Saco

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12/27/2023, 12:56:45 AM

変わらないものはない

「あ~あ退屈だぁ!」俺は大きく伸びをし
欠伸を噛み殺す。

たまの休日 明日からは、又変わらず仕事
毎日 毎日 同じ事の繰り返し
暇だぁ~ 退屈だぁ~

「あ~あなんも変わんねェ つまんねー」

俺はそんな事を考えゴロゴロしていた。

そろそろ小腹が空いたので
コンビニにでも出掛けようと思っていた時
突然 電話が鳴った。
着信表示を見ると 実家からだった。

俺は、出るのを躊躇う
又 お袋の小言や愚痴を延々に聞かされる
羽目になると思い 俺は、そのまま
着信音が止まるのを待った。

だが いつまで経っても 着信音は、
鳴り止まない。

俺は、苛立ちに負け とうとう画面を
スクロールする。

「もしもし お袋!」
俺は、怒り気味の声で電話に出た。

しかし 何分待っても 電話の返答が
来ない

いたずら電話かと思い 俺は、切りボタンに手を伸ばそうとした その時

「孝弘...」低い 重々しい声が 俺の耳に
飛び込んだ。

「親父...」親父が俺に電話を掛けてくるとか珍しい事もあるもんだ

親父は、無口でお袋の言う事を黙って聞き
入れている印象が強い為 そう思った。

「何」俺が聞き返すと 親父のさらに
重々しい声が響いた。

「母さんが亡くなった...。」

俺は、その言葉を聞いた瞬間 電話を
落としそうになった。

俺は、親父との通話を切り
取るものも取りあえず 貴重品と鍵だけ
持って駅に向かった。

駅に向かう足が自然と早足になる。

俺は、数秒前の自分を思い出す。

『あ~あ何も変わんねェ つまんねー』

あんな台詞を吐いた自分を殴りたくなる。

変わらないいつもの日常が欲しくて
たまらない
今の俺には、残酷な程 変わらないものなどない事が 辛く 重く のしかかった。

12/25/2023, 11:39:09 PM

クリスマスの過ごし方

クリスマスツリーにオーナメントを飾り
サンタやトナカイの形のマジパン人形を
乗せた クリスマスケーキや
ローストチキン
部屋の中は赤と緑のクリスマスカラー

さまざまなラッピングで彩られた
プレゼントを大切な人達に渡し
聖夜の夜にワインを開け乾杯する。

これが私のクリスマスの過ごし方
カチンとワイングラスを合わせて

メリークリスマス!!

12/24/2023, 10:31:42 AM

イブの夜

クリスマスツリーの天辺で輝く 一際
大きな星 ジングルベルが奏でられると
イブの夜が始まる。

シャンシャンと鈴の音と共にサンタが街に
やって来る。

トナカイと共に煙突を探して
それぞれの家にお邪魔する。
寝静まった夜の元
子供達の寝顔を見ながら 一つ一つ
プレゼントをそっと枕元に置く

朝日が昇る頃 子供達の笑い声が聞こえる
まで クリスマスイヴの夜は、
終わらない。

12/24/2023, 1:05:19 AM

プレゼント

街が寝静まった 静かな夜
高層ビルの窓からの明かりだけが
僕の部屋に伸びて行く

君からの メッセージカードが挟まれた
プレゼント

『メリークリスマス!!』 君の明るい声が
聞こえてきそうな ポップな文字で
そう書かれたメッセージカードを開き
僕は、涙する。.....

雫が、カードに垂れ インクが滲む

「当日までのお楽しみだよ!」そう言って
僕が聞いても 決して中身を教えてくれなかった君

クリスマスの日にプレゼント交換をしようねと 約束して お互いに渡すはずだった。


だけど そう言っていた君は、
今 僕の隣には、居ない

突然だった。車が君にぶつかり 君は
呆気無く 僕の前から姿を消した。

後に残ったのは、僕が君に贈るはずだった
プレゼントと 君が僕に贈ってくれた
プレゼントだ。

机には二つのプレゼントが並んで居る
僕のプレゼントは、君が デートの時
にお店のショーウィンドウで見つめていた
可愛い 小さな赤いハートが付いた
ネックレスだ。


君の方のプレゼントを僕は、丁寧に繊細に
扱う

壊れ物でも 入って居るんじゃないかって
位 怖々と......

