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ゆずの香り

ころころと 口の中でキャンディーを
転がす そうすると ふわっとゆずの
香りが口の中に広がる。

爽やかで少し苦みのあるゆずの風味が
口の中をしゃっきとさせ 柑橘系の匂いが
鼻腔にも広がる。

「ん~美味しいけど 私は、もうちょっと
甘い方が好きかなあ~ そっちは何味?」
と私は、隣に座る彼氏に話題を振る。

私と同じく キャンディーを口の中で
舐めている彼氏は....

「ん~何だコレ 苺かなあ~ こっちの方が まだ甘いかなあ~ 俺はどっちでもいいけど....」

「あっ 私そっちの方が良かった
交換して!!」

「いや もう口の中に入ってるし無理」
彼氏に断られ 私は、キャンディーボックスに手を伸ばし 苺味のキャンディーを
探す。

もぞもぞもぞもぞと パッケージを
確認し 苺味のキャンディーを見つけ
まだゆず味のキャンディーが口の中に
入っている為 舌で舐めて小さくし
飲み込むのに時間が掛かった。

その為 まだ私の手の中には
苺味のキャンディーのパッケージが封を
切らずに 手の中に残っていた。

やっとゆず味を舐め切り 苺味のキャンディーのパッケージの封を切り 口の中に
放り込もうと キャンディーを指先で
摘まむと 指先が滑り キャンディーが
落ちてしまった。

「あっ!」ころころと床に....
「洗えばたべられるかなあ...」
と彼氏に 驚きの余り食い意地が張った
発言をしてしまう...

「洗ったらドロドロに溶けると思うけど...」と彼氏のもっともなツッコミに

まあ そうだよねぇ...

見るとキャンディーの数も残り少ない

(まあいっか!ゆず味も美味しかったし
また 買って来れば良いよね!)

私が半ばキャンディーの事を追い出して
一人で頭の中で納得していると...

「濡れてても良いならあげるけど...」
と彼氏がそんな事を言うので

まだ苺味あったっけ....
て言うか 私の洗えば食べられる発言を
真に受けて 本当に洗って来たのかなあ...

とそんな事を考えて彼氏の顔を見ると
彼氏の顔が目の前の近くにあり
私の唇と彼氏の唇が重なった

そして いつの間にか 私の口の中に
苺味のキャンディーが転がる。

唾液を含んだ ちょっと溶け掛かっている
キャンディーが...

まだゆず味の香りと風味の余韻が口の中に
残っていたので

苺の甘酸っぱさと ゆずのはっきりした
酸味とが合わさって

爽やかさと甘さが三位一体となり
舌の上で蕩ける。

私は、何が起こったか分からず
一瞬 動きが止まる。

隣を見ると 彼氏が何事も無かった様に
普通に座って居た。

そんな彼氏の顔を見て 私の顔は
逆に真っ赤に染まって行き
彼氏の顔を見ない様に俯いた。

こう言う事が普通に出来るのが
恋人同士と言う物だが 私は、
未だに慣れない為

しばらく沈黙していた。
彼氏は、そんな私を分かって居るのか
居ないのか....

しばらく向こうからも 話し掛けては、
来なかった

少なくとも この口の中の
苺味とゆず味の香りが消えるまでは
私は、無言を貫いた。.....

12/23/2023, 4:09:06 AM