フィロ

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7/26/2024, 10:53:31 AM

自分ひとりの命だって持て余しているのに
誰かのためになるならば…
なんて
そんなおこがましい事をどの口が言うのだ?と呆れられてしまいそうだ

自分ひとりを背負うのがしんどくて、しんどくて、何度人生という名の旅路を諦めようとしたことか…

そんな自分が誰かのために?

誰にも迷惑をかけないことを考えるのが先だろ、との叱責が聞こえてくる


そんな自分でも誰かのためになることが出来るのだろうか

例えば…
どうやって諦めかけた人生の軌道修正をしたか…とか

そうね、その軌道修正が成功したと思える時が来たら、
誰かのためになれるかもね




『誰かのためになるならば』

7/25/2024, 11:39:32 PM

籠の中の生活なんて窮屈でしょうね…
きっと自由に空を飛び回りたいでしょうに…

なんて、思ってくれちゃったりしてます?
とんでもない!

私はこの家で飼われているおしゃべり好きなインコのピーコ
上げ膳据え膳、風通しの良い造り、好きな時に寝て好きな時に遊んで、人間様の滑稽な毎日をウォッチングの高みの見物…
住めば都、ちょっとしたコツさえ掴めばそれはパラダイスなんだから♪


「ピーコちゃん、おはよう!今日も元気?」

これが、ママさん
私のお世話係の方 言わば、私の生命線 まあ、家族皆のお世話係でもある偉大な方
皆頭が上がりません!
この方のご機嫌をとっておけば、ほぼ全てが上手くいきますよ

「ママ、キョウモキレイネ  ママ、ダイスキ」
「まあ、嬉しい!本当にピーコちゃんはお利口さんね  今ご飯あげるわね♪」

こうやってご飯はすぐに出てきます


「ピーちゃん、おはよ〜  ご飯食べた〜?ご飯食べたら遊ぼうね♪」

これがこの家の子供のマコちゃん
小学校3年生の元気な女の子
私の遊び相手
いつもマコちゃんの肩に乗って、頭を撫で撫でしてもらいます(させてあげてます)
マコちゃんが遊ばせてくれるお陰で私も生活習慣病にならずに済んでます

「マコチャン、オハヨウ  アソンデ、アソンデ」

こうやって食後の運動はバッチリです


「あ〜、何か寝ても寝てもスッキリしないなぁ    あ、ピーコ、おはよう   マコちゃんに遊んでもらってるの?パパの肩にも乗ってごらん」

これがこの家の大黒柱のパパさん
良い人だけど、ちょっと臭う…
だからパパさんの肩には乗らない
前にプハ〜ッて息をかけられて懲りました…

「パパサン、マタネ パパサン、マタネ」
「なんだよ〜、ピーコはつれないなぁ」

それ、ハラスメントよ


あ、私の好きな曲!
朝ドラのオープニング大好きなの♪

「アサドラ、イイネ  アサドラ、イイネ」
「あ、ピーちゃん朝ドラ好きだもんね!チャンネル変えとくね」

こうやって、私のご機嫌タイムは確保されます♪

ちょっと小腹が空いて、甘い物食べたいな〜と思ったら
「ピーチャン、バナナスキヨ ピーチャン、バナナスキヨ」
「ピーコちゃん、おやつ欲しいの?
バナナ大好きだもんね! ちょっと待っててね
お野菜も食べなきゃね!  今日は小松菜入れておくね」
「レタス、スキヨ レタス、スキヨ」

こうやって、さりげなく好き嫌いもアピール


好きな時に水浴びして、お昼寝して、テレビ観たり、歌ったり、退屈したらおねだりして
こんな極楽手放せないわ♪

たまには外の世界へ行きたいかって?
私は真っ平御免です
この家の中だけだって、危険がいっぱい
先住民の猫のマロンなんか、隙あらば私にちょっかい出そうと狙ってるし
マコちゃんが居る時でないとお部屋に出るもの危険です

私からしたら、人間様の方がよっぽと窮屈そう
面倒なしがらみや見えない鎖に繋がれて、いつも疲れた顔をして…

一度、誰からも邪魔されない「鳥かご生活」を試してみることお勧めしますよ
こんなに快適だったの?とビックリすること請け合いよ♪




『鳥かご』

7/24/2024, 9:56:10 PM

私には大切な友達がいる

出会いはオンライン上、SNSだ
だからお互い本当の名前も連絡先も、顔さえ知らない
困った時や苦しんでいる時に会いに行けない、実際に力になれることなんて何もないかも知れない

そんなのは 友達 とは言わないよ
と言われるかも知れない
それでも、私は友達だと思っているし、そこにはちゃんと「友情」が存在していると感じている

年齢だっておそらく母子ほど離れているけれど、初めて彼女と出会った時から、彼女を放っておけないという不思議な力で引き寄せられたように思うし、
その後も何度かメッセージをやり取りするうちに、この出会いは必然だったと彼女とは何かの縁で繋がっていたことを感じている


面と向かって話が出来ないからこそ視覚に頼れない
文面だからこそ、言葉とは裏腹な心の奥の本当の思いが伝わることも多い

彼女の言葉は私がこれまで感じたことがないほど(夫以外)ストレートに心に刺さるし、私も素直に受け入れる事が出来る
余計な装飾のない、物事の本質を見つめる感性から出てくる彼女の言葉に私はいつもワクワク、ドキドキする
自然と私も感じるままの言葉を彼女に届けることが出来る


もちろんこれは、私の独りよがりの勝手な感情かも知れないし、彼女が友情を感じているかは分からない…

それでも…

例えそれがバーチャルな不確かなものの上に存在するものであっても、私の中に生まれた「大切な友への思い」は本物だ
それを「友情」と言ったっていいじゃないか




『友情』

7/24/2024, 6:43:49 AM

朝の日課の水やりを済ませると、咲き始めたアメリカンブルーの涼し気な青色がその水の恵みを受けてさらに美しく輝いて見える

浩介はその花達に愛おしそうに声をかけた
「乃梨ちゃん、今朝もまた子供達元気に咲いてるよ」


浩介と乃梨子の間には子が無かった
それでも、二人は充分幸せだったし、すべては自然に任せよう、というのが二人の選択した生き方だった

仕事で留守がちな毎日に不平を一切言うことなく卒なく家事をこなす乃梨子に、浩介は感謝しかなかったが、出来れば乃梨子にも何か打ち込めるものを持って欲しいと思っていた

乃梨子は気立ては良かったが積極的に何かを求めるタイプではなく、与えられたものに大人しく従う質だった
「乃梨ちゃんも何か始めたらどう?」
と浩介は時折声をかけたが
「そうねぇ…」
とニコニコ微笑むだけだった


そんなある日、二人で買い物に出掛けたホームセンターの一角で乃梨子がアメリカンブルーの苗を見つけた
「このブルー、とっても素敵! 育ててみたいわ」
浩介は、自分から何かをしたいと言い出した乃梨子の言葉が嬉しくて
「もちろんだよ!買おう、買おう!育ててみようよ!」
と子供のようにはしゃいだ


それからというもの、乃梨子は園芸の本を一気に読みあさり、ジョウロさえなかった庭に必要な道具や用土や肥料を次々に揃えていった
その行動力に浩介はただ、ただ驚いた
(乃梨子のどこに、こんなパワーが隠れていたんだ?  俺は乃梨子のことをまったく分かっていなかったのかも知れないな…)
と、乃梨子の新たな魅力に少しときめいた


何かに集中し出したら一気にのめり込むという乃梨子の新たな気質のお陰で、乃梨子はアッと言う間にプロ顔負けの園芸家としても充分活躍出来そうなまでになっていた
そんな乃梨子に育ててられた花達は、それはイキイキと幸せそうに咲き誇り、特に乃梨子の才能を引き出すきっかけとなったアメリカンブルーは際立って誇らしく、乃梨子が挿し木や接ぎ木をしながら丹精込めて育った甲斐あってその存在感は見事なものだった


そんな夏を三度ほど経験した頃には乃梨子は
「いつかね、ここに蛍を放てるようなイーハトーブを造りたいのよ」
と夢を語るようになっていた
もちろん、浩介は全面的に応援するつもりでいたが、ただ少し気掛かりなことがあった

