『もっと知りたい』
朝なかなか起きられない
家では甘えんぼ
照れ屋
仕事はテキパキ
瞳の色が薄い
お酒に弱い
細マッチョ
襟足が色っぽい
声が色っぽい
まだまだある。
語り出したらキリがない。
でも、知らないコトもまだある。
「だからーー、僕、、、」
今日のお酒は楽しい。
「、、、おい、雪村、それ、どうにかしろ」
『平穏な日常』
「映画行きませんか?」
休みの朝、少し遅くに起きた。
泊まりに来ていた夏目が、先に起きて朝食を準備してくれている。
目玉焼きやらが乗ったらプレートを俺の目の前に置きながら、今日の外出先の提案をしてきた。
「映画?
何か見たいのがあるのか?」
「この間、同窓会に行った時、映画の話が出て、面白かったって話聞いたので」
スマホの画面を見せてくる。
最近、よく宣伝のCMが流れているヤツだ。
でも、、、
「コレ、恋愛モノだろ?」
「だからですよ」
イスに座った夏目が、肘をついた手に顎を乗せて、口元に弧を描いて、こっちを見る。
「ね? 悠人さん。
行こうよ、デート」
肘をついてない方の手をこっちに伸ばしてくる。
親指で口元に触れた。
押しつぶすように唇をなぞる。
触れられたところが熱い。
「悠人さん、赤くなってかわいい」
「う、うるさい!!」
それしか返せない俺に、夏目は、、、司は、
大声で笑った。
『絆』
今日は高校の同窓会だ。
明日は土曜日で休みだから、本当は雪村さんの家にお泊まりしたかった、、、。
スマホ画面の、会社でこっそり撮った雪村さんの写真を見ると、その思いはますます強くなる。
「夏目ー。
お前、ますますイケメンになったよなぁーー」
「それな!わかる! スーツ着こなしててさー。
女子がチラチラ見てんじゃん」
同窓会が始まって2時間もたてば、酔っぱらいが量産される。
僕もまぁまぁ酔っぱらってるか。
あー、雪村さん、、、。
「僕、美人の恋人いるから、、、」
別にコレくらい言ってもいいよな。
雪村さんは美人だ。
こう言うと、本人は嫌がるけど。
「うわーー。イケメンにはもれなく美人がついてくるのかよ、、、」
「うらやましすぎるーー」
面倒くさい酔っぱらいが増える。
雪村さんの声聞きたいな。
次の瞬間。
僕のスマホが着信を告げた。
【雪村 悠人】
ユキムラ ハルト。
雪村さん!!
以心伝心かよ。
ニヤけちゃうじゃん、、、
「なんだよー。イケメンって、ニヤけてもイケメンかよー」
酔っぱらいのうるさい声は無視だ。
『大好きな君に』
今思えば、朝起きた時から予兆はあったんだ。
3月、春とはいえ、今日はビックリするくらい寒い。
街行く人達もコートを着込み、マスクの人も結構いる。
俺も例外なく、コートを着ている。
そして、こんな寒い日に限って、外回りが急遽入る。
「ただいま戻りました、、、」
なんとか正午前に帰社することができて、ホッとした。
午後からは会議だから。
「雪村、大丈夫か?」
同期、、、の桜井が声を掛けてきた。
「お前、顔、赤いぞ?
熱あるんじゃないか?」
「そんなコトは、、、」
言いながら、自分の席に座ろうとして、よろけたらしい、、、。
「雪村さん!?」
隣の席の女子社員、、、高崎さんの驚いた声がこもって聞こえた。
視界が暗くなって、さらに何か聞こえて、支えられたのがわかった。
あぁ、華奢な高崎さんに寄りかかってしまったのかな?
あとで、謝っておかなきゃ、、、
あれ?なんかフワッとする、、、
あれ?この香り、、、
あれ?俺、どうしたんだっけ、、、?
ハッと、目を開けた。
「あ、雪村さん、気づきました?」
至近距離に夏目の顔がある。
え?
「このまま医務室に運びますね。
雪村さん、朝からなんか顔色悪そうって思ってたんですけど、まさか熱あるとは思ってなくて、気づかなくてすみません、、、僕、、、」
俺は、夏目に所謂『お姫様抱っこ』をされていた。
降ろせ、、、とかなんとかいろいろ言いたいはずなのに、一気に怠さやらなんやらが襲ってきて、口を開くのも無理だ。
「、、、」
諦めて、夏目の肩に頭を乗せた。
伝わってくる夏目の体温とほんのり香る香水に全てを委ねて、目を閉じた。
『たった1つの希望』
「そのネクタイよくつけてるよな」
あの人の同期さんが声をかけてきた。
今日のネクタイは、1番のお気に入り。
1番のお気に入りなので、使用する確率はかなり多め。
というのも、あの人からの誕生日プレゼントだから。
「プレゼントです」
「あーそういうこと、、、」
プレゼントと言っただけで、全てを悟ったかのような言い方をしてきた。
「なんですか?」
「アイツからのプレゼントだろ?」
「そうですけど、、、」
「だからだよ。
ネクタイを贈る意味って知らねーの?」
あまり気にしたコトなかった。
「あなたに首ったけ。夢中ってコトだろ」
「はぁ、、、」
マジか、、、
あの人、普段会社とか外ではなんてコトないって顔してるのに、わかってるケド、ちゃんと僕のコト好きなんだ、、、
あーヤベ
顔がニヤける、、、
口元を手で覆い隠す。
「でもなー、アイツ、人たらしだから老若男女誰でもひっかけるからなー。心配だよなー」
同期さんの目が笑っている。
「大丈夫です。僕にはコレがありますから」
僕はネクタイを締め直して、胸を張った。