たやは

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12/18/2024, 12:15:01 PM

冬は一緒に

秋から冬にかけて木々の葉っぱが落ちて枝だけになると枝にとまっている鳥がよく見えるようになる。冬はバードウォッチングの季節だ。

冬は一緒にフィルドワークに出かけませんか?

そんな堅苦しいことは言いません。近所の河原や公園てもバードウォッチングは充分楽しめます。カラスやスズメはもちろん、シジュウカラ、キジ、ウグイスなどなど身近に鳥はいます。余りにも近すぎて双眼鏡で見てみるなんてしませんよね。でも、試してみて下さい。可愛い鳥たちに癒されて、バードウォッチングの魅力にハマるかもしれません。

冬になると雪の振る雪原で大型の鳥を見ることができます。1番見ててみたいのは、北海道の流氷の上を飛ぶオジロワシ。数百羽の群れが越冬のためにやってきます。大きな羽を広げた姿は、凛々しく雄大だ。
自然を肌で感じることができるのもバードウォッチングの魅力の1つかもしれない。

北海道の冬。それも流氷の上。当たり前だがめちゃくちゃ寒いはず。寒さとバードウォッチングは切り離せないが、澄んだ空気がその姿をより美しく見せることもある。

きっと、オジロワシを見たら寒いなんて言っいられない。写真に納めないと。スマホを構えて連写しているはずだ。

考えているとワクワクしてくる。今度の冬は北海道へ行きたい。

12/17/2024, 12:56:55 PM

とりとめのない話

「ごめんね。とりとめのない話して。」

華子は驚いて姉の顔を見た。
今のがとりとめのない話なのか。本当の話かもしれない。姉は申し訳なさそうに下を向いたままだ。

「お姉さん。もう一度ゆっくり話して。」

「え。うん。」

華子の父は町の銀行の頭取をしていたため、町のみんなから信頼される人物だった。よく父はいろいろな相談ごとを受け、町の人のために力を貸していたと思っていたのに。そうではなかったのだ。

「昨晩、お父さんの所にお客さんがくることは知っていたの。私、あの方とお知り合いになりたかったから、お父さんに用事があるふりをして客間に向ったの。」

お姉さんが父の部下で銀行の支店長に好意を持っていたことは、私も知っていた。お姉さんは自信がないくせに行動が分かりやすい。きっと父もにもバレていたに違いない。

「部屋の前まで行ったら2人の話し声が聞こえて。」

『金庫の金は全て船に移したか』
『はい。頭取。先ほど全て終わらせました。明日には警察がやって来くるかと思います。心配はありません。金は怪人が盗んでいったのです。』
『そうだな。あの脅迫状があれば大丈夫』

「私、恐ろしくなってそのまま戻ってきてしまったの。あの方が怪人だったなんて」

怪人とは巷を騒がせている怪盗のことだが、それがお父さんの部下?その怪人が
お父さんの銀行のお金を盗んだ?
そんなことがあるのだろうか。
怪人は人殺しはもちろん、相手に怪我さえ負わせたことはないと噂になっている。

「ごめんなさい。きっと聞き間違いだったのよ。本当にごめんなさい。変な話して。あの方が怪人なんてねぇ。バカバカしいでしょ。」

確かにお父さんの部下の人が怪人とは思えない。でも、金庫のお金が本当になくなっていたら。船って何のことなの。
お姉さんは自分の聞き間違いだとか、とりとめのない話だとか言っているが、もし本当だったらどうしよう。
お父さんは銀行のお金を何処かに移動させた。横領だ。表では人権派のような顔をして、裏では銀行のお金を横領している。
私たちには優しいお父さん。私もお姉さんもそんなお父さんが大好きだ。
横領なんて辞めさないといけない。
でもどうやって辞めさせればいいのか分からない。

コンコン。

部屋の窓を叩く音がした。
ここは洋館の3階にある部屋でバルコニーはついていない。誰が叩いたのか。
勇気を出して窓を開けると、外には黄金のマスクを被った怪人が屋上から吊るされたロープに捕まり3階 までおりてきていた。

「君は賢い女性だ。真実は必ず暴かれるのだから、選択を間違えてはダメだよ。明日、君がお姉さんから聞いたことをみんなの前で話しなさい。いいね。あとは、僕が自分の名誉を回復させる。」

翌日、私はみんなの前でお姉さんから聞いた話をした。お父さんは怒り、こいつは頭がおかしい。幻聴が聞こえるくらい狂っていると私を罵った。そこにいたのは私たちに甘く優しいお父さんではなく、鬼の形相をした金の亡者だった。

「お嬢さんが言っていることは本当のことですな。あなた方がお金の運搬に使った船がこの先の湾内で見つかりましたよ。支店長さんも乗っていらしゃいました。もう言い逃れはできませんな。」

銀行から連絡を受けていた警察は、頭取であるお父さんのことも疑っていたらしい。

警部さんがお父さんに詰め寄ったが、お父さんはそれでも自分の罪を認めず銀行のお金を盗んだのは怪人だ。銀行に金を寄越せ、さもないと銀行を爆破するとの脅迫状が届いた。だから金を渡すために船に乗せたと騒ぎだした。

その時広間の電気がパッと消えた。どこからか声が聞こえてきて、自分は怪人だと名乗った。

「僕は脅迫状なんて送ったことはありませんよ。今までに一度もね。脅迫なんかしなくても欲しいものは頂きますからね。例えば、船の中お金。あれは僕に濡れ衣を着せた慰謝料でもらっておきます。支店長さんに怪人が協力感謝していたとお伝え下さい。」

