花畑
私の国はこれと言った産業もなく国土のほとんとが山岳地帯と呼ばれる貧しい国だ。自慢があるとすれば、豊かな自然に育まれた綺麗で豊富な水があること。
そんな国だ。
水は至るとから湧いているので、青く透き通った池や民家の近くには井戸が多く、水を求めて動物や鳥もたくさん集まって来る。自分たちが食べる農作物を作るため、険しい山道を歩いて小さな農地へ向かうが、その途中で小さな小さな花が咲いているのを見つけた。
「こんなところにお花が咲いている」
妹はニコニコと嬉しそうに花に駆け寄っていった。
鬱蒼と茂る木々の間の小さなスペースに日の光が当たり、鳥が種を運んできたのだろうか、黄色の小さな花が咲いていた。
2、3輪の小さな花だか、この辺りでは花を見ることさえ珍しい。私たちにとってはこれでも立派な花畑だ。
「毎日見に来ようね。お姉ちゃん」
それから毎日、花畑の様子を見てから畑に通うよになった。1日中家事の手伝いや畑仕事に追われている私たちにとって小さな花畑は掛け替えのないものとなった。
でも、ささやかな幸せな時間は、水を求めて侵攻してきた隣国によって打ち砕かれてしまった。
空からはドローンの爆撃がやまず、地上では手に銃を持った隣国の兵士が次々とやつて来ては建物や畑を壊している。
私たちは住む場所を追われ、難民となり国を出なければならない。
私たちの国なのに。
私たちの家、畑なのに。
貧しい生活だったけど、そこには私たちだけの楽しい生活があった。
返して欲しい。
前と同じ暮らしを生活を返し欲しい。
どうして私たちだけが虐げられ、我慢を強要されるのか。
あの花畑はどうなってしまたのだろう。もう2度見ることの叶わない花畑を思い、ぬかるんだ道を裸足で歩き難民キャンプへ向かう。私たちはどうなってしまうのか。
誰にも分からない。
暗い道が続いているだけ。
空が泣く
今にも泣き出しそうな空模様だ。今日は午後から雨だと朝の天気予報で言っいた。お天気お姉さんの言う通りとなった。傘を持ってきたからそんなに濡れずに帰れるだろう。でも私の気持ちは憂鬱だ。
彼女は泣いていた。
たしかにに泣いていた。
高1の頃から、彼女が東くんのことを好きなのは知っていた。なんだったら友達として応援していたのも事実だ。それなのに、東くんに告白されたは私だった。少し人見知りのところがある彼女のためになればと、東くんに事あることに話しかけたり、部活の見学に2人で行き、声援を送ったりしていたが、まさか私が告白されるとは思ってもいなかった。
どうしよう。
もちろん告白の返事は「ごめんなさい」だったが、それで彼女との友達関係が以前のままなはすがない。
どうしよう。
彼女は私が告白されたことを知っている。どうして、あの告白の場所に彼女がいたのか。魔が悪すぎる。
どうしよう。
明日、彼女に何て話しかけたらいいのか。
いや、今日のうちに何かメッセージを送っておいた方がいいか。何て送ろう。
ダメだ。考えていたら気持ちが悪くなってきた。寝てしまおう。現実逃避だ。
次の日学校へ行くと彼女の周りに何人かの女子が集まっていた。教室に入ると悪意のある視線がいくつか私に向けられていた。
これヤバイ奴か。
「よく平気な顔して学校に来れるわ。」
「仲取り持つ降りして、自分をアピールしてたとか。最悪じゃん。」
はぁ~。
まあそうなるよね。
女子の中心で彼女は泣いていた。ハラハラと大粒の涙を流しながら泣いていた。
本当の涙だと思った。そんなに好きだったのか。でも私のせいではない気もする。
仕方がない。ほとぼりが冷めるまで様子を見ながら過ごすしかない。
あれから2週間が経ったが、私の立場は良くはならなかった。体育館の裏に呼び出されることはないが、私はいