ただ、君だけを
サンゲツのことを見ると、幸せでいっぱいになる。
好きな物を幸せそうに食べてる姿や、映画やテレビを見てるときの姿、隣で安心しきったように眠る姿。
それらの姿を見るのが、俺は大好きで仕方ない。
ただ、あいつだけを見るのが俺の唯一無二の幸せだったんだ。
すみません、題じゃないです。
BL表現があります。
四葉のクローバー
それは初恋だったのか……と言われれば、そうだったのかなと俺は曖昧な答えを言ってしまう。
あの日、ミステリー様の下に来た時に、先に居たサンゲツに目を奪われしてしまっていた。
綺麗な銀髪に、深海みたいに青い瞳……そして整った顔立ちをした容姿……まるで、昔話に出てくるようなお姫様のように俺は思えた。
けど、初めての会話は良い物だったかと言われると……そうでもない。
『私は貴方と仲良しこよしをする気はない』
俺から話かけると、サンゲツにそう言われた。
その時の俺は、なんだこいつ……!?と思ったし、憎たらしい奴だとも思ったさ。
けれど、俺はそれでも、サンゲツのことが気になって仕方がなかった。
時折見せる笑顔が儚くて、美しい……そんな彼のことがますます好きになってしまう自分が、心の何処かに居たんだ。
そんなある日、俺はサンゲツにあるものを送った。
四葉のクローバーで、幸せを呼ぶと言う物……それをサンゲツに渡したんだけど、アイツからは「ありがとうございます」と反応は少々素っ気ない物だ。
それはそうだろう……サンゲツからしたら、所詮はただの草を寄こされたと思われてるかもしれない。
どうせ、捨ててるかもと俺が思ったのが数年前。
「あれ?」
それから数年経ったある日に、俺はサンゲツの会社にある住宅スペースでくつろいでいると、テーブルにサンゲツのらしき本が置かれていた。
手作りのカバーがかけられている為、なんの本かはわからないが。
(なんの本だろう?)と少しだけ興味本位で覗いてみると、ポロっと本から何かが落ちた。
きっと、しおりかな……と落ちたものを拾い上げると……俺は目を見開く。
「愛目、ここに私の本を置いていたんですが……知りません……か」
「あ……サンゲツ……」
俺が落ちたしおりをみて、硬直しているとバッドタイミングでサンゲツが入ってきた。
サンゲツは自分の本を持っている俺のことを見て、驚いたような表情をしている。
「何をしているんですか……貴方」
「ご、ごめん。ちょっと気になっちゃったからさ」
返すよと俺は本をサンゲツに渡すと、サンゲツはあれと首を捻る。
「しおりがないですが……隠しました?」
「か、隠してないよ。最初から見た時に挟まってなかったし……」
俺はしどろもどろにそう答えると、サンゲツはジッと怪訝そうな表情をしながら、俺のことを見つめていた。
そして、背中に隠していたしおりをバッと取る。
咄嗟に隠してしまったそれを取られてしまい、俺はあっと声を出してしまう。
「……やはり、隠してましたね」
「……ごめん」
俺がそう謝罪をすると、サンゲツは全くといった感じでため息を吐いた。
「けれど……持っていてくれてたんだね。それ」
「え?あぁ……まぁ、捨てるのもなぁ……と思いまして」
それだけですよと言いながら、サンゲツは部屋を後にしていった。
けれど、その顔は少しだけ赤らめていたことを俺はバッチリと見逃さなかった。
END
届かない……
「お前なんて価値がないんだよ」
その言葉は俺の思ってる言葉じゃない。
サンゲツに対して、価値がないだなんて思ってない。
けれど、俺から出てくる言葉はサンゲツを傷つけるだけの言葉だけ……。
口を止めたくても、何かが俺の意識を乗っ取ってくる。
俺の口から出てくる言葉のせいで、サンゲツは無表情に涙を流すばかりだ。
そんな顔をさせたいわけじゃないのに……本当は笑っていてほしいのに……そんな想いはサンゲツには届けられることはない。
それから……俺とサンゲツは別れざるえなくなった。
これ以上、サンゲツを傷つけたくなかったから。
END
ラブソング
タカトビがCDを出す度に、サンゲツはそのCDを買っていた。
何故、買ってしまのかは分からなかったが、彼が最初に出したCDを聞いてからなのは確かだ。
タカトビの歌はまるで、誰かに謝罪と愛を歌ってるようにサンゲツは思えた。
けれど、タカトビが自分にしてきたことを悔やんでるなんてサンゲツは一ミリも思えなかったけど。
だけど……。
『君との日々を取り戻したい』
必ず出てくる、このフレーズを聞くたびにサンゲツは涙を流していた。
すいません、今回はお題の話じゃないです。
二次創作です。
ちょっとBL注意で。
月のお姫様は罪人になる
ふと、目が覚めると……サンゲツは何処かのショッピングモールに立っていた。
(……何処だここ……?)