支店長も始めはお父さんの横領に加担していたが、何回も横領し金額が大きくなるにつれて良心の呵責に耐えきれず、警察に協力を申し出た。でもその警察は偽物で怪人の変装だったそうだ。

結局、お父さんは横領の罪で警察に逮捕された。あの声の怪人はあの場にいたのか分からず姿もなかった。
でも、広間を出ていく警部さんが私にウインクをして行った。

あの警部さんが怪人だったのだろうか。

私たちの今までの生活は、足元から崩れていくことだろう。頭取の令嬢として煽てられて生きてきた私たちにとっては茨の道だ。
私は本当に正しい選択をしたのだろうか?
怪人に踊らされただなのかもしれない。
それでも、私はお父さんの娘として、償いながら自分の足で生きて行かなければならない。

12/16/2024, 10:59:24 AM

風邪

昨日から咳が止まらない。喉も痛く熱もある。まさに風邪だ。
最近の風邪はたちが悪い。インフルエンザにコロナと予防接種をしてもかかってしまうものばかりだ。どちらも出勤禁止が5日間ほど続き、家からは出られない。ひたすら家で寝て過ごすしかない。本当に風邪なのかと疑いたくなる。

小さい頃は、鍵っ子で仕事から帰ってくる両親を1人で待つ子供だった。そんな鍵っ子だった私は、風邪をひくとおばあちゃんの家に預けられた。
誰も信じないけど、おばあちゃんの家には小人さんが何人かいた。小人さんは、私が布団で寝ていると枕元にやってくる。
枕元にやって来た小人さんはみんなで私の頭を一斉にヨシヨシするのだ。優しい小さい手を感じているとうとうとしてくる。

「ゆっくりお休み。」

誰かの小さいな声が聞こえた。

目が覚めると小人さんは居なくなってしまうが、不思議と風邪は良くなり熱もなく、喉の痛みも引いている。

今もおばあちゃんの家には小人さんが住んでいるはず。

12/15/2024, 12:11:25 PM

雪を待つ

雪深い山間の町の雪見風呂が名物の小さな宿が私の家だ。家族経営の宿で父が料理長で母が女将をしていて、従業員なんていない。私は宿の手伝いをしながら通信制の高校に通っている。

ある日、父が1ぴきの白い犬を拾ってきた。山で山菜を取っていたら、気がつくと父の後ろでお座りしていたそうだ。お人好しの父は犬を可哀想に思って宿に連れて帰ってきた。犬はシロと呼ばれ、家族だけでなくお客さんにも可愛がら、宿の看板犬となっている。

冬になり雪が降り始めると駅前のホテルはスキー客や雪見みの露天風呂目当てのお客さんがたくさん訪れる。
うちの宿も冬の方がお客さんが多いが、最近はシロを目当てにやってくる人がいる。

ある常連さんはシロを撫でながら囲炉裏のそばで静かにお酒を飲む。

「優しい時間だった。」

1人で来られた女性の方は、雪道をシロの散歩に出かけ、1時間後には雪だらけになりながら笑顔で帰ってきた。 

「楽しかった〜」

別の女性も1人で来られた方だった。夕食の間シロを膝に乗せていたが、食欲がないと伺っていたのに出された食事を全て食べていた。

「美味しかったです。こんなに食べたのは久しぶりです。

シロと接したみんなが元気になっていく。
不思議な犬。シロ。
私たち家族はシロのことが大好きだし、お客さんにも愛されいるシロ。

「シロはね。弱ってる人がわかるのね。」

母も仕事に行き詰まるとシロがそっと寄り添ってくれて、シロに励まされたと言っていた。

夏が苦手なシロだか、冬にになり雪を待つ頃には、シロに癒されたいお客さんがやって来る。

大きなホテルのような豪華な料理や雪見のできる露天風呂付きの部屋はないけれど、
疲れた心と体を癒しにうちの宿に来ませんか。特に冬、雪を待つ季節がオススメです。

12/14/2024, 1:12:10 PM

イルミネーション

冬の始まりを知らせる駅前のイルミネーションが点灯した。点灯式にはたくさんの人が集まり、役所の人が作ったイルミネーションを笑顔で見つめている。

こんな田舎臭い地元が嫌いだ。
高校を卒業したら都会の大学に進学する。そして、都会の本物のイルミネーションを見るのが夢だ。

その夢がやっと叶った。大通りの街路樹に何万個ものLEDライトが取り付けられ、それが点灯すればきらびやかなイルミネーションとなる。点灯式では芸能人がカウントダウンを行い、テレビで中継されることもある。これが本物のイルミネーションだ。
やっぱり都会はいい。豪華だけれど薄暗さも持ち合わせた大人の街だ。
ずっとこの街で生活していきたい。大学生活も終わりに近づき、そろそろ就活の時期だ。

いったい何社の面接に行っただろうか。みんな同じようなスーツを着て、面接でも同じような受け答えをする。私は誰にも見つけられることなく都会に埋もれていく。

気がつくと地元に帰ってきていた。地元の駅前のイルミネーションの電球の優しい明かりが見えてくると涙が溢れた。
ここは変わらない。

「おかえり。寒かったでしょ。」

玄関を開ければそこには笑顔の母がいる。
ついこの間まであった日常がこんなにも温かいものだったなんて気がつかなかった。また涙が出た。

今は地元が好きだ。
大学を卒業して地元の小さな運送会社の事務をしている。都会ほどの刺激はないが、私の名前を呼び、私に声をかけ、私を認めてくれる仲間や友人、家族がそばにいる。
こんなにも幸せなことはない。

冬になったらみんなで駅前のイルミネーションを見に行きたい。

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