自ら危険に
飛び込むなど...」
「あっそう じゃあ アーちゃんは
行かないって事で!」
ヴァルドがアカーシャに向かってひらひらと手を振る。
「....馬鹿言え そんな事をしたら
すぐに正体がバレるだろう 俺も監視の
為に付いて行く!」
そう言ってアカーシャも椅子から立ち上がる。
「素直じゃないアーちゃん可愛いい!」
ヴァルドの茶々をアカーシャは完全無視を
する。
こうして7人の青年は、秘密を抱えて
学校に通う事にする。
7人の秘密を知るのは 不気味に嗤う
三日月だけだった。
1/10/2024, 1:41:57 AM