名無し

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3/21/2025, 6:41:13 AM

私が今でも思い出すのは、温かい大きな手。

いつも家事してくれているその手は、少しカサカサで。

土曜日に遊園地に行ったあの日も

友達と喧嘩して学校に呼び出されたあの帰り道も

悩んで悩んで眠れなかったあの夜も

全部優しさで包みこんでくれた。

見上げたその横顔は、どんな表情だったんだろ。




ピッ─ピッ─ピッ─ピッ─

無機質な機械音が響く白い部屋。

あの頃よりも皺が刻まれた横顔を見つめていたら、静かに目が開いた。

「…お母さん、おはよう。」

「…………ねえ………」

「…っえ?ど、うしたの?」

ここ最近は言葉を発することなんてなかったのに。

「あのね、お願いがあるんだけどね、いい?」

ゆっくりと、確かに紡がれた音。

その言葉は私がそれを欲しがった時に必ず言っていた言葉で。

まだ、覚えていたんだ。

心に優しい風が吹き込んでくると共に、言われようのない悲しい雨にも襲われる。

「さいごにね、」

最後なんて言わないでよ。












手を繋いで

3/11/2025, 8:26:56 AM

もしも願いが1つ叶うならば

貴方と、ここではない何処かで出会いたかった

ただ毎日笑いあって生きることができたのなら

どれほど幸せか

今は呼吸音にさえ貴方との空間を邪魔されたくない

この世界が終わる五秒前、貴方は何を遺す?

「私の願いはただ1つ。最期の時まであんたと共にいることだよ」

嗚呼、これは貴方の願いを叶えようとした壮大な神の我儘

訂正しよう、僕の願いは


貴方の望みが、全て叶えられること。



地球へ突進してくる隕石は、彼女の笑顔を照らしていた。











願いが1つ叶うならば

1/3/2025, 11:21:37 AM

「今年の抱負」

今年の抱負か……

何にしようかな。 

去年は、そもそも何にしたっけ

毎年考えはするものの、どうせ1月が終わる頃には忘れてんだろうな

早朝5時の朝焼けが目に突き刺さる。

まあ、そんなの考えなくていいか。

もうすぐ終わるんだし

今年の抱負、それは






誰よりも先に、楽になること



─ガタンッガタンッ…ガタンッガタンッ…

電車のライトに照らされたところで、記憶は切れた。

12/1/2024, 6:36:57 PM

光と影に距離なんてない

光があればすぐそこに影ができる

誰よりも眩しいあなたにもジメジメした影があるの?

誰よりも苦しんでるあなたにも暖かい光があるの?

距離なんてないはずなのに

どちらかに囚われている間は

片方の存在に気づくことすら出来ない



距離

10/16/2024, 11:55:55 PM

私を今、包むのは、やわらかな光。

遠くから聞こえる小鳥のさえずりと共に

朝日は、私を歓迎する。

秋空は、天高く

それでいて、案外小さい。

かと思えば、途方もなく遠かったり。

貴方と私をきっと祝福する、やわらかな光。

光のヴェールを纏い、今日も靡かせながら歩く。

秋の少し冷たい風に靡いたヴェールは、私の心を温かく包みこんだ。



やわらかな光

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