色とりどり
キャンバスに何かを訴える様に色を
載せて行く君
豪快に鮮やかに色と色が混ざり合い
筆の毛先で色が淡く薄く濃く
力の入れ具合で暈かされたり
はっきり色彩が出たり
赤 青 黄色 緑 桃色 紫 朱色
灰色 茶色 黒 白
色とりどりな色が重ねられ
形を作って行く 陰影や光 一つ一つの
色合いが造形を深く美しく見せる。
また 叩き付ける様にキャンバスに
色を載せ一心不乱に筆を動かす君
僕は、君の絵を描く背中を見ながら
君の背中に色とりどりの翼が生えているような 光の幻影を夢想する。
僕は、その風景を留めて置きたくて
カメラを取り出し 夢中で
シャッターを切った。
雪
ぶるると体が震え 思わず布団から身を
起こした。
両隣には、旦那と6歳になる息子が
寝ている。
意識が覚醒して また眠れる気がしないので 私は、モコモコのフリースのジャンバーと厚手の生地の肩掛けを羽織り階下に降り
リビングの窓を開けた。
寒いと思ったら やっぱり雪が降っていた。
一面真っ白 息も白い 窓のガラスも
曇っていた。
私は、冷気が入って来ない様に
急いで窓を閉めた。
私はスリッパの足でストーブを付けに行き
こたつのスイッチを入れた。
思わず足を伸ばしこたつ布団の中に入れる
あまりの寒さにもう一度寝室に戻る気がしなかった。
手も一緒に入れて暖める。
私は寒がっているが きっと息子は
大はしゃぎして喜ぶだろう
家の息子は、雪を見ると防寒具を着て
外に飛び出す。
そうして雪遊びを始めるのだ。
私と旦那は、その様子を庭を眺められる
大きなガラス窓から見る。
寒い中駆け回る息子を羨ましく
微笑ましく見守る。
それが家の冬の日常の風景だ。
そんなことを思っていると...
「わぁー雪だ雪だよ!パパ!」
息子の元気な声とその様子を苦笑しながら
見守る旦那の姿がリビングに映った。
「おはよう!」私は、二人に朝の挨拶をし
三人でこたつに入りながらとりあえず
息子の好奇心を抑えながら
着替えて 朝ご飯を食べた。
君と一緒に
「家においでよ!」そう言って僕に手を
差し伸べてくれた君
檻の中に入れられ オークションで
売られるか それが叶わなかったら
無意味に殺処分されるのが決まっていた僕
奴隷になって生き延びるか
一つの現象として 生を淘汰されるか
それしかなかった。
そう....獣人である僕には、
それしか道が無かった。
君に出会うまでは....
最初は、人間である君の気まぐれで
僕は、生かされているのだと思った。
だけど 違った... 君は僕を檻から
出してくれただけで無く
いろいろな場所に連れて行ってくれた。
僕の手を引いて いろいろな物を
教えてくれた
いろいろな景色を見せてくれた。
春の暖かな日差しの中で咲き誇る
桜の花々 風に舞いひらひらと
舞い落ちる桜の花びらは 儚げで
すぐ地面に落ちて散ってしまう...
まるで 僕みたいだと思った。
地面に落ちて倒れても 誰にも
気に止めて貰えない僕みたいな桜
でも君は、地面に落ちて土に塗れた
桜の花びらを 一つ一つ拾い
「綺麗だね!」と笑った。
僕はその言葉を聞いて目を丸くした。
(綺麗.... 何で...汚く泥に塗れて居るのに)
「散って行くのは 命を終えた訳じゃないって私は思う きっと一生懸命に生きて
来た証なんだと思う だから散って
舞って行く桜の花びらは 私は
綺麗だと思うんだ!」
そう言って笑う君の笑顔が僕には
泣きたくなる程 暖かかった。
他にも君は 夏の青々とした緑の葉の濃さや 秋の色とりどりの葉の色彩や
冬のしんとした空気の中で佇む木々の
厳かさ 堂々とした佇まい
いろいろな季節の変化の風景の美しさを
教えてくれたね
君と一緒に過ごした時間は、
僕の心に色づきを齎してくれた。
君が僕に心をくれた。
ありがとう
誰かに出会えて良かったと思えるのは
初めての感情で....
願えるなら 君と一緒に過ごす時間が
いつまでも続きますように....
冬晴れ
真っ白に澄み切った冷たい空気
でも青い空には、暖かい日差しが
キラキラ輝いている。
地面には、雪が積もり 白い積雪が
降り積もって山になっていた。
その山にがらんどうの穴が空いていて
洞窟みたいになっていた。
その穴の中を覗いてみると
僕の友人が寝転んでいた。
一瞬 僕は、死体かと思い目を剥いた。
思わず声を掛ける。
「大丈夫?」僕の心配をよそに
友人は、「よっ お前か!」と片手を
挙げて答える。
ニカッと歯を見せて笑う友人に
僕は、ほっと息を吐く
雪の洞窟は、思ったより 冬晴れの
日差しが当たり暖かかった。
友人は、春の日差しを浴びて日向ぼっこ
するみたいに 冬の日差しでも変わらず
日光浴をする。
しかし さすがに 雪の地面に直に
寝転がるのは、憚られたのか
こうやって かまくらみたいな
雪の洞窟紛いの物を作ったのだろう...
友人は、こうやって寝転がるのが
好きだった。
僕は、友人の 日光浴を見つけて
一緒に居るのが好きだった。
冬の日差しが僕達を 見守る様に
暖かく僕達の上に降り注いでいた。
幸せとは
「今日で一週間か....」私は、溜息を吐きながら カレンダーの日にちを黒で塗りつぶして行く
「どこで何やってんだか~」 呆れながら
私は、放浪癖のある恋人の顔を思い浮かべる。
「馬鹿...」私はクッションに顔を埋め
此処に居ない あいつを罵倒する。
(今日が何の日かあいつ分かってんのかなぁ~)
今日は私の.... その時
ピンポーンと玄関チャイムが鳴る
誰だろうと 私は、何の気なしに玄関に
向かい 扉を開ける。
すると... 「ハッピーバースデー
誕生日おめでとう!」
大きな花束を持ったあいつが立って居た。
「いやあ~びっくりしたでしょう
サプライズ成功かなあ!」
何の悪気も無く 緩い笑顔を浮かべる
あいつの胸に飛び込み 「馬鹿...」と呟く
私のそんな姿を見て あいつは苦笑して
「ただいま!」なんて当たり前の様に
言うから 私は涙が出て 腹立たしい
気持ちも少しあったのに それを水に
流して 忘れる位 全てどうでも良くなった。
貴方が出て行ってしまうのは仕方ない
そんな真っ直ぐ前を見てどんどん突き進んで行く貴方を好きになったんだから...
だけど一つだけ約束してくれた
二人の大切な日には必ず帰って来て
側に居るから....
その約束だけは、絶対に守ってくれる
貴方が好き
幸せを運んで来てくれる貴方がどうしようも無く好きなんだ!!