園芸の仕事は思った以上に体力を使う
そのせいか、乃梨子が以前に比べて痩せてきているような気がしていたのだ
「乃梨ちゃん、あんまり頑張り過ぎるなよ  体壊したら元も子もないからね」
と案ずる浩介に乃梨子は
「痩せたくらいでちょうど良いの」
と照れ臭そうに笑った


そのうち、乃梨子は少し重いものを持つと肩で息をするようになり、食事の量もかなり減っているようだった
ふんわりした洋服を着ることの多い乃梨子だったが、明らかにその洋服の中の体が薄くなっていることに浩介も気付いていた
「ねぇ、乃梨ちゃん  どこか悪いんじゃないの?」
と恐る恐る声を掛けた浩介に乃梨子は観念したようにポツリポツリと話し始めた


「浩介さん、心配させてごめんね
私ね、たぶんもうあんまり生きられないみたいなの
でも、そんなことを話したら、すぐに病院へ入れられちゃうでしょ
お花の世話が出来なくなっちゃうでしょ?
浩介さんには本当に申し訳ないけれど、最後の瞬間まで花達と居たいの

花達に生きる意味を貰ったから、私のすべてを捧げたいの
だから、すべて許して
ごめんなさい」

そう言って泣きながら差し出した腕はすでに棒のように細くなっていたが、浩介の手を握る手は燃えるように熱く、力強かった
最後まで命を燃やし尽くしたいという乃梨子の強い意志がその手から浩介に伝わった

やつれた乃梨子の顔には、今まで見たことのない神々しさが宿っていた
浩介はただ、ただ流れ出る涙をどうすることも出来ず、乃梨子のその手を握り返すことが精一杯だった



浩介は花の手入などはしたことも無かった
出来るのはせいぜい朝の水やりくらいだった
「私が居なくなっても、この子達がいてくれれば淋しくないわよね!」
とイタズラっぽく笑う乃梨子の顔が浮かぶ

乃梨子が育てていた花達すべてはとても面倒見切れないが、このアメリカンブルーだけは枯らさず育てていくと乃梨子にも約束した
その花達がまた今年も沢山花をつけてくれそうだ
「乃梨ちゃん、花達が居ると賑やかだけど、やっぱり乃梨ちゃんが居ないと淋しいよ…
一緒に見たかったよ…」
浩介は花の精になった乃梨子に語りかけた

「浩介さん、淋しがらないでね
私は花に形を変えちゃったけど、浩介さんがずっと大事にしてくれれば、こうして花を沢山咲かせて浩介さんの愛に応え続けるから…」
と乃梨子のいつもの可愛らしい声が浩介の耳元で聞こえた




『花咲いて』

7/23/2024, 2:01:12 AM

ある日突然、今までの日常からまるでつまみ出されるように、当たり前と思っていた日々が送れなくなったとしたら、あなたならどうするだろうか?


どうにかして今までの日常を取戻すべく躍起になる?
自分の何がいけなかったのか、どこに原因があったのかを懸命に反省しようとする?

やがて、元には戻れないという現実に直面し、これまで日常と思っていたことこそが幻ではなかったのかとさえ思うようになってしまうかも知れない


自分の人生は自分自身でコントロールしていると愚かな錯覚の中で思い上がって生きていると、つい
人の営みは、自分ではどうしようもない運命の流れという大きな激流の中で、その波に器用に流されているだけに過ぎなかったことに改めて気付かされる


それでも尚、
もしタイムマシンがあったなら、そんな事実に直面する前の自分に戻って、もう一度そこからやり直してみたいなどと往生際の悪いことを思ってしまうものだろう

そして、そんな時に一番欲しいものは?と問われたら、「いつもの日常のバックアップ」と答えてしまいそうだ


例えこれまでの日々が幻の如く形を変えてしまったとしても、その中で積み上げた記憶は自分の心の中に確かな記憶として残り続ける

やがて、歳を重ねる中でその記憶が薄れ始めたら、
その時はまたタイムマシンに乗って記憶のバックアップを拾い集めに行こう




『タイムマシンがあったなら』
『一番欲しいもの』

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