名無し

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「ねえねえ、聞こえてる〜?」

耳元に聞こえてくる声は少し高めだ。

「…聞こえてるよ」

「よかった!今日も、会いにきちゃった」

「別に駄目だとは行ってないからいいけど…」

彼女と話すとき、僕はいつもより抑えめで声を出している。

窓際に立つ彼女は僕の事を見上げながら話を続ける。

「今日はね、学校行ったんだけどね、」

「……学校とかあるんだ」

「そりゃあるよ!私だって、もう17に、なるんだからね!」

この子は高校生だったのか、もう。初めて会ったときは確かにもっと小さかった気がするような。

「クラスで、イケメンとか、言われてる子、見に行ったの。でもやっぱり、まささんには、敵わないよなぁって!」

「褒めても何もでねえぞ…」

「いいの!私が、言いたかっただけ………ッキャ、」

窓から強い風が吹く。

彼女が飛ばされないか不安になった僕は急いで窓を閉める。

「…ありがとう…」

この子の姿を確認するために、初めて買ったメガネの位置を調節する。

「ねえ、大きくなったらさ、ここに、住んでいいんでしょ?」

「あー、まあ言ったけどさ……」

「ね、私もう、来年成人だよ!いいでしょ?お願い!!」

「…………」

僕はまだ、答えを出すことは出来ない。

この世界は、彼女にとって危険が多すぎる。

「………とりあえず、手のひら、乗っけてよ!」

「…ん、ほらよ」

手のひらに収まってしまう小さな小さな彼女。

小さな彼女は、僕に小さな愛を与え続けてくれている。



小さな愛

6/25/2025, 1:24:45 PM