愛を注いで
最近仕事ばかりで、疲れが取れていない貴方。
今日は珍しく定時で上がれそう。
(やった!明日は休みだし、
帰ってゆっくり休める♪)
そんなことを思っていると.......。
「うわぁ〜!センパイ〜助けてくださいぃ〜」
と貴方を呼ぶ声が聞こえた。
誰だろうと分かっていながら振り返ると、半泣きの部下が貴方に重大な書類を、見せながら嘆いていた。
貴方は溜息をつきながら、部下に分からないところを聞き出そうと思い、返事をした。
「何処が分からないの?」と言うと部下は、
「いやぁ、お恥ずかしながら、全部ですwww」
と答えた。
貴方は唖然としていました。この部下はよくこの会社に入れたなと、内心違う意味で褒めてしまった。
しかも、この書類は次のプレゼンで使うとても重大な書類でした。貴方は部下にやらせたら間に合わないと思い、部下を帰らせて残業をしました。
やっと終わった頃は、もう0時を過ぎていました。
貴方は歩いて家に帰ろうとしていました。
歩いていたら、お洒落なBARを見つけました。
(こんな所にBARなんてあったけ?)と思いましたが、何となく入ってみることにしました。
カランカラン.......。
と音を立てながら扉を開け入ってみると、内装もお洒落でした。店の中には人はおらず、休業なのかなと思っていると、奥からマスターらしき人が出てきました。マスターは貴方を見ると、
「いらっしゃいませ。特別なお客様。」
と言われました。
(特別なお客様.......?)と思っていると、
「はい、貴方は特別なお客様です。どうぞおすわりください。」
とマスターに言われるがまま、カウンターに座りました。マスターはニコリと微笑むと、貴方に出来たてのカクテルを出してくれました。
「えっと...?まだ何も頼んでいませんよ?」
マスターは「いいえ、貴方は頼んでいなくても、こちらが理解していますので。」
と不思議な事を言いました。
「貴方は今、誰かに“愛を注いで”欲しいと思っていますね。」
「何故それを知ってるの?」と問いかけるとマスターは答えました。
「ここはお客様一人一人にあったカクテルをお出ししております。なので“特別なお客様”なんですよ。」と優しい笑みを浮かべながら答えた。
貴方はカクテルを一口飲んで見ました。
このカクテルは今まで飲んできた中で一番と言っていいほど、美味しいものでした。
貴方の中で何かが満たされたような気がしました。
小一時間ほどマスターと会話をした後、貴方は帰るために会計を済ませようとしました。ですがマスターは止めました。理由を聞くとマスターは言いました。「お会計は済んでおります。お客様から頂くのはお金ではございません。」貴方は払うのを辞めて、扉に手をかけました。帰る前にマスターに「また来ていいですか?」と聞くとマスターは答えました。「はい。また“特別なお客様”になられましたら。」と答えました。
後日貴方はあのBARのあった場所に行ってみましたが、そこは何もありませんでした。
心と心
心と心が通じ合えば
どんな人だって分かり合える
何でもないフリ
《もう“何でもないフリ”しないで...
ちゃんと俺を頼れよ.......》
「何かあったら言いな?」
「うん」
「助けて欲しかったら言って?
何時でも助けるから」
「有難う...」
「ちゃんと相談してよね?
倒れられても困るから」
「はい...。わかリました。」
「虐めでも受けてるの?」
「いイえ、そんナ事ないデスよ?」
「そんな事も出来ないの?」
「すみマセン...」
「これだから×××××は」
「ゴメンナサイ...」
「もういいよ
もう信用もしないし
頼らない
もう助けないから
早く×××?」
「.......」
-夕暮れ時-
1人の少女が屋上に立っていた。
「もう××たいな.......」
そう少女は呟いた。
少女は屋上の柵に手を掛けた。
「もうこの世界には...私を必要としている人も、助けてくれる人も居ない。」
そう誰かに言うように零した。
少女は柵の外側に立ち、最後の言葉を口にした。
「さよなら...世界。次に生まれてくるなら...ちゃんと𝑯𝑨𝑷𝑷𝒀 𝑬𝑵𝑫の世界がいいな...。」
少女はいきよいよく飛び降りた。
-ガシ!-
???「ふざけるなよ...!
何が〈さよなら、世界〉だ!
