幸せとは
「今日で一週間か....」私は、溜息を吐きながら カレンダーの日にちを黒で塗りつぶして行く
「どこで何やってんだか~」 呆れながら
私は、放浪癖のある恋人の顔を思い浮かべる。
「馬鹿...」私はクッションに顔を埋め
此処に居ない あいつを罵倒する。
(今日が何の日かあいつ分かってんのかなぁ~)
今日は私の.... その時
ピンポーンと玄関チャイムが鳴る
誰だろうと 私は、何の気なしに玄関に
向かい 扉を開ける。
すると... 「ハッピーバースデー
誕生日おめでとう!」
大きな花束を持ったあいつが立って居た。
「いやあ~びっくりしたでしょう
サプライズ成功かなあ!」
何の悪気も無く 緩い笑顔を浮かべる
あいつの胸に飛び込み 「馬鹿...」と呟く
私のそんな姿を見て あいつは苦笑して
「ただいま!」なんて当たり前の様に
言うから 私は涙が出て 腹立たしい
気持ちも少しあったのに それを水に
流して 忘れる位 全てどうでも良くなった。
貴方が出て行ってしまうのは仕方ない
そんな真っ直ぐ前を見てどんどん突き進んで行く貴方を好きになったんだから...
だけど一つだけ約束してくれた
二人の大切な日には必ず帰って来て
側に居るから....
その約束だけは、絶対に守ってくれる
貴方が好き
幸せを運んで来てくれる貴方がどうしようも無く好きなんだ!!
日の出
まだ真っ暗な夜の闇の中 僕は、
じいっとある人物を待って居た。
一分 二分 三分 イライラと足を揺らして 踵を返そうかと思ったその時
ブー ブーとスマホのバイブ音と共に
携帯が震え出し僕を呼ぶ
僕は、スマホの受話器ボタンをスワイプし
電話に出た。
「もしもし...」僕は、声と共に溜息を洩らす。
「あ~俺 悪い 寝坊した!」電話口で
友人が にへらと笑う顔が想像出来た。
「あのね...君が言ったんだよ 新年 最初の 初日の出を見に行こうって...」
僕は、寒い中待たされて居るので
少し責める様な口調になる。
「あ~そうだっけ? まぁそう怒るなよ!
今から準備するからさ!」
そう言って友人は、通話を切った。
まぁ少しだらしがない友人だけど
準備をすると言うからには 今から向かうのは確かなのだろう....
最悪 初日の出には間に合わなくても
山の頂上から見る朝日は綺麗だろう
僕は、リュックから カメラを取り出し
まだ何も見えない暗い空を
ファインダー越しに覗きながら
眩しいオレンジ色の光を夢想した。
今年の抱負
「あ~くそっ!」私は、壁にドンっと
両手を打ち付ける。
(あいつら~全く何なのよ~)
私は、悔しさの余り床に足を打ち付け
地団太を踏む
『諸星先輩 今年は、結婚出来ると良いですねぇ!』
(余計なお世話よ!)私は、頭に 怒りマークが付きそうな程 腹が立っていた。
そして 私は、決意した。
(今年こそ 絶対 結婚する)
これを私は、新年の目標 抱負とし
あいつらを見返す事に決めた。
私は、早速 ノートパソコンを開き
婚活サイトに登録した。
こう言う事をしてる時点で 負け犬女と
呼ばれそうだが...関係無い
私は、この悔しさを 原動力にして
絶対に幸せを摑んで見せるんだから!
私を笑った奴見てろ!!
この悔しさを 抱負にした私は
絶対に 絶対に~っ
達成するまで諦めないんだから~ぁ!!
と私は、握り拳を握り 鼻息荒く
パソコンのキーボードを叩いた。
新年
ハッピーニューイヤー
2024年 新年あけましておめでとうございます。
なんて テレビでそんな テロップが流れ
テレビ画面は、お祭り騒ぎだ
出演者が着物を着て扇子を持って
馬鹿騒ぎ 大笑いだ。
何がそんなにお目出度いのか
俺には、さっぱり分からない
ただ 年度が変わっただけで なぜそんなに 騒がなければいけないのか....
俺は、欠伸を噛み殺し こたつに入り
みかんを剥いていた。
「何がそんなに目出度いのか...」俺がそう
ぼやいていると 正面から声が聞こえた。
「少なくとも あんたみたいに日がな一日
ゴロゴロしてる奴より 馬鹿騒ぎしてる奴の方がよっぽどマシよ!」
姉貴が呆れた様に溜息を吐きながら
俺の方を見て言った。
俺はジト目で姉貴を睨む
「あんた若いんだから 初詣とか
行って来なさいよ!!」
初詣と聞いて 俺は神社に並ぶ人の列を
想像し 気持ちが悪くなった。
俺はみかんを食べる手を早める。
早く食べて部屋に引きこもろう
姉貴の小言がこれ以上うるさくなる前に
俺はみかんを速攻で食べ立ち上がる。
俺の立ち上がる背中を見て 姉貴は、
何かを諦めた様にまた 溜息を吐き
テレビ画面に視線を向け それ以上は、
言葉を掛けるのをやめた。
俺は、自分の部屋のドアを開け中に
入ると鍵を掛けた。
俺の新しい扉が開くのは まだまだ先だ...
俺の時間だけが古びて 止まったまま
動けない
新年なんてクソくらえだ
時が進んで新しくなるにつれ
俺の時間は、停滞する。
あの日の事が降り積もって
俺の背中にのし掛かる。
クスクスとあざ笑う笑い声 空白の空間だけが残る 俺の席
あの日の出来事がまざまざと頭の中に
蘇り....
俺は、ベッドに入り 布団を被り
両手で耳を塞ぎ 目を瞑った......。
良いお年を
『2023年 あけまして おめでとう』
兎のイラストが プリントされている
去年の年賀状を見る。
『あけましておめでとう 今年も
よろしくね 良いお年を』
そうして 新年の挨拶をするのが
毎年の日常だった。
しかし 今年は、その毎年の日常を
する事が出来ない...
『12月下旬に母が亡くなり 喪中につき
新年の挨拶を御遠慮させて頂きます』
そう 喪中はがきに書き ポストに投函する自分が居る。
年賀状と喪中はがき 同じポストに
投函する行為なのに こうも気持ちの
感じ方が違くなるとは....
良いお年を そう 又 年賀状を送れる日は また 来年になるだろう....
来年に年賀状が書ける程気持ちが
浮上していますようにと願いながら....