春って言えば良いイメージが浮かぶ
子供達がはしゃぐ姿に、桜が舞う風景
ちょっと、遠くに行けばそこには桜が満開で、
とても心地よい気分になるはずだ。
私だってもうすぐ入学式がある
新しい制服で、見知らぬ道を歩んで行く
あーだったら良いなー。
こーだったら良いな~と毎回現実と理想を行ききし、ついには錯乱する
LINEの通知を待っては、絶望しはたと寝る。
それの繰り返し。
花が咲き乱れて、外では光で満ちていく
外は綺麗で、自分が醜くなって、
まるで、無能なニートになった気分。
君がいない世界で、私はどのように生きれば良い?
どんな私を演じれば良い?
そうあれこれ考えているうちに、
酷い睡魔に襲われる。
部屋の中には散在する錠剤と
アルバムに写り込む無邪気な君
ただ、それだけでよかったんだ
桜が舞う窓の上で、透き通る何かが宙に揺れる
唇は、朱色に染まって、頬には赤みがさしている
窓からは春の穏やかな風が、外ではウグイスの鳴き声が
ただ、それだけでよかったんだぁと
そんな春の憂鬱だった。
「あーばあちゃん、久しぶり!!そうそう俺だよ!俺」
おばあちゃんは、ゆっくりとした口調で言う。
「あー、英也くん?どーしたの急に?」
「なんかさ、俺の友だちが事故ったみたいでさ。今から100万円必要なんだよね。でもさ、ばーちゃん。そいつに借りがあってよ、見捨てるって訳にわ、、、」
おばあちゃんは、ゆっくりとため息をつく
「ひでちゃん、おばちゃん今そんなお金無いよ、、、」
「そこをなんとか!!」
「英也!!」
その時一瞬で空気が硬直した。
「何のために、あんたのお母さんが命削ってまで有名高校にいれたと思ってるの?彼女とか何とか言うてますが、気が揺るんでるんじゃないの?こんなんじゃろくな大人にな、、、」
「チッ、クソババーが。」
その瞬間プツンと電話が切れた。
「ちょっ、ひでちゃん?ひでちゃん!!」
おばあちゃんが呼び掛けたが、返答はなかった
「ねぇ、ばあちゃん。英也ここにいるけど?」
ばあちゃんは、口をポカーンと開けて
「どっ、ドッペルゲンガー?」と呟いた。
おばあちゃんは不思議そうに受話器と僕を見る
「違うよ。きっと、詐欺だよ。ほら、今日テレビでやってたやつ。」
おばあちゃんは、納得したように顔を明るくする。
「あぁ、池上◯のテレビでもやってたねぇ!。」
「詐欺って、、おばあちゃんでも引っ掛かるもんなんだね、」
僕は、孫がいる前でも騙されるおばあさんに驚いていた。、
「、、、で詐欺師がなんて?」
ばあちゃんは、間をおいた後ゆっくりと言った。
「クソババーって、全く最近の世の中は、、、。」
僕は正直心のなかで、逆にダーメジを食らったなと少し哀れに思った。
そのころ詐欺師は、何かすごい当たってるし痛いところつつかれたなって思っていた。
きっとおばあちゃんに詐欺師は
「「二度とこない(しない)!!」」
「この曲が好きなんだよねー」
「えっ!そうなの私も!!」
今日もまた嘘をつく。
たくさんの人に愛嬌のある嘘をつく。
もともと、私なんて存在しない
何かに感化されて、行く宛もなくただふらついている。
ただ、普通の人になりたくて
あの女子高生やあの男子高生のように笑いたくて
肩を並べて、古い仮面を破って生きている
あぁ使い勝手の良い仮面。
ある日男が言ったとさ
「君の全てが好き」だって
私の全てって何でしょう。
嘘だらけで出来た私の何がお好きなのでしょう?
明日には、変わっているかもしれないのに
私のどこがお好きなの?
ある日君が退屈そうにこう言った
「君の透明感が好き」だって
「辛うじて、生きてる感じが好き」だって
そうして君はそう言った
「君のことが好き」だって
そりゃ、そうでしょう
君が好きなもの、言われて嫌なこと
自分を押し通してまで、全部
君が好むように演じてるから
君が見てる私は私なんかじゃないし、私自体の原型もそもそも無い。でも嫌われたくわない
だって人間って興味がないと来ないでしょ?