俺はお前が居ないと、生きてく意味が無いだろ!」
少女は驚いた。少女の恋人が少女の腕を掴んでいた。恋人は少女を引き上げ、床に腰を下ろした後、少女を力一杯抱きしめた。
少女はその人の温もりに包まれて泣いてしまった。
もう“何でもないフリ”しないで...。
ちゃんと俺を頼れよ.......。
少女は後悔した。
どんなに少女の周りの人が、否定したり虐めたり、助けてくれなくとも、この人が少女の生きる意味を示してくれると言う事を。
手を繋いで
僕はいつからここに居るのかな...。
もう何年も暗い部屋の中で過ごしている。
お母さんもお父さんも僕を置いて、どこかに行っちゃった。
もう僕は何をしていいか分からない。
暗い部屋の中1人の少年が、部屋の真ん中で足を抱え、虚ろな目で虚空を見つめている。
もう生きることを諦めたような表情をしている。
俺は町を散歩していたら、一軒の廃墟の様な家を見つけた。
廃墟に見えたけど、誰かいるような気配がした。
俺はその家に入ってみることにした。
家の中は暗くて昼間なのに、夜中の様な暗さだ。
家の中の一部屋一部屋見て回った。
俺が歩く度にギィギィ音がなる。
男は廃墟の様な家を見つけた。
人が住んでいるように見えないが、微かながら人の気配を感じた男は、その家の中に入ってみることにした。
家の中は昼間なのに、真夜中のように暗く先が見えないぐらいだった。
男はスマホの光を頼りに廊下を歩き始めた。
僕はぼーっとしていたら、廊下からギィギィと音が聞こえてきた。
《え?何?怖いよ.......。誰か助けて》
そう思った。怖くなって部屋の隅に行き、音を立てないように我慢した。
少年は廊下から聞こえてきた音に恐怖を感じ、部屋の隅に行き、息を殺して音が過ぎていくのを待った。
《最後は子供部屋か...。》なんて思っていたら、中からガダッと音が聞こえた。誰かいるのだろうか。
そう思い扉を開けた。
僕は怖くて怖くて、部屋の隅で震えていたら足が机に当たりガタッと音を立ててしまった。
その時扉が開いてしまった。
「え?子供?なんでいるの?」
『:( ; ´꒳` ;):』
「あ!ごめん!
脅かす気は無いんだよ!」
『おにいちゃん』
「ん?」
『だれ?』
「ごめんね。
怪しい人じゃないよ」
『ほんとに?』
「うん」
「俺の名前は〈S〉
君の名前は?」
『〈R〉』
「R君か」
「R君は此処で何をしているの?」
『すんでる』
「え?親御さんは?」
『いない』
「じゃぁ、ひとりぼっち?」
『うん』
「じゃぁ、俺ん家に住もう!」
『え?いいの?』
「いいよ!おいで」
少年は暗い暗い部屋から、男と手を繋いで明るいとても明るい外へ出た。
帰る時少年は疲れてしまったのか、男に抱かれながら帰った。
つないだ手は、決して離さない。
ありがとう、ごめんね
俺は暇つぶにBARで飲みに来た。
そしたら、カウンターで青年が1人で物思いにふけていた。
俺はそいつの隣に座りそいつに話しかけた。
「なぁ、そんな一人で飲んでないで俺と話そうや」
そう呟くように言うと、『じゃぁ、とある人の昔話を聞いてくれるなら。』と言った。俺は無言で頷くと青年は、ぽつりぽつりと語りだした。
-××年前-
とある〈R〉という男がおったそうだ。
そのRはとても綺麗な心を持っていた。
誰にでも平等に接するし、進んで人助けをしたりしていたそうだ。Rは簡単に言うと【人間の鑑】と言えるほど、しっかり者だったらしい。
ある日、Rにも好きな人が出来たらしい。
そのRが好きになった人は【同性】の人らしい。
Rが好きなった人は、皆から好かれているとても格好良い人だったらしい。
そいつの事は〈K〉とでも呼んでおこうか。
だけど、その時は同性愛が認められなかった時代たったから、Rはとても苦しんだそうだ。
この想いを伝えていいのかと。
だけどRは勇気を出してKに告白した。
Kの答えは《NO》だったらしい。
Rはその時から分かっていて告白したらしいな。
Kはこう言ったらしい
《ありがとう、ごめんね 君の気持ちは嬉しい。だけど僕は同性とは付き合えないんだ。》
Rは諦めが着いた。いやむしろ、諦めが付いていたのかもな。
KはこれからもRと今までの関係を続けてくれると言った。
だがな、その言葉は[嘘]だったらしい。
次のRは学校に行くと、周囲から冷ややかな目で見られたらしい。変だなと思いながら席に行くと、机にはマジックで悪口が書かれていたらしい。それ以来Rは、学校に行く度に虐められたそうだ。
日に日にエスカレートしていった。
遂にRは学校に来なくなり、辞めていったらしい。
Rが居なくなった後はいつもの日常に戻った。
ある日こんな噂が流れていた。
《Rが壊れた》
Rは学校に来なくなった日から、部屋に閉じこもり何時間も歌っていたそうだ。
歌はとても悲しそうに歌われていたそうだ。
理由は振られたのではなく、Kが約束を破ったからだそうだ。
後日知った話だがな、
Rは元々両親が居なくて、一人暮らしをしていた。
KはRの家に行ったらしい。
だけど、その家はもう別の家族が住んでいた。
その家に人に聞くと、Rはその家族に家をあげたらしい。
その家族に、Rは今どこにいるか聞いたそうだが、その家族にもRの居場所は分からないそうだ。
Rは家族に家をあげてからは、行方不明らしい。
俺は青年の話に聞き入っていた。
青年のグラスに入っていた、氷がカランと音を立てて溶けた。
青年は「どうだった俺の創作は」と言った。
俺は驚いた。本当にあった話かと思っていたのだ。
「まじ.......?すげぇな。」
青年は嬉しそうに表情を綻ばせた。
「まぁ.......創作じゃないと〈R〉の事分からないもんな.......」
俺がそう言うと、青年から一瞬笑顔が消えたような気がした。だが、すぐに戻った。
俺が変なこと言った?と聞くと、青年は『なんでもないよ』と答えた。
青年はそろそろ帰るよといい会計を済まして、扉に手をかけた。扉が閉まる前に青年がこちらを振り返って、鬼の形相で睨んできたような気がした。
そういえば青年が帰る前にこう言っていたような
『〈K〉は未だに〈R〉に謝りに来てない』