名無し

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「好きになった方が負け、とか言う言葉あるじゃん?」

放課後、彼女と横並びで帰っていた途中の一言。

駅まで徒歩15分程度、夕日が沈みかけた静かな田んぼ道に彼女の声が響く。

「…あ〜、あるかも、ね」

すこしピンとくるようなこないような。

「あれさ、納得いかないんだよね、私」

すこし高い位置にある横顔は、不満げな感情を隠しきれていない。

ほら、まゆ毛が下がっちゃってる。

「なんで?」

「だってえ………
負けってなんか、マイナスな意味じゃない?」

「そうだな〜」

「大切な相手を好きになれたっていうのに、負けはおかしいよね〜って!むしろ勝ちだよね!大優勝!」

「……すこし、ニュアンスが違う気もするけどな。」

「え〜?どういうこと?」

「僕的には…好きになった相手には敵わないから、負けって言葉を使ってるんだと思うけど。」

「あ〜、そうゆうことなの?」

「うん、」

やっぱり彼女と話すのは楽しい。僕にはないような新しい考えを持ってきてくれる。

僕は、一度立ち止まって彼女の顔をまっすぐ見つめる。

「………どうしたの?」

「いや、なんでもない。」

どうしようもなく彼女に惚れ込んでいる僕にとっては、勝ち負けなんてどうでもいいよな、なんて考えていただけ。

もうすぐ、駅のホームに着いてしまう。




勝ち負けなんて

5/31/2025, 3:05:12 PM