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12/11/2023, 1:40:10 AM

仲間

「フレー フレー 赤組」

「フレー フレー 青組」

「フレー フレー 黄組」


クラスの応援団の声が聞こえる。

僕の番が回って来る


パシッと青いバトンが 僕の手に
乗せられる。

僕は、自分の 限界の 全速力で走る。

コースを周り 一位に 踊り出たと
思ったら 黄色組に 抜かされる。

背後には、赤組も 迫っていた。

このままでは、 最下位は、確実
もう駄目かと 思ったその時...


「頑張れ 頑張れ 青組!!」
「頑張れーーーーっ 青組!!」

クラスのチームの 仲間の声が聞こえた。

その声は、唱和し 谺し 僕の耳に届く

ドクン ドクンと 心臓が 鼓動し
その声が 僕の足を 前へ 前へと
引っ張る。

「頑張れ!!」 いつの間にか僕に 
バトンを 渡した子の声も聞こえる。

そうだ 僕は 託されたんだ。
あんなに 皆で 練習したじゃないか!

僕自身が 諦めようとするな!
大丈夫 大丈夫だ!

ゴール手前 黄色い ハチマキの背中が
見えた。
ゴールテープも もうすぐ目の前だ

走れ 走れ 走れ 走れ!!

止まるな アンカーの意地を見せてやれ

黄色いハチマキの子と 並んだ。

そして テープを 身体で切った。
黄色のハチマキの子も ほぼ ほぼ同時
だった。

どっちだ どっちだ
判定の結果 タッチの差で 僕達青組が
テープの 接触にギリギリ お腹の皮
一枚分くらい 速かった。


その結果を見て 僕は、
「やったあ~」飛び上がった。

いつの間にか 仲間達も 集まって来て
僕は、クラスの人達にもみくちゃにされた。

でも 全然 痛く無かった。
むしろ 嬉しかった。

最後に 僕にバトンを渡した子と目が
合った。

僕達は、互いに ニッコリと笑って

パチンと 手をぶつけ合い ハイタッチを
した。


そうして 僕達のクラスは、総合優勝を
果たした。

仲間達と 協力して 練習した
運動会は、見事に 大成功を納めて
終了した。

12/10/2023, 1:58:09 AM

手を繋いで

がやがやと騒がしい喧噪
人混みの 間隙を縫って
僕は、君を捜す。

「夏祭りに行こうよ!」
そう言って 僕に夏祭りの
ポスターを差し出した君

毎年 夏に開かれる その花火大会
人混みが 予想されるそれに
僕は、最初は、行くのを渋っていた。

でも キラキラした君の笑顔をに
押され 僕は、渋々 了承したのだった。 
スマホに掛けてみたが 何時まで立っても
出ない

決めておいた 待ち合わせ場所に
行ってみたが 来ない

僕は 二人で来たのを後悔していた。
せめて あと 数人のグループで
来て居れば もっと効率良く 人を
捜せただろう

あまり大事にしたくないが
警察に連絡しようか と
僕がそんなことを考えていた時

喧噪から 離れた 神社のお地蔵さんの
後ろに 蹲っている 人影を
見つけた 行ってみると 君だった。

「やっと 見つけた!」

僕が 呆れ声で言うと君は、

「えへへ ドジっちゃった。」
君は、頭を掻きながら 照れくさそうに
僕に向けて舌を出した。

見ると浴衣姿の君が揃いで 履いて来た
草履の鼻緒が 切れていた。
見ると 君の白い素足に 赤いマメが
出来ていた。


「はぁ~」と僕は、ため息を吐き
君の前にしゃがみ 背中を見せた

すると その態勢で なんのつもりか
分かったのか 君は、頬を赤く染め

「別に 子供じゃないんだから
おんぶなんてしなくて良いよ」
ぷいっと顔を背けて言う


「心配掛けさせた人が何言ってんの
ほら 早く乗って!」

僕が促すと君は、渋々と言った感じで
僕の首に 両手を絡ませ
僕の背中に乗る。

そうして 元来た道に踵を返し
僕達は、帰る事にした。


そして 道すがら 僕は、
思う

来年も 君は、懲りずに 
同じ事を言うだろう

そして 祭りの 明明とした 
電飾に 燥ぎ 色とりどりの屋台に
燥ぎ 花火に燥ぎ
僕の存在など忘れて 一人でいろいろな
所を 駆け回るだろう


だから 僕は、思うのだ
来年また 二人で 祭りに 
出掛ける事になったら
最初から 君と手を繋いで来ようと
君は、また 子供じゃないんだからと
言うかもしれないけど

