『朝日の温もり』
「悠人さん、起きて」
肩を揺さぶられた。
「ん、、、」
ちょうど意識が浮上してきた時だったので、ゆっくりだけど、目を開けた。
「ほら、イイ天気だよ」
カーテンを勢いよく開けられて、朝の光が部屋に差し込んだ。
「せっかくだし、早めに出かけようよ。
朝ごはん準備するね」
窓のそばに立つ夏目はそう言ってから、俺より筋肉がついた裸の上半身と部屋着の短パン姿でキッチンへと出ていった。
「悠人さん」
キッチンへと消えたかと思ったら、寝室の入り口から首だけを出した。
「なに?」
「朝ごはん準備する間にシャワー浴びちゃってね」
「あーうん、、、」
返事に満足したのか、夏目はきれいなウィンクをして、またキッチンへと消えた。
あーいい天気だ。
梅雨の晴れ間。
『世界の終わりに君と』
悠人さん、ずっと一緒にいてください。
こんなに好きになった人は
生まれて初めてなんです。
性別とか年齢とか
そういうのは関係ないです。
え?
終わり?
考えられないです。
なんなら
来世もお願いします!
「悠人さんじゃないと、僕、、、。
僕、もう、悠人さんしか、、、いです」
「おい、雪村、、、。
お前、そいつ、どうにかしろよ。
2回目だぞ、こういうの、、、。
酔っぱらってるっていっても
願望っていうより
本性、、、いや、欲望丸出しじゃねーか」
『君と出逢って』
「悠人さん、、、」
振り返ると、夏目はソファーに座ったまま寝ていた。
なんだ、寝言か、、、。
ゴールデンウィーク前半はあちこち出かけたので、後半は家でのんびりしている。
今晩は俺の家に泊まり。
晩ご飯を食べ終わったあとの片付けをしている間、夏目はテレビを見ていたのだけど、寝てしまったようだ。
口、半開きでかわいいな、、、。
ちょっとおかしくて、口元が緩るんでしまう。
このあと、コンビニで買ったデザートを食べるって言ってたから、起こさないとだな、、、。
キッチン周りも片付け終わり、脳内で「よし!終わり」と声に出して、夏目の方を振り返ろうとした。
「悠人さん」
え?
振り返ろうとして、それが出来なかった。
後ろから伸びてきた腕に、自分の腕を捉えられる。
寝ていると思った夏目がいつの間にか真後ろにいた。
「お前、寝てたんじゃ、、、」
「うん、目が覚めたんだけど、、、」
「?」
「キッチンに立ってる悠人さんが目に入って、こうしたくなった。
ふふふ、、、悠人さん、耳赤いよ?」
「、、、!!」
「ねぇ、悠人さん。僕、幸せ。
だから、もっと幸せにして?ね?」
『流れ星に願いを』
「夜の海は冷えるケド、風は気持ちいいな」
雪村さんがそう言って、アレだ、アレ。
某有名映画のワンシーンかっていう、両腕を左右に広げて船の先に立つやつ。
あの女優のポーズで風を受けている。
気持ちよさそう。
そのシーンを思い出したら、笑いが込み上げてきて、肩を震わせていたら、それに気づいた雪村さんが訝しげにコッチを向いた。
「なんだよ?」
「い、いや、それより、、、。
空すごいですよね」
「確かに、、、だな」
ごまかすように話しを逸らしたけど、本当に空の星がキレイだった。
「あ!今!」
突然、雪村さんが空を指さした。
「今の見たか!?あ!ほら!また!」
子どもの様に喜んでいる。
「雪村さん、、、」
「夏目も今の見たか!?」
そう言いながらコッチを見た雪村さんにグイッと一歩踏み込んで近づく。
「夏、、、」
「悠人さんとずっと一緒にいたいです」
「な、なに言って、、、」
「だって、流れ星見つけたら願い事言うんでしょ?」
僕が悠人さんの頬に触れる。
悠人さんがゆっくり目を閉じた。
『快晴』
「風が気持ちいいなー」
車のアクセルを踏む夏目が正面を向いたらまま言う。
日曜日。
昨日までは雨続きだったけど、今日からしばらくは晴れ模様らしい。
過ごしやすい季節のせっかくの晴れの休日なので、ドライブに出かけることにした。
「月並みですが、海に行きましょう!
夏だと暑すぎて大変だから、これくらいがちょうど良さげじゃないですか?」
今朝、ついうっかりいつも通りに目が覚めてしまった俺にタイミングよく連絡してきた夏目。
「SNSで見つけた海沿いにあるカフェに悠人さんの好きそうなスイーツがあったよ」
ランチの場所はもう決めているらしい。
こういうところも抜かりない。
「なんか、いいな、こういうの。
これからもたくさんこういう風にあちこち行けたらいいな」
俺がそういうと、ちょうど赤信号でブレーキを踏んだ夏目がこっちを向いた。
「以心伝心!」
いつものクールな顔が嬉しそうに破顔した。