すいません、今回はお題の話じゃないです。
二次創作です。
ちょっとBL注意で。
月のお姫様は罪人になる
ふと、目が覚めると……サンゲツは何処かのショッピングモールに立っていた。
(……何処だここ……?)
サンゲツは今、自分の居る場所をキョロキョロと見回しながら思う。
彼が立っていたのは、100円均一のような雰囲気の場所である。
周りには様々な道具が鎮座しており、壁には百円ショップのロゴが描かれていたから、おそらく百円ショップであろう。
「なんで、私はこんな所に……」
そう言いながら、サンゲツ歩き出そうとした瞬間だ。
「!」
すると、背後から何者かが追ってきているような音が聞こえて、サンゲツは振り返る。
振り返った瞬間に、大きな蟹の鋏が伸びてきて、バッと避けて、距離を取る。
サンゲツはそちらを見ると、そこに居たのは蟹の腕をした怪人が立っていた。
(なんなのでしょうか?この怪人)
怪人を見ながら、サンゲツは内ポケットに収納していたカードを取り出して、そこから刀を召喚する。
刀を構えて、蟹の怪人と対峙する。
だが、すぐに蟹の怪人が動き出して、サンゲツに攻撃を加えようと動く。
鋏をパカッと開けて、そこからシャボン玉が連続で放射される。
サンゲツはそのシャボン玉を刀で瞬時に切り裂いていき、カニ怪人と間合いを取っていく。
カニ怪人の近くまで行くと、怪人の腹部に刃を突き刺す。
怪人は刃を突き刺された瞬間に絶命した。
「怪人が居るのは面倒ですね……さっさと出ましょうか」
サンゲツは100円ショップエリアから、出ようとしたが……頭上からポタッと液体のような物が落ちてきた。
上を向くとサンゲツは目を見開く。
そこには蜘蛛のような姿をした怪人が居たからだ。
「ここは怪人の巣窟ですか……」
舌を打ちながら、サンゲツは刀を向けようとしたが、それよりも早く蜘蛛糸が体に巻き付かれてしまう。
そのまま、糸はぐるぐるとサンゲツの体に巻き付いていく。
「っ」
サンゲツは逃れようと動くが、既に糸は体の全身を覆っていた。
足もまとめて拘束されたせいで、体制を崩してその場で倒れてしまう。
サンゲツが倒れたのを見、怪人は頭上からくるっとバク転をしながら着地する。
そして、捕らえたサンゲツをお姫様のように抱きかかえて、何処かへと歩き始めた。
(何処に連れて行こうって言うんですか……)
サンゲツは怪人におとなしく抱きかかえられながら思う。
怪人の向かっているのは、百円ショップを出て横に設置されている滑り台だけが設置されているスペースだ。
そのスペースに着くと、怪人はサンゲツを穴の中に押し込んで、中に入れる。
滑り台で入れられた先は子供が遊ぶような玩具が散乱されている広場だ。
中央には映画が見れそうな程の大きなモニターが置かれている。
「な、なんですか……ここ……」
サンゲツは異様な空間に困惑していると、突如、モニターが砂嵐を起こし……何かを映し出した。
「……」
モニターに映し出されたのは、銀色の髪をした少女のような少年だった。
『小鳥や動物、クリーチャーと呼ばれる物たちの前で歌を歌う美しき音楽に愛されし少年。
その歌声は何者をもを魅了する……かぐや姫のような少年は大きくなるにつれて、不幸の世界へと引きずり込まれてしまう』
気味が悪いナレーションと共に映し出されているのは、少年が大きくなっていき、汚れていく姿だった。
愛してくれていたと思っていた人に傷つけられて、愛に恐怖を抱いてしまった少年が青年へと変わっていく。
『不幸の世界へと引きずり込まれた青年は、黒い月の仮面を付け、銀色の妖刀を手にし、お姫様からナイトへと変わっていく。
汚れても良い。愛されなくてもいい。……ただ、この刃で戦い続けると決めた青年は輝く月の元で赤い宝石を砕いていく』
段々とモニターに映し出されてくるのは、刀を持ち、血濡れた姿で立っているサンゲツ自身だった。
モニターに映し出されている自身の姿を見、サンゲツはキッと睨みつける。
だから、なんだ……自分が悪に堕ちたことなど、当に自覚をしている。
けれど……次の瞬間、ナレーションはこういった。
『けれど、青年は愛を諦めることが出来なかった。心の奥底では……誰かに愛されることを願っている』
「は……?」
ナレーションの衝撃的な言葉で、唖然としてしまうサンゲツ。
『愛を欲していることに自覚していない青年は自分の心に無視をし続ける。無視を続けていると、ある日……出会ったのだ』
そこまで言い終えると、突如、蜘蛛の怪人が現れてサンゲツを立たせてある部屋へと連れて行く。
次に入れられた部屋は座布団だけが置かれているシアタールームのような場所。
その場所に座らされたサンゲツはまたもや映し出されているモニターに目を向けた。
『青年は出会ったのです。光のような笑顔をする無邪気な雷の戦士に』
「……」
次のモニターに映し出されているのは、ヒカルだった。
モニターの中で映し出されているヒカルは無邪気で純粋な笑顔をしている。
『雷の戦士と出会い、青年の心は徐々にその戦士に惹かれていた。どんなに輝く宝石よりも、ずっと綺麗だと青年は思っていた。
けれど、青年は戦士に触れることを戸惑った。それは自分は罪人で、戦士は偉大な英雄だったから。それでも、青年は彼と共に過ごしていくうちに、彼に恋をしてしまったのだ』
ナレーションは淡々と続けていく。
その無機質な声を聞きながら、サンゲツはそのモニターに目を向け続ける。
映像を見ながら、サンゲツは断片的に何かを思い出しかけていた。
『けれど、ある日。青年はかつて愛した人に堕とされて……大きな大きな鉄の蛇に飲まれてしまった』
次にナレーションの言った言葉を聞いた瞬間に、サンゲツは思い出す。
そう……自分はもう……。
『さぁ……”地獄”に行く前に最後に愛した人に会いましょう』
その言葉と共に、全身を拘束していた糸は解かれていき、目の前に誰かの手を握り、涙を流しているヒカルの姿が現れた。
ヒカルは涙を流しながら、誰の腕かもわからない手を握りながら、「サンゲツ……」と零す。
涙を流している愛した人にサンゲツは告げた。
「ヒカル様……ありがとう……そして……」
『 』
そう告げた後に、サンゲツは地獄へと続く門へとくぐって行った。
END
5/3/2025, 10:05:47 AM