中に入って居たのは....
ガラス瓶型の貯金箱だった
中身が透けていて 中に一万円札が一枚
入っていた。

そして小さなメモ用紙も...

『ずっと一緒に居る為の貯蓄
目指せ1000万
結婚資金を二人で貯めてゴールイン』
なんて サプライズ感を出したかったで
あろう文字が踊っていた。

僕は、思わず苦笑して
「君らしいなぁ・・・」と小さく呟く

そしてまた僕は、涙を零した。

この涙も 僕の君へのプレゼントも
全部 全部 君の居る天国に届けば
良いのにと思いながら......。

12/23/2023, 4:09:06 AM

ゆずの香り

ころころと 口の中でキャンディーを
転がす そうすると ふわっとゆずの
香りが口の中に広がる。

爽やかで少し苦みのあるゆずの風味が
口の中をしゃっきとさせ 柑橘系の匂いが
鼻腔にも広がる。

「ん~美味しいけど 私は、もうちょっと
甘い方が好きかなあ~ そっちは何味?」
と私は、隣に座る彼氏に話題を振る。

私と同じく キャンディーを口の中で
舐めている彼氏は....

「ん~何だコレ 苺かなあ~ こっちの方が まだ甘いかなあ~ 俺はどっちでもいいけど....」

「あっ 私そっちの方が良かった
交換して!!」

「いや もう口の中に入ってるし無理」
彼氏に断られ 私は、キャンディーボックスに手を伸ばし 苺味のキャンディーを
探す。

もぞもぞもぞもぞと パッケージを
確認し 苺味のキャンディーを見つけ
まだゆず味のキャンディーが口の中に
入っている為 舌で舐めて小さくし
飲み込むのに時間が掛かった。

その為 まだ私の手の中には
苺味のキャンディーのパッケージが封を
切らずに 手の中に残っていた。

やっとゆず味を舐め切り 苺味のキャンディーのパッケージの封を切り 口の中に
放り込もうと キャンディーを指先で
摘まむと 指先が滑り キャンディーが
落ちてしまった。

「あっ!」ころころと床に....
「洗えばたべられるかなあ...」
と彼氏に 驚きの余り食い意地が張った
発言をしてしまう...

「洗ったらドロドロに溶けると思うけど...」と彼氏のもっともなツッコミに

まあ そうだよねぇ...

見るとキャンディーの数も残り少ない

(まあいっか!ゆず味も美味しかったし
また 買って来れば良いよね!)

私が半ばキャンディーの事を追い出して
一人で頭の中で納得していると...

「濡れてても良いならあげるけど...」
と彼氏がそんな事を言うので

まだ苺味あったっけ....
て言うか 私の洗えば食べられる発言を
真に受けて 本当に洗って来たのかなあ...

とそんな事を考えて彼氏の顔を見ると
彼氏の顔が目の前の近くにあり
私の唇と彼氏の唇が重なった

そして いつの間にか 私の口の中に
苺味のキャンディーが転がる。

唾液を含んだ ちょっと溶け掛かっている
キャンディーが...

まだゆず味の香りと風味の余韻が口の中に
残っていたので

苺の甘酸っぱさと ゆずのはっきりした
酸味とが合わさって

爽やかさと甘さが三位一体となり
舌の上で蕩ける。

私は、何が起こったか分からず
一瞬 動きが止まる。

隣を見ると 彼氏が何事も無かった様に
普通に座って居た。

そんな彼氏の顔を見て 私の顔は
逆に真っ赤に染まって行き
彼氏の顔を見ない様に俯いた。

こう言う事が普通に出来るのが
恋人同士と言う物だが 私は、
未だに慣れない為

しばらく沈黙していた。
彼氏は、そんな私を分かって居るのか
居ないのか....

しばらく向こうからも 話し掛けては、
来なかった

少なくとも この口の中の
苺味とゆず味の香りが消えるまでは
私は、無言を貫いた。.....

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