SHADOW

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ありがとう、ごめんね

俺は暇つぶにBARで飲みに来た。
そしたら、カウンターで青年が1人で物思いにふけていた。
俺はそいつの隣に座りそいつに話しかけた。
「なぁ、そんな一人で飲んでないで俺と話そうや」
そう呟くように言うと、『じゃぁ、とある人の昔話を聞いてくれるなら。』と言った。俺は無言で頷くと青年は、ぽつりぽつりと語りだした。

-××年前-
とある〈R〉という男がおったそうだ。
そのRはとても綺麗な心を持っていた。
誰にでも平等に接するし、進んで人助けをしたりしていたそうだ。Rは簡単に言うと【人間の鑑】と言えるほど、しっかり者だったらしい。

ある日、Rにも好きな人が出来たらしい。
そのRが好きになった人は【同性】の人らしい。
Rが好きなった人は、皆から好かれているとても格好良い人だったらしい。

そいつの事は〈K〉とでも呼んでおこうか。

だけど、その時は同性愛が認められなかった時代たったから、Rはとても苦しんだそうだ。
この想いを伝えていいのかと。
だけどRは勇気を出してKに告白した。
Kの答えは《NO》だったらしい。
Rはその時から分かっていて告白したらしいな。
Kはこう言ったらしい
《ありがとう、ごめんね 君の気持ちは嬉しい。だけど僕は同性とは付き合えないんだ。》
Rは諦めが着いた。いやむしろ、諦めが付いていたのかもな。
KはこれからもRと今までの関係を続けてくれると言った。

だがな、その言葉は[嘘]だったらしい。

次のRは学校に行くと、周囲から冷ややかな目で見られたらしい。変だなと思いながら席に行くと、机にはマジックで悪口が書かれていたらしい。それ以来Rは、学校に行く度に虐められたそうだ。
日に日にエスカレートしていった。
遂にRは学校に来なくなり、辞めていったらしい。
Rが居なくなった後はいつもの日常に戻った。

ある日こんな噂が流れていた。

《Rが壊れた》

Rは学校に来なくなった日から、部屋に閉じこもり何時間も歌っていたそうだ。
歌はとても悲しそうに歌われていたそうだ。
理由は振られたのではなく、Kが約束を破ったからだそうだ。

後日知った話だがな、
Rは元々両親が居なくて、一人暮らしをしていた。
KはRの家に行ったらしい。
だけど、その家はもう別の家族が住んでいた。
その家に人に聞くと、Rはその家族に家をあげたらしい。
その家族に、Rは今どこにいるか聞いたそうだが、その家族にもRの居場所は分からないそうだ。
Rは家族に家をあげてからは、行方不明らしい。


俺は青年の話に聞き入っていた。
青年のグラスに入っていた、氷がカランと音を立てて溶けた。
青年は「どうだった俺の創作は」と言った。
俺は驚いた。本当にあった話かと思っていたのだ。
「まじ.......?すげぇな。」
青年は嬉しそうに表情を綻ばせた。
「まぁ.......創作じゃないと〈R〉の事分からないもんな.......」
俺がそう言うと、青年から一瞬笑顔が消えたような気がした。だが、すぐに戻った。
俺が変なこと言った?と聞くと、青年は『なんでもないよ』と答えた。

青年はそろそろ帰るよといい会計を済まして、扉に手をかけた。扉が閉まる前に青年がこちらを振り返って、鬼の形相で睨んできたような気がした。

そういえば青年が帰る前にこう言っていたような

『〈K〉は未だに〈R〉に謝りに来てない』

12/9/2023, 7:04:16 AM