僕は、もう それだけは、譲るつもりは 
無かった。

君の好奇心の手綱を引く為にも
君が居なくなる感覚を 感じない為にも

その代わりと言っては、
何だけど 来年 君が誘って来たら
僕は、渋々と言わず 即肯定を返して
あげよう 

毎年 君は、僕が 最初に渋るのを
分かってて誘うのだから
他の友達も誘えば良いのにって
勧めるけど 内弁慶の君は、
家族と 幼馴染みの僕にしか素が
出せない

だから最初 僕は、いつも君からの
誘いを渋っていた。
そうすれば 君は、他の人を
誘うだろうと 踏んで...

だけど結果は、いつも同じで
僕が誘いを 最初に断ると 君は、
途端に 尻込みして 体を硬直させて
しまう

僕から 助け船を出そうと
他の子に声を掛けようとすると
君は、僕の袖を強く引いて 強く首を
振る為 結局誘えない

でも 夏祭りには、行きたい
でも 一人は、寂しい

何とも我が儘な幼馴染みの要望を  
僕は、十二年間叶え続けて居る。

まぁ 特にそれに 不満は無い

君の幼馴染み離れを夢見ては居るが
それは、いつになることやら...
甚だ 見当も付かないが

子供っぽいくせに
手を繋いだり おんぶされたり
子供扱いされるのを嫌う君

本当面倒臭い

でも いつになったら 幼馴染み離れして
くれるんだろうと 思いながらも...
決して 急かそうとは、しない僕も
実は 大概なんだけどね! なあんて!

12/9/2023, 3:02:01 AM

ありがとう、ごめんね

私は、膝を抱えて 土手の芝生で
泣きじゃくって居た。

涙が いくつも いくつも 瞳から
溢れて止まらなかった。

私はいつも 皆の輪を乱す。
皆が 右と言う所を 私は左と言い
皆の気分を害する。

順調に行っていた 円滑に進んでいた
物事を 私の一言が 全部
台無しにする。

だけど 私は、黙っては いられない
だって 確かに正しい事だって
寄って集って 正論をぶつけて
それしか 選択肢が 無い様に
狭められたら 他の選択肢が消えてしまう
分かってる 多数派が
正しい風に扱われる事は...

少数派の 私は、異物と認識されて
しまう事も... だけど...


「また 派手にやったなぁ~」

ふと 泣きじゃくっている 私の
後ろから 声が掛けられた。

瞳に 涙を溜めて 唇を噛み締めて
私が見上げると

ポンと 私の頭に大きな手が 置かれる。

「何で 此処に・・・」

私は、嗚咽を漏らしながら
私を見上げる 幼馴染みに問い掛けた。

これもまた いつものパターン
私がクラス内で 喧嘩をして
問題を起こすと 仲介役として
迎えに来るのが この私の幼馴染みだ。

私がいじけて 泣きじゃくる場所も
心得ているので 私が クラスの人と
口論して 学校を飛び出すと
必ず迎えに来るのが この
幼馴染みの役目になっている。

幼馴染みにいつも 迷惑を掛けているのは、自覚している。

その事には、罪悪感も持っている。
私は、幼馴染みに...

「ごめ.....っ」と言いかけ

「じゃあ帰るか!」

幼馴染みは、何でも無い様に
私の ごめんねの 言葉を遮る。
幼馴染みは、私を促す事もせず
背中を向けてゆっくりと歩調を
緩めて 私が 追いつける
速度で歩く

私は 涙を 手の甲で 拭い
立ち上がり 幼馴染みの
背中を ゆっくりと 追い掛ける。

そして 幼馴染みの 隣に 並び

さっき 遮られた言葉を...


「ありがとう!」に替えて
学校へと 二人で 戻って行った。

12/8/2023, 3:54:25 AM

部屋の片隅で

部屋の片隅で 舞う埃

箪笥の隅に隠れてしまった。
片方の靴下 ペン 消しゴムなど

普段は、意識しない 部屋の端っこ

仕事納めの 師走の日

私達 一家は、大掃除を開始した。

部屋の隅に溜まった埃
糸クズ 髪の毛 クモの巣も張っていた。

ハタキで クモの巣を 払い落とし
畳を 茶殻を撒き 箒で掃く

網戸や 障子を 張り替え

床掃除 庭掃除 風呂掃除や
トイレ掃除も 普段の掃除より
念入りに 丁寧に

大掃除という 特別な日に限り
部屋の片隅を目にする。
家族 皆が 協力し 片隅を意識する。

綺麗にして あげるからね
いつも 迎えてくれてありがとう

これからも 行って来ますと
ただいまを繰り返し
必ず帰って来る場所

私達 家族を 迎えて 繋げてくれる場所

そうして ピカピカにして
また 部屋の片隅を閉じる。

そうして また来年 部屋の片隅を意識する。

お疲れ様と言って 綺麗にする為に

12/7/2023, 2:53:24 AM

逆さま

パァン!! 一つの破裂音が 響いた。
気付くと 俺は、後ろ向きに倒れる様に
意識を失った。

目が 閉じられる寸前 視界がぐにゃりと
歪み 反転する。上と下が 逆さまに 
なった様な 体が宙に浮いた様な
空間に ぐるぐると かき混ぜられている
様に感じられ 体の中にある臓器が
口から 飛び出そうだった。

銃で 額を撃たれ 見事に 貫通し
俺の額には、空洞が 穿たれ
俺は、死んだ。....

呆気ないと言えば それまでだし...
ロクでもない生き方をした 俺は、
案の定 ロクでもない
死に方をした。


所謂 その筋の 末端の末端だった俺は、
体よく 使い潰されたのだ...

こんな扱い この世界では
よくあること 上に 珍しく
褒められた 俺は 調子に 
乗ってたんだと思う...

その 褒め言葉さえも あいつらに
とっては、俺を嵌める為の
仕掛けだった。

それに 気付かなかった
俺の落ち度だ
分かってる...

でも もし何かが 一つでも違っていたら
全く 逆の 違う人生もあったのかも
しれない....


ああ神様 もし 生まれ変わる事が
できるなら...

誰も傷つけず 身内に 迷惑を掛けない
世間一般の平凡な庶民として

普通に誰かを愛して 結婚して
子供も 生まれて 平和な家庭を築いて

夫として 父親として 誰かを
大切にできる人生を...


今とは、逆の...
逆さまな人生を 俺にください...





【反転・・・】



「パパ起きて!!公園に行くって
約束だよ!」

息子が 俺の腹の上で ダイブする

俺は その衝撃で目を覚まし
伸びをしながら起き上がる。

「ん~っそうだったな...」

「貴方 大丈夫 やっぱり 今日の
お出かけは、やめて 家でゆっくりする?」

妻が心配そうに 俺を覗き込んで言う

「あ~あ 大丈夫 何か 変な夢見て
ちょっと夢見が 悪いだけだから」


「パパ 早く~早く」
「こらっ急かさないのパパ疲れてるんだから!」

息子が 俺の腕を引っ張り促す。
妻がそれを見て 窘め 叱る。

俺は、その光景を苦笑しながら
そして 幸せを噛みしめながら
見ていた。

何故だろう...
俺は、この光景を 当たり前だと
感じず ずっと欲しかった物が
今 目の前にあると感じる。...


妻と結婚し 子供も小学生になり
結婚生活も 随分立つと言うのに...

「パパ!」
「貴方!」

「「行こう!!」」妻と息子の声が重なり
俺に 笑い掛ける。

「ああ...」俺は、立ち上がり
玄関のドアを開け

二人と共に公園へと向かった。

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