だから、いつも嘘をつく。
化けの皮を剥がした私はたいそう醜いんだろうなって考えながら路上を歩く。
正直こんな自分が嫌いだ
演じる私が嫌いだ
人を傷つける私が嫌いだ
人に合わせる自分も、意味もなくいきる人生も全部全部嫌いだ。
いっそのこと、透明になって消えちゃえば良いのに。
「もう少しで、卒業式だね、、、」
「、、、だね。高校は結局どこ行くの?」
もう、空は薄暗くなっていた。
「A高にいくよ。受かったらだけど、、」
「って言って、どうせ受かるんだろ??俺のみにもなってみろよ?俺なんてB高はE判定なんだよ!」
彼は、疲れきった顔でそういった
「1年生から授業サボってたくせによく言えたもんだよー、康生は」
「うるさい!.」
彼のことなら、なんでも知っている。誕生日、志望校、好きなものそして嫌いなものも、、、全部そう全部、、、
私は、ゆっくりと帰る支度をしながら、周りを見渡した。「もう、卒業式か、、、」
3年前の入学式が昨日のように感じられる。
康生と3年間一緒になって、あっという間に過ぎてって、、、
「あー、そう言えば国語の無印良品さ、俺ばっかり叱ってたけど、今思えば何か悲しいと言うか虚しいと言うか、、」
「2年生の?あの人毎回同じ服着てたよね、あの先生ワイシャツ何枚持ってるんだろう?そもそも、私は叱られたこと無けどね」
私は、胸を張ってそう答えた
「って言うか、康生サイテー。人のコンプレックスをつついていじめるなんて、、、」
「理科の先生は、猿みたいな顔だから、ペキン原人。数学の田中先生は、頭の天辺がはげてるからフランシスコ.ザビエルin田中とかさ?酷くない?先生きっと、心の中で泣いてるよ??、確か康生のさあだ名もあったよね?上間天ぷらの売れ残った天かすだっけ??存在薄すぎん?」
「俺は、そのあだ名気に入ってから、いいじゃんか。中学生らしくてよ、」
「でも、みんな個性があって好きだった、」
康生はボソッと呟いた。
「結局最後は良い思い出になるんだよなー」
「うん、そうだね」私はそっと空を見る。
もう空は、暗くなっていた。私たちがこうして話している間にも、限られた時間は進んでいる
どんなに懇願したって、一時さえも止まらない。
「おっ、そろそろ帰るか、」
ああー、ずっと好きだったのに。1年生の頃からずっと
「、、、うん。そうだね」
全部知り尽くしてるつもりだった。
でも、今私が彼にできることは何だろう
「何つったってんの?、、、まさか泣いてる?」
私は、涙をグッとこらえた
「ちょっと、お前痛い!!」私は、康生を強く押した
「なにグズグズしてんのよ。康生のバカ!!早く帰るよ」康生の裾を強く引っ張ってそう言った。
「はいはい、お嬢様仰せのままに」
空は、今までにないくらい、とても美しかった
「バイバイ、康生」私は小さく手を振った。きっともう会うことはできないのかも知れない。この先もきっと。最後の別れと思い私は思わず声が漏れ出てしまった。今どんなにあなたの事を知っていても、いつかはもう知ることどころか見ることさえもできなくなる。運命なんてあっけない。
大人になるにつれてどんどん貴方が遠くなっていく。もしそうなる運命と知っていたのなら「出会わなければよかった」
「美保先生は、1ー6の学級担任になったの?」
「ええ、まぁ」私は、おどおどしながらそう答えた「なんたって美保先生は、もう3年めでしょう?ベテラン先生じゃない!頑張ってね」
学年主任は、そう言っているけどあまり気がのらない。なんといっても問題児が存在するからだ
しかも、たった3年でベテラン教師だなんて、、教員不足にも程があるのでは?と私は少し疑問に思う。
まぁ、何とか1年乗りきろう、、、
「おはようございます!では出席をとりますよ。えっと、1番東 リサさん、、、2番、」
そして27番まで来て、見覚えのある漢字と名字がでてきた。「30番、、、岡山 康大くん」そうよんだ瞬間、周りがざわついた。「センセーすごっ!.こいつのさ名前読めないやつ多いのに、、確かお前の父ちゃんもじゃね?」私は一瞬ドキッとした
「康大君のお父さんの名前って、、、?」私はできる限りの力を振り絞って声をだした。「康生、
岡山 康生ですよ」、あぁそうなんだ。私は心のなかで、何かが切れたように感じた
「先生、、?」その声で、私は我に返った。
「出席を続けます。では31番、、、」
もう自分には関係ないんだ、、私にとっても彼にとっても、、自分にそう言い聞かせながら。