私達はいつだって、手を取りあった。
お金が無いときも、
追い出された時も、
変な人に声をかけられた時も。
でも、
そんな甘えた日常は、
嘘の様に変わった。
7月13日。
明須香が、突然亡くなった。
『どうして私じゃなかったの?』
私が代わりに死んでれば…
多分、明須香1人で生きていられたよね…
私じゃ独りどうしようもできないの…
明須香、
あなたは私の双子の妹。
私、産まれる分数が違うだけなのに、
年上ぶって格好つけてたよね…
私が泣いた時、明須香は私の事抱き締めて撫でてくれたよね…
『年上なのに、申し訳ないなぁ…』
『……』
明須香、お姉ちゃん、泣いてるよ…
何時もみたいに、抱きしめてよ…
優しく撫でてよ…
嘘でもいいから…
幻でもいいから…
『お姉ちゃんが逢いたがってるよぉ…』
私達、いつでも手取りあったじゃん…
手を取り合って、解決したじゃん…
明須香、笑ってよ…
お姉ちゃんを元気づけてよ…
明須香───
これまでずっと
癒された。
これまでずっと
にやけてた。
これまでずっと
可愛がった。
そんな日が、急に終わった。
ねえ。
「すーちゃん」
また、元気に走る顔、見せて欲しいなぁ…
私、すーが居なくなったら、どうしたらいい?
『すーちゃんへ。』
未来のすーに、手紙を書いた。
私、菜津だよ。
すーちゃん。
もうすーちゃんじゃないと思うけど、
また会ったら…
『すーちゃん』
って、呼んであげる!!
またね、絶対会お!
『……』
いつの間にか泣いていた。
この手紙が届くとしたら、
きっと
「誰?」
って言われるだろうなぁ…w
ハムスターのすーちゃん。
これまでずっと───
愛していました。
また、来てくれるよね───。
目が覚めると、いつものベッドにいた。
何故かベッドはびしょ濡れで、涙のあとがあった。
『…悪夢?』
なんの夢を見たのか思い出せない…
『まぁ、いっか。』
大した事じゃないと思って、考えずにいた。
───でも、どこか引っかかった。
『………』
変な名前が頭に浮かんだ。
『陽…菜?』
陽菜…ひな…ヒナ…日菜…
『日菜!?』
ようやく夢の正体がわかった。
どうして今まで気が付かなかった?
どうして親友を忘れていた?
『…馬鹿。』
…日菜の馬鹿。
私なんて、どうでもよかったじゃん…
『あ…』
意識が飛びそうになりながら歩いていると、
日菜が亡くなった事故現場が在った。
『……』
まだ微かに血の跡が残っている気がする…
…墓参り、行ったよ。
『日菜。』
『たまには、顔、合わせてよね…』
あの日、夏祭り行ったよね…
あの日、間違えて辛い弁当買ったよね…
あの日、
あの日…
泣いたよね。
『日菜ってさぁ。』
「なに?」
『私の事、庇いたかった?』
「あったりまえじゃん!ウチら親友だし!」
『ッ…そっか。』
なに、1人で妄想してんだろ。
「あのさ、」
『…?』
「ウチの顔、見て!」
え?
『ッ!?日菜?』
「えっへへ…」
「ごめんね、」
『なんでッ…』
『なんで、』
『私…』
『日菜に…あいだがっだ…』
「うん、そうだね。ウチも!」
『…また、会える?』
「ずっといる!」
『…大好き。』
「愛してる。」
『あーちょ、私の台詞〜!』
またこうやって、現実で笑い合いたかったな…
…ん?
現実?
「…またね。」
『ッえ?』
目が覚めた。
それすら夢だった。
会いたかったんだね…
『日菜───』
あなたの当たり前のこと。
私の当たり前って、なに?
指示通り動かされること?
ただ寝て起きて食べて出勤して、
労働して押し付けられて残業して…
そんな日々が、「当たり前」?
私が当たり前を創っちゃえば、
自由にみんなが暮らせるの?
仕事も無理やりじゃなくなるの?
「なにぼーっとしてんだよ。」
叱る上司。
「あなたの為にやってるの。わかる?」
呆れる母親。
「お前はここに必要ない!出ていけ!」
怒鳴る父親。
「私の当たり前、何処に行ったの?」
当たり前を失くす私。
結局世の中金なんでしょ?
結局当たり前は変わらないんでしょ?
私が動物だったら、可愛がられてたのかなw
───そんな走馬灯が浮かばった。
私は、当たり前を探すため、創るため、
変えるため。
来世に旅立った。
心配は要らないし、
お金も要らない。
私が欲しいのは───
自由。
「綺麗だね〜」
1年前の話。
私は、光空と輝く星空を見た。
光空は、あんな星空のように輝いていた。
『そう…だね』
「あ、そうだ!また1年後、ここで会お!」
『うん、いいよ』
光空の嘘つき。
『私がいくら待ったって…』
『会いになんて…来てくれないッ』
光空、私はここからずっと夜はここに来るよ。
『また…会おうって…言った…のにッ』
次の日の夜。私はまた、星空の下にいた。
『光空みたいだ。』
空が輝いている。
いつもより、綺麗に見えたんだ。
「───爽空。」
『ッ?光空…?』
「爽空。」
『光空なの?』
「私はずっとここにいるよ。」
『光空…』
「爽空からじゃ見えないけど…」
「絶対に、毎日いるから。」
「じゃあね!」
『待って…!』
『最期に…言わせて』
「いいよ。」
『…大好き。』
『ずっと好き!』
『私も、毎日来るよ!』
「うん。約束。」
指切りげんまんなんて、幼少期ぶりだな。
「じゃあ、また会お。」
『うんっ!』
───────────────────────
『ん…?』
夢だった。
『夢…かぁ。』
光空に会いたいなぁ。
「爽空。大好き。また会お。」
その言葉が、頭の中に何度も繰り返される。
『光空…ッ大好き!また会おうね!』
光空は、星空の下にずっといる。
そう思えた気がした。