サンゲツは今、自分の居る場所をキョロキョロと見回しながら思う。
彼が立っていたのは、100円均一のような雰囲気の場所である。
周りには様々な道具が鎮座しており、壁には百円ショップのロゴが描かれていたから、おそらく百円ショップであろう。
「なんで、私はこんな所に……」
そう言いながら、サンゲツ歩き出そうとした瞬間だ。
「!」
すると、背後から何者かが追ってきているような音が聞こえて、サンゲツは振り返る。
振り返った瞬間に、大きな蟹の鋏が伸びてきて、バッと避けて、距離を取る。
サンゲツはそちらを見ると、そこに居たのは蟹の腕をした怪人が立っていた。
(なんなのでしょうか?この怪人)
怪人を見ながら、サンゲツは内ポケットに収納していたカードを取り出して、そこから刀を召喚する。
刀を構えて、蟹の怪人と対峙する。
だが、すぐに蟹の怪人が動き出して、サンゲツに攻撃を加えようと動く。
鋏をパカッと開けて、そこからシャボン玉が連続で放射される。
サンゲツはそのシャボン玉を刀で瞬時に切り裂いていき、カニ怪人と間合いを取っていく。
カニ怪人の近くまで行くと、怪人の腹部に刃を突き刺す。
怪人は刃を突き刺された瞬間に絶命した。
「怪人が居るのは面倒ですね……さっさと出ましょうか」
サンゲツは100円ショップエリアから、出ようとしたが……頭上からポタッと液体のような物が落ちてきた。
上を向くとサンゲツは目を見開く。
そこには蜘蛛のような姿をした怪人が居たからだ。
「ここは怪人の巣窟ですか……」
舌を打ちながら、サンゲツは刀を向けようとしたが、それよりも早く蜘蛛糸が体に巻き付かれてしまう。
そのまま、糸はぐるぐるとサンゲツの体に巻き付いていく。
「っ」
サンゲツは逃れようと動くが、既に糸は体の全身を覆っていた。
足もまとめて拘束されたせいで、体制を崩してその場で倒れてしまう。
サンゲツが倒れたのを見、怪人は頭上からくるっとバク転をしながら着地する。
そして、捕らえたサンゲツをお姫様のように抱きかかえて、何処かへと歩き始めた。
(何処に連れて行こうって言うんですか……)
サンゲツは怪人におとなしく抱きかかえられながら思う。
怪人の向かっているのは、百円ショップを出て横に設置されている滑り台だけが設置されているスペースだ。
そのスペースに着くと、怪人はサンゲツを穴の中に押し込んで、中に入れる。
滑り台で入れられた先は子供が遊ぶような玩具が散乱されている広場だ。
中央には映画が見れそうな程の大きなモニターが置かれている。
「な、なんですか……ここ……」
サンゲツは異様な空間に困惑していると、突如、モニターが砂嵐を起こし……何かを映し出した。
「……」
モニターに映し出されたのは、銀色の髪をした少女のような少年だった。
『小鳥や動物、クリーチャーと呼ばれる物たちの前で歌を歌う美しき音楽に愛されし少年。
その歌声は何者をもを魅了する……かぐや姫のような少年は大きくなるにつれて、不幸の世界へと引きずり込まれてしまう』
気味が悪いナレーションと共に映し出されているのは、少年が大きくなっていき、汚れていく姿だった。
愛してくれていたと思っていた人に傷つけられて、愛に恐怖を抱いてしまった少年が青年へと変わっていく。
『不幸の世界へと引きずり込まれた青年は、黒い月の仮面を付け、銀色の妖刀を手にし、お姫様からナイトへと変わっていく。
汚れても良い。愛されなくてもいい。……ただ、この刃で戦い続けると決めた青年は輝く月の元で赤い宝石を砕いていく』
段々とモニターに映し出されてくるのは、刀を持ち、血濡れた姿で立っているサンゲツ自身だった。
モニターに映し出されている自身の姿を見、サンゲツはキッと睨みつける。
だから、なんだ……自分が悪に堕ちたことなど、当に自覚をしている。
けれど……次の瞬間、ナレーションはこういった。
『けれど、青年は愛を諦めることが出来なかった。心の奥底では……誰かに愛されることを願っている』
「は……?」
ナレーションの衝撃的な言葉で、唖然としてしまうサンゲツ。
『愛を欲していることに自覚していない青年は自分の心に無視をし続ける。無視を続けていると、ある日……出会ったのだ』
そこまで言い終えると、突如、蜘蛛の怪人が現れてサンゲツを立たせてある部屋へと連れて行く。
次に入れられた部屋は座布団だけが置かれているシアタールームのような場所。
その場所に座らされたサンゲツはまたもや映し出されているモニターに目を向けた。
『青年は出会ったのです。光のような笑顔をする無邪気な雷の戦士に』
「……」
次のモニターに映し出されているのは、ヒカルだった。
モニターの中で映し出されているヒカルは無邪気で純粋な笑顔をしている。
『雷の戦士と出会い、青年の心は徐々にその戦士に惹かれていた。どんなに輝く宝石よりも、ずっと綺麗だと青年は思っていた。
けれど、青年は戦士に触れることを戸惑った。それは自分は罪人で、戦士は偉大な英雄だったから。それでも、青年は彼と共に過ごしていくうちに、彼に恋をしてしまったのだ』
ナレーションは淡々と続けていく。
その無機質な声を聞きながら、サンゲツはそのモニターに目を向け続ける。
映像を見ながら、サンゲツは断片的に何かを思い出しかけていた。
『けれど、ある日。青年はかつて愛した人に堕とされて……大きな大きな鉄の蛇に飲まれてしまった』
次にナレーションの言った言葉を聞いた瞬間に、サンゲツは思い出す。
そう……自分はもう……。
『さぁ……”地獄”に行く前に最後に愛した人に会いましょう』
その言葉と共に、全身を拘束していた糸は解かれていき、目の前に誰かの手を握り、涙を流しているヒカルの姿が現れた。
ヒカルは涙を流しながら、誰の腕かもわからない手を握りながら、「サンゲツ……」と零す。
涙を流している愛した人にサンゲツは告げた。
「ヒカル様……ありがとう……そして……」
『 』
そう告げた後に、サンゲツは地獄へと続く門へとくぐって行った。
END