霜月はつか

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「待ってて。今逝くから。」
 そう呟いたあと、俺はもうすぐ朝日の上る海を見つめる。
 ここで、彼女は亡くなった。
 原因は『自殺』
 未だになぜ、自殺したのかわからない。自殺する前の日には、いつもどおりデート行って、俺の家泊まって、朝、用事があるからといって早めに家を出た。
 その二時間後にここで死んだ。
 なぜ死んだ?なにが辛かった?なにが不満だった?俺じゃ解決できなかった?頼りなかった?そう思って、ずっと思いつめて、約2年。
 2年という月日はあっという間で、彼女の自殺する前の日は、昨日の出来事かのようにすぐに思い出せる。
 俺は、海を見つめる。
 なんとなく、彼女が海に飛び込んだ謎が解決したように思えた。
 この海は、死の先の道だと。そして、なぜか飛びこみたくなるという欲と自然に足が動くという、海の美しさに人間の本能を感じる。
 俺は、足を動かす。
「なぁ、もし、また出会えたら」
 もう、腰まで海水が。
「もし、生まれ変われたら」
 肩まで浸かる。
「もし、この先で会うことができたら」 
 もう顔が浸かりそうだ。




「俺と、ずっといっしょにいてくれますか?」
 泣きそうな声で、俺は海に問いかける。


『もちろん。あっちで待ってるよ』


 彼女の優しい声が聞こえた。
「待ってて。すぐに行くよ」



 朝日が上り始め、海は太陽に包まれて、世が朝を迎える。
 とある観光客が海を見つめた。
「おぉ…!船もなければ、人もいない!最高の絶景スポットだ!」
 海は、美しく揺れていた。

2/13/2024, 3:06:58 PM