まる子

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「もう少しで、卒業式だね、、、」
「、、、だね。高校は結局どこ行くの?」
もう、空は薄暗くなっていた。
「A高にいくよ。受かったらだけど、、」
「って言って、どうせ受かるんだろ??俺のみにもなってみろよ?俺なんてB高はE判定なんだよ!」
彼は、疲れきった顔でそういった
「1年生から授業サボってたくせによく言えたもんだよー、康生は」
「うるさい!.」
彼のことなら、なんでも知っている。誕生日、志望校、好きなものそして嫌いなものも、、、全部そう全部、、、
私は、ゆっくりと帰る支度をしながら、周りを見渡した。「もう、卒業式か、、、」
3年前の入学式が昨日のように感じられる。
康生と3年間一緒になって、あっという間に過ぎてって、、、
「あー、そう言えば国語の無印良品さ、俺ばっかり叱ってたけど、今思えば何か悲しいと言うか虚しいと言うか、、」
「2年生の?あの人毎回同じ服着てたよね、あの先生ワイシャツ何枚持ってるんだろう?そもそも、私は叱られたこと無けどね」
私は、胸を張ってそう答えた
「って言うか、康生サイテー。人のコンプレックスをつついていじめるなんて、、、」
「理科の先生は、猿みたいな顔だから、ペキン原人。数学の田中先生は、頭の天辺がはげてるからフランシスコ.ザビエルin田中とかさ?酷くない?先生きっと、心の中で泣いてるよ??、確か康生のさあだ名もあったよね?上間天ぷらの売れ残った天かすだっけ??存在薄すぎん?」
「俺は、そのあだ名気に入ってから、いいじゃんか。中学生らしくてよ、」
「でも、みんな個性があって好きだった、」
康生はボソッと呟いた。
「結局最後は良い思い出になるんだよなー」
「うん、そうだね」私はそっと空を見る。
もう空は、暗くなっていた。私たちがこうして話している間にも、限られた時間は進んでいる
どんなに懇願したって、一時さえも止まらない。
「おっ、そろそろ帰るか、」
ああー、ずっと好きだったのに。1年生の頃からずっと
「、、、うん。そうだね」
全部知り尽くしてるつもりだった。
でも、今私が彼にできることは何だろう
「何つったってんの?、、、まさか泣いてる?」
私は、涙をグッとこらえた
「ちょっと、お前痛い!!」私は、康生を強く押した
「なにグズグズしてんのよ。康生のバカ!!早く帰るよ」康生の裾を強く引っ張ってそう言った。
「はいはい、お嬢様仰せのままに」
空は、今までにないくらい、とても美しかった
「バイバイ、康生」私は小さく手を振った。きっともう会うことはできないのかも知れない。この先もきっと。最後の別れと思い私は思わず声が漏れ出てしまった。今どんなにあなたの事を知っていても、いつかはもう知ることどころか見ることさえもできなくなる。運命なんてあっけない。
大人になるにつれてどんどん貴方が遠くなっていく。もしそうなる運命と知っていたのなら「出会わなければよかった」


「美保先生は、1ー6の学級担任になったの?」
「ええ、まぁ」私は、おどおどしながらそう答えた「なんたって美保先生は、もう3年めでしょう?ベテラン先生じゃない!頑張ってね」
学年主任は、そう言っているけどあまり気がのらない。なんといっても問題児が存在するからだ
しかも、たった3年でベテラン教師だなんて、、教員不足にも程があるのでは?と私は少し疑問に思う。
まぁ、何とか1年乗りきろう、、、
「おはようございます!では出席をとりますよ。えっと、1番東 リサさん、、、2番、」
そして27番まで来て、見覚えのある漢字と名字がでてきた。「30番、、、岡山 康大くん」そうよんだ瞬間、周りがざわついた。「センセーすごっ!.こいつのさ名前読めないやつ多いのに、、確かお前の父ちゃんもじゃね?」私は一瞬ドキッとした
「康大君のお父さんの名前って、、、?」私はできる限りの力を振り絞って声をだした。「康生、
岡山 康生ですよ」、あぁそうなんだ。私は心のなかで、何かが切れたように感じた
「先生、、?」その声で、私は我に返った。
「出席を続けます。では31番、、、」
もう自分には関係ないんだ、、私にとっても彼にとっても、、自分にそう言い聞かせながら。




1/30/2025, 4:52:31 PM