神様だけが知っている。
僕に隠し事があること、
僕に好きな人がいること、
僕はもうこの風景を見なくなること。
学校で独りで弁当を食べていると───
「あ、あのさっ。」
振り返ると、僕の好きな人、海花だったんだ。
『なに?』
「私ね、壮くんのこと、好きっていうか…」
彼女は、照れて下を向く。
『そっか。』
「だ、だから、一緒に、どこか行きたいな…って。」
『いいよ。この後行こっか。』
「え、でも、壮くんって、生徒会の仕事…」
『大丈夫。もう終わってる。』
「すごっ!さすが壮くんだね!」
やっぱり、優しい海花が好きだった。
『最期になるかもだけど…』
「なんて?」
『…なんでもないっ!』
神様。僕に時間をください。
彼女と、共にいる時間を。
彼女が…海花が笑ってくれるまで…
海花は、僕の手を引いて、走った。
その姿は、美しかった。
「はーやーくっ!いくよっ!」
『う、うん』
…デート的な付き合いの後。
「どうしたの?」
『…海花。』
「なぁに?」
『…大好き。』
僕はそう言って海花を抱きしめた。
海花は、ちょっとびっくりしてたけど、すぐに笑って受け入れてくれた。
あぁ、彼女の笑い顔が見れた。
神様。僕はもう十分です。
───神様。
『ばいばい。』
僕は目を閉じた。
それから何があったかは分からない。
神様、また海花と巡り逢いたいです。
神様だけが知っている。
僕と海花が、付き合ったこと。
「進まないで。」
背の後ろから声がした。
「戻ってきて!」
何処かで聞いたことがある声…
『なんで?』
「いいから。」
振り返ると、誰もいなかった。
『…変なの。』
怖かったので、引き返して帰ることにした。
「おかえり。ありがとう。」
また、何処かで声がした。
さっきの声だった。
『ねぇ、あんた誰なの?』
イライラしだして、呆れながら聞いた。
「私はね────」
え?
『「星那」?』
「そうだよ。久しぶり。」
星那は、私の双子の妹。
そうだ。
あの道の先で亡くなったんだ。
『ごめん…』
声も思い出せない、怒り出すと、迷惑なことを沢山した。私は泣きながら謝った。
「いいんだよ。」
私を許す、優しい妹。
大好きだった。
私が泣くと、星那も泣いた。
私が風邪をひくと、星那も風邪をひいた。
私たちってさ…
私…たちって…さぁ…
『なか…よし…だった…よねぇ…』
星那の声はしなくなった。
私は沢山泣いた。
声が枯れるぐらいまで叫んだ。
『ありがどう…!』
『わだじ…がんばるね…!』
星那、見てるよね。
お姉ちゃん、頑張るよ。
…星那。
『星那。』
『頑張るから。』
「うんっ!」
おばあちゃん。
おばあちゃんが縫ってくれた赤い服、大好き!
「大切に使ってね。」
『うん!』
大事に使うよ!
「それじゃあ、行ってくるよ」
『どこいくの?』
「ちょっと、買い物に。」
『私も行く!』
昔は、鬱陶しいくらいおばあちゃんが好きだった。
───今になると、恥ずかしい。
5年前。
私が小学二年生の時のこと。
『おばあちゃん?』
『おばあちゃん、おーい!』
擽ってみると、びっくりする位 体が冷たかった。
『おばあちゃん?おばあちゃん…』
仕切りに目を擦る私。
これは夢?それとも、ドッキリ?
亡くなるおばあちゃんを受け入れられず、冗談だと信じ込んだ。
『そう…だよね。私ったら。』
でも、次の日になってもおばあちゃんは起きない。
『おばあちゃん…私、死んじゃうよぉ…』
私は、3歳の頃、おばあちゃんに預かられた。
おばあちゃんは優しくて、甘えていた。
───起きてよ。
私が周りに助けを求める。
男の人が、救助隊をよんでくれた。
おばあちゃんは運ばれた。
私は、泣きながら見送った。
その男の人が、私を引き取ってくれた。
名前は、「綾斗」って言うんだって。
2年後、お墓参りに行った。
おばあちゃん。まだあの赤い服、大切に使ってるよ。ほつれているけど、不器用な私の手じゃ直せないやwほつれた「赤い糸」を持ち、墓にそっと添えた。
赤い糸、大切に使ってね。
なんて、照れくさい。
でも、私は嬉しかった。
『おばあちゃん、また逢おうね』
物 語
それが、私の13年間のストーリー。