「待ってて。今逝くから。」
そう呟いたあと、俺はもうすぐ朝日の上る海を見つめる。
ここで、彼女は亡くなった。
原因は『自殺』
未だになぜ、自殺したのかわからない。自殺する前の日には、いつもどおりデート行って、俺の家泊まって、朝、用事があるからといって早めに家を出た。
その二時間後にここで死んだ。
なぜ死んだ?なにが辛かった?なにが不満だった?俺じゃ解決できなかった?頼りなかった?そう思って、ずっと思いつめて、約2年。
2年という月日はあっという間で、彼女の自殺する前の日は、昨日の出来事かのようにすぐに思い出せる。
俺は、海を見つめる。
なんとなく、彼女が海に飛び込んだ謎が解決したように思えた。
この海は、死の先の道だと。そして、なぜか飛びこみたくなるという欲と自然に足が動くという、海の美しさに人間の本能を感じる。
俺は、足を動かす。
「なぁ、もし、また出会えたら」
もう、腰まで海水が。
「もし、生まれ変われたら」
肩まで浸かる。
「もし、この先で会うことができたら」
もう顔が浸かりそうだ。
「俺と、ずっといっしょにいてくれますか?」
泣きそうな声で、俺は海に問いかける。
『もちろん。あっちで待ってるよ』
彼女の優しい声が聞こえた。
「待ってて。すぐに行くよ」
朝日が上り始め、海は太陽に包まれて、世が朝を迎える。
とある観光客が海を見つめた。
「おぉ…!船もなければ、人もいない!最高の絶景スポットだ!」
海は、美しく揺れていた。
誰もがみんな恋をする。
誰もがみんな挫折する。
誰もがみんな挑戦する。
誰もがみんな幸せを手にする。
学校につき、私の机を見るとたくさんの悪口。
○ね
きえろ
帰れ
来んな
キモい
汚い
たくさんの言葉が私の机に書かれている。
「うーわっ今日も来たんだけどw!」
いじめの主犯のクラスメイトが話す。
「…」
その日の放課後、私は一人残りネームペンを持って、いじめっ子の机の前にやってきた。
さて、何を書いてやろう。
そう思い、ネームペンを机につけようとした。
なぜか書けない。
あれ、?
「なんで…」
私は、考えればいくらでも出てくるいじめっ子の悪口を書くことができなかった。
次の日、いつもどおり机には悪口。
クスクスと笑う甲高い声。
すごいな。どうして書けるんだろう。
私には、こんな人間とは言えないような行動ができなかった。
私の能力は、死のカウントダウンがわかる能力。
彼は、時計の針が12を回った頃に亡くなってしまうとわかるのはこの能力のおかげ。
でもこの能力はとても残酷で、私の好きになった彼は、時計の針が12を回った頃にこの世にいなくなってしまうとわかるのだ。
「ねえ、ゆうまくん?」
「ん?」
彼のカウントまで残り、1時間。
私達は、交差点の信号を待っていた。
「なんで私と付き合ってくれたの?」
「んー、お前が好きだったからだよ。」
そう言って、彼は私の手を持った。
温かい。
「ねえ、ゆうまくん。私のどこが好き?」
「え?んー、優しくて人このことを思いやれるところかな」
「一番大切にしてるものは?」
「ものか…んー、ゲームかな」
「私といて何が楽しかった?」
「え?もう毎日だよ。学校で会うとき、放課後に遊んだとき、休日のデート、夜の電話とか…」
「将来なにしたい?」
「んー、将来かぁ、大工かな。」
「大工さん?」
「そそ。でも、一番は」
「?」
「お前とずっと一緒にいることだな!」
「っ!…、」
このとき私は、『私も』とは言えなかった。
「ゆうまくん。大好き」
「?俺も好きだぞ」
「本当に大好き。お願いだからどこにも…」
このとき、私達は私の家の近くの信号を歩いていた。
ものすごい速さで、迫ってくる車と目が合う。
「ぇ…」
「つむぎッッ!!!」
次に目を開くと、そこは真っ赤の地面だった。
「ゆ、ゆうまくん…?」
「…」
彼は、目を開けない。
「ゆうまくん…ゆうまくんっ!!」
何度肩を揺さぶっても、びくともしない。
私は、彼の手を握る。
冷たい。
「、ずっといっしょにいてよぉ…!大工さんになって、私と一緒に暮らそうよぉ…ねえ、ゆうまくんっ!」
私の目からは涙が。
「こんな能力、なければいいのにっ!」
彼の時計の針は、12時を指していた。
なんで私を裏切ったの?
おかしいよ。世界で一番愛してるって言ったのは誰?一生一緒って言ったのは誰?
『お前だけ』って言ったのは誰?
「ねえ、おいていかないでよ…」
初めてのデートで行った場所で見かけた彼は、いつもよりお洒落で、隣を歩く女性は私とは真逆で、ロングヘアのスタイル抜群で、綺麗めな年上のお姉さん。
自然と目にボヤがかかる。
あれ、頬が冷たい。地面が水滴で濡れる。
私は、彼に近づく。
「ゆうまくん。」
「?!つ、つむぎ…」
「ちょっとゆうま?この女だれ?」
「えっと…」
なんで…
私は、自分の首につけられていたネックレスを取り、彼女さんにさしだす。
「な、なにこれ」
「私という存在の証です。」
「は、はあ?」
「気にいると思いますよ。だって、ゆうまくんとおそろいですから。」
「、ッ!ちょっとゆうま!どういうこと、?!」
「つ、つむ…」
私は、ゆうまくんに近付こうとする彼女さんの背中を押す。
「わっ!」
彼女さんは、ゆうまくんの胸におさまる。
「他の女の匂いをつけてちゃだめだよ?」
そう言って私は立ち去った。
「私じゃ…なかったんだなッ」
そう言ったら、涙が止まらなかった。
涙をふく気力もなく、私は歩き続ける。
行き先は、私のおうち。
早く、シャワーを浴びて、彼と同じ匂いの香水を取らなくちゃ。
「ゆうまくん、ばいばい」
涙は、星のように流れていった。