イルミネーション
冬の始まりを知らせる駅前のイルミネーションが点灯した。点灯式にはたくさんの人が集まり、役所の人が作ったイルミネーションを笑顔で見つめている。
こんな田舎臭い地元が嫌いだ。
高校を卒業したら都会の大学に進学する。そして、都会の本物のイルミネーションを見るのが夢だ。
その夢がやっと叶った。大通りの街路樹に何万個ものLEDライトが取り付けられ、それが点灯すればきらびやかなイルミネーションとなる。点灯式では芸能人がカウントダウンを行い、テレビで中継されることもある。これが本物のイルミネーションだ。
やっぱり都会はいい。豪華だけれど薄暗さも持ち合わせた大人の街だ。
ずっとこの街で生活していきたい。大学生活も終わりに近づき、そろそろ就活の時期だ。
いったい何社の面接に行っただろうか。みんな同じようなスーツを着て、面接でも同じような受け答えをする。私は誰にも見つけられることなく都会に埋もれていく。
気がつくと地元に帰ってきていた。地元の駅前のイルミネーションの電球の優しい明かりが見えてくると涙が溢れた。
ここは変わらない。
「おかえり。寒かったでしょ。」
玄関を開ければそこには笑顔の母がいる。
ついこの間まであった日常がこんなにも温かいものだったなんて気がつかなかった。また涙が出た。
今は地元が好きだ。
大学を卒業して地元の小さな運送会社の事務をしている。都会ほどの刺激はないが、私の名前を呼び、私に声をかけ、私を認めてくれる仲間や友人、家族がそばにいる。
こんなにも幸せなことはない。
冬になったらみんなで駅前のイルミネーションを見に行きたい。
12/14/2024, 1:12:10 PM