ススキ
ぴょんぴょんと 白兎が、薄野原を
駆けていく
セピア色の空に 黄金色の薄野原は
よく映えていた。
白兎が、もう一匹の体が大きな兎に
話し掛ける。
「ねぇ ねぇ 父ちゃん お月様には、
人間が、居るって 本当?」
すると、父親兎は、小首を傾げて
「それは、正確には、人間が居るんじゃ無くて 月の影が 人間の形に見えるだけだよ!」
子兎は、赤味がかって来た空を見上げる
そして、「ふ~ん」と 口の中で呟く
今夜は、満月 満月の日には、
月の中に 人間の姿が、見えるという
子兎は、人間の姿を他の 下界に降りた
兎達から聞いていたが、自分自身で
関わった事は、一度も無い。
しかも人間には、兎達の言葉は、
分からないという
そんな 意思疎通が、出来ない 生き物に
近づくのは、子兎は、怖くて 怖くてたまらず 人間には、興味はあるが
会いに行く勇気は、無かった。
しかし 人間に 会いに行った
兎達は、頻りに 言うのだ
「人間は、愚かで 浅ましいし 残酷だ
一方で 優しく 儚げで 脆い」
その話を聞いた子兎は、首を傾げるばかり
だった。
人間は、やっぱり 怖いの?
それとも優しいの?
子兎は、疑問符を 浮かべるばかりだった。
だから、子兎は、月を見上げる。
まだ 見ぬ 人間に 想いを馳せて.....
脳裏
「私の事は、忘れてしまっていいから」
そう言った 君の寂しそうな笑顔を
僕は、頭の中で何回も何回も再生する。
意識が揺蕩っている直前 明かりが
パッと付く
見ると映画の エンドロールが流れていた。
「お兄ちゃん 行くよ!」
妹に そう声を掛けられ
僕は、席を立つ
「この映画アンコール上映が何回も
されてるよね
お兄ちゃん上映されるたび何回も
見に行くんだもん!
だから、私も興味出て来て
今日一緒に付いて来たけど...
すっごく良かった。」
妹が隣で、燥いでいる。
パンフレットを見ながら僕の方を向く
「この 女優さん お兄ちゃんと
同い年だね!」
「うん...」僕は、静かな声で頷いた。
いつか 君が言っていた
忘れてしまっていいからを
僕は、守りたくなくて、
君の笑顔を脳裏に焼き付けたくて...
僕は、君に性懲りも無く会いに行く
映画館のタイトルポスターを
見ながら また同じ風に席に
座り 君が再生されるのを眺め続けている。
「グリコやろう!」と、突然妹は言い出した。
長い石畳の向こう神社の石段が続いていた。
俺は、最初なにを罰当たりな事を...と
思っていた。
なにもこんな神聖な場所でやる事じゃないだろう...と
しかし周りを見渡すと 昼間なのに
人気がなかった。
夏の日差しに外出するのが億劫なのか...
たまたまお盆で、帰省ラッシュなのか...
妹を見るとにこにこと、腕を振り上げて
いた。
完全に じゃんけんをする態勢に
入っていた。
俺は、ため息を吐いて
「嫌だよ!帰って勉強したいんだから」
と 踵を返そうとする。
俺は、今年受験生だった まだ焦る年ではないし 成績も平均点以上取れていると
教師からは、言われていたが
念には、念を入れたかった
少しの気の緩みが、何に直結するか
分からない
一分一秒も無駄には、出来なかった。
しかし 妹も諦めない
「一回だけ 一回だけだから お願い」と
必死に 懇願するので 俺は、
根負けして、一回勝負を受けた。
結果は、・・・ 俺の負けだった。
妹は、両手を広げて 大喜びだったが
俺は、軽くショックを受けた。
手を抜いたつもりは、無いのに
自分は、意外とじゃんけんが弱かったのだと気付く
ふと俺は、思う
負けるってこんな感覚だっただろうか...
最近の 俺は、他の奴らに引き離されまいと 上ばかり見て、他の奴らが上に居ると
イライラして...
ふいに俺の下から声が聞こえた。
「お兄ちゃん...ごめんね...」
見るとさっきまであんなに大喜びしていた
妹が、顔を俯けて落ち込んでいた。
「はぁ~ 何謝ってんのお前」と
俺は、訳も分からず妹を見下ろす。
「だって私の我が儘のせいでお兄ちゃんの
勉強の邪魔しちゃって~」と
今更に なって 罪悪感が込み上げて
来たのか 妹がそんなことを言う。
俺は、苦笑して、妹の頭をポンポンと
優しく撫でる。
「こんなちょっとの時間が邪魔になるわけないだろう 俺の成績舐めるなよ!
むしろ...良い息抜きになった。
ありがとな!」
妹は 何でお礼を言われたか分からないらしく きょとんと 俺を見上げた。
俺は、その顔を見てまた 笑ってしまった。
こうして 俺達 二人は、家路へと
歩きはじめた。
意味のないこと
あなたとわたし
昔から、あなたとわたしは、正反対
だったね!
あなたは、宿題を最初に全部終わらせて
海や山のレジャーの計画を立てるタイプ
わたしは、のんびり自由研究や
図画工作 読書感想文など自分の興味を
掻き立てるものを遊び感覚で、終わらせて
苦手な数式や元素記号 小難しい古語の
プリントなどは、後回しにするタイプ
あなたは、ショートケーキの苺を必ず
最後まで取っておくよね!
ふわふわのスポンジと甘い生クリームを
一緒に食べて口の中を溶けさせてから
甘酸っぱい苺で口直し
わたしは、爽やかな苺の酸味の余韻を
口の中に残してから、甘い生クリームを
頬張る。
そうすると口の中にショートケーキがまだ
丸ごと残っている感じがするから
あなたの好きな色は、ブルー
わたしの好きな色は、ピンク
あなたは、物事を はっきりと口に出して
言うよね?
私は、おどおどして、人の顔色ばかり
窺ってしまう...
こんなに正反対なのにどうして私達
一緒にいるのかな?
でも...不思議なんだけどね!!
私...あなたになら、自分の気持ちを
ちゃんと言えるんだ。
あなたは、私は、私のままでいいって言ってくれたから だから私はあなたの隣に
居たいって思えたの!!
あなたのおかげだよ!!
ありがとう! 大好きだよ!!
「さぁ 起きて君の出番だよ!」
眠い目を擦り 欠伸をしながら
小さな体が立ち上がる。
大きな蓮の葉っぱを杖代わりに
最初は、野菜や植物達に
恵みの雨を
次に池や、湖に水を溜めて
動物達に 憩いの場所を
最後は、雨上がりに 反射する
虹の光を
傘を閉じて、空を見上げる
人間達に!!
優しい雨の妖精の贈り物
柔らかい雨