すみません、題じゃないです。
BL表現があります。
四葉のクローバー
それは初恋だったのか……と言われれば、そうだったのかなと俺は曖昧な答えを言ってしまう。
あの日、ミステリー様の下に来た時に、先に居たサンゲツに目を奪われしてしまっていた。
綺麗な銀髪に、深海みたいに青い瞳……そして整った顔立ちをした容姿……まるで、昔話に出てくるようなお姫様のように俺は思えた。
けど、初めての会話は良い物だったかと言われると……そうでもない。
『私は貴方と仲良しこよしをする気はない』
俺から話かけると、サンゲツにそう言われた。
その時の俺は、なんだこいつ……!?と思ったし、憎たらしい奴だとも思ったさ。
けれど、俺はそれでも、サンゲツのことが気になって仕方がなかった。
時折見せる笑顔が儚くて、美しい……そんな彼のことがますます好きになってしまう自分が、心の何処かに居たんだ。
そんなある日、俺はサンゲツにあるものを送った。
四葉のクローバーで、幸せを呼ぶと言う物……それをサンゲツに渡したんだけど、アイツからは「ありがとうございます」と反応は少々素っ気ない物だ。
それはそうだろう……サンゲツからしたら、所詮はただの草を寄こされたと思われてるかもしれない。
どうせ、捨ててるかもと俺が思ったのが数年前。
「あれ?」
それから数年経ったある日に、俺はサンゲツの会社にある住宅スペースでくつろいでいると、テーブルにサンゲツのらしき本が置かれていた。
手作りのカバーがかけられている為、なんの本かはわからないが。
(なんの本だろう?)と少しだけ興味本位で覗いてみると、ポロっと本から何かが落ちた。
きっと、しおりかな……と落ちたものを拾い上げると……俺は目を見開く。
「愛目、ここに私の本を置いていたんですが……知りません……か」
「あ……サンゲツ……」
俺が落ちたしおりをみて、硬直しているとバッドタイミングでサンゲツが入ってきた。
サンゲツは自分の本を持っている俺のことを見て、驚いたような表情をしている。
「何をしているんですか……貴方」
「ご、ごめん。ちょっと気になっちゃったからさ」
返すよと俺は本をサンゲツに渡すと、サンゲツはあれと首を捻る。
「しおりがないですが……隠しました?」
「か、隠してないよ。最初から見た時に挟まってなかったし……」
俺はしどろもどろにそう答えると、サンゲツはジッと怪訝そうな表情をしながら、俺のことを見つめていた。
そして、背中に隠していたしおりをバッと取る。
咄嗟に隠してしまったそれを取られてしまい、俺はあっと声を出してしまう。
「……やはり、隠してましたね」
「……ごめん」
俺がそう謝罪をすると、サンゲツは全くといった感じでため息を吐いた。
「けれど……持っていてくれてたんだね。それ」
「え?あぁ……まぁ、捨てるのもなぁ……と思いまして」
それだけですよと言いながら、サンゲツは部屋を後にしていった。
けれど、その顔は少しだけ赤らめていたことを俺はバッチリと見逃さなかった。
END
5/9/2025, 10:10:24 AM