もう好きにはならない、けど、嫌いにもなれない
(注意)
BL要素ありです。
苦手な方は飛ばしてください
18歳の時、サンゲツはタカトビと別れた。
理由はタカトビによる、精神的な虐待からだ。
2年間、サンゲツはタカトビと恋愛的な意味で付き合っていた。
けれど、彼の本性が明らかになった辺りから、関係性は主と性奴隷のような関係だった。
『もう、貴方のことは嫌いです』
けれど、2年後のある日……サンゲツはタカトビにそう告げて別れを切り出した。
このまま、一緒に居たら、いつか自分が壊れてしまうと思ったから。
タカトビからは分かったとしか言われなかったが、それ以来、連絡はない。
良かった……と思う反面で、サンゲツの頭の中には今も、タカトビのことを思い出す日々がある。
『お前は幸せになんてならない。俺のような男としか幸せになれないよ』
いつかの日に言われたタカトビからの言葉が蘇る。
あれはどういう意味で言ったのかはわからない。
けれど、サンゲツは思う。
もう、あの人のことは好きにはならない。
けど……嫌いにすらなれないのだ……と。
終わり
君と僕(題)
「おはよう、もう一人の僕」
ある日、目が覚めて顔を洗おうと洗面台に向かえば、鏡に写っている自分が勝手に口を開いてそう言った。
いきなり、そう言われて僕は口をあんぐりと開かせたまま硬直してしまう。
「……君、誰?」
「僕?僕はもう一人の君だよ」
僕が戸惑い気味に問いかけると、もう一人の僕は無邪気な笑顔でそう言った。
頭の整理が追いつかない……なんなんだ?!こいつは??
「ねぇ、それよりさ……早く顔を洗いなよ。遅刻しちゃうよ」
混乱している僕に、鏡の向こうにいる僕はそう言った。
考えても仕方ないと思った僕は顔を洗って、歯磨きをしてから洗面台から離れた。
離れる時に、後ろから「バイバイ、僕」と声をかけられたが僕は反応を示さなかった。
これが、彼との初めての出会いだった。
お題はここまでです。
ここから先はオリジナルBL小説です。
先に出会っていれば
それは、突然かけられた言葉だった。
「オメェって、顔……綺麗だよな」
今日は仕事で、エクシードコーポレーションの社長であるメイソンと会議をしていたサンゲツは会議が終わって、社長室に戻ろうとしたときに、メイソンにそう言葉をかけられた。
メイソンのその言葉を聞いて、サンゲツは一瞬だけ目を丸くするが、すぐにいつもの無愛想な表情になる。
「貴方は他人のことを値踏みするような人間なんですね」
「あ?ちっげぇよ!ただ、思った事を言っただけじゃねぇか」
「なら、貴方はよほど頭が狂ってるなんですね」
ほら、さっさと帰ったらどうですか?とサンゲツは冷たく言い放つ。
そんなサンゲツの態度に、メイソンはへいへいとムスッとしながら、会議室から出ようとした。
「……なぁ、サンゲツ」
「はい。なんですか?」
メイソンに名を呼ばれて、サンゲツはそちらを向いた。
その表情が何処かあどけなさを残していて、メイソンは可愛いと思ってしまう。
「俺はよ……お前の事を誰よりも綺麗だと思ってんだぜ?どんなにきらっきらの宝石や、金貨よりも、可愛い美女よりもな」
そうメイソンは真剣な表情をしながら言った。
あまりにも真剣な表情をしているものだからか、サンゲツは何処か驚いたような表情をしてしまう。
「……言っとくが、こんな恥ずかしいセリフなんてお前にしか言わねぇからな」
じゃあなと言いながらメイソンはドアを開けようと、ドアノブに手をかけようとした瞬間に後ろから肩を掴まれた。
振り向けば、サンゲツが衝動的にメイソンの肩を掴んで、引き留めていた。
「あ……すみません」
そう言いながら、サンゲツはメイソンの肩から手を離して、ふいっと視線を逸らす。
彼のその行動に、メイソンは何を思ったのか……サンゲツの身を自身に寄せた。
「お前……本当はよ……」
「やめてください……」
メイソンが何か言いかけた時に、サンゲツはそれを遮った。
「……それだけは……言わないでください」
「……あぁ。悪かったよ」
サンゲツにそう言われて、メイソンはそれ以上は何も言わなかった。
ただ、サンゲツの身を抱きしめながら、その場にいた。
そんなメイソンにサンゲツも何も言葉にしようとせずに、彼の胸に顔を埋める。
突き飛ばす事もせずに、彼の温もりを感じていた。
(先に……出会ってればよかったのに)
不意にサンゲツは思う。
先に目の前にいる男と出会っていれば、あんなに心をズタボロに傷つけられることなんてなかったのか。
恋愛という感情にひどい恐怖心を抱くことなんてなかったのだろうか。
そんなことを脳裏でぐるぐると考えてしまう。
メイソンもサンゲツのことを抱きしめながら考えていたことがある。
(このまま、こいつを攫って……遠くに行きたい)と。
そんな事をお互いに考えながら、会議室で二人っきりでいた。
END
元気かな
たけしは教室の窓際をぼうっと眺めながら、あの子のことを考えていた。
幼稚園の初恋の人である、七海のことを。
(七海ちゃん……元気かな……)
もう、幼稚園は卒業してお互い中学生だが、それでも時々考えてしまう。
あの時、告白しておけば……今でも会える機会があったのかな……と考えながら。
(まぁ、もう遅いけど)
たけしはそう考えながら、黒板の方へと視線を向けた。
ひそかな想い
僕には密かに想いを寄せている人がいる。
可愛くて、ふわふわしてて、笑顔が素敵な人。
授業中に思わず、みてしまうほどに惹かれてしまう。
僕は、そんな彼女に恋をしていた。
あの子にそっと伝えられる
あの子のことが好き。
けれど、伝える勇気が出なくて、ずっと片想いのまま。
今日こそはと息巻いても、結局は伝えることが出来ないまま明日を迎えてしまう。
もう諦めた方が良いのかもしれないと思った時、あの子が近づいて来た。
そして、僕の耳元でそっとこう言ったんだ。
「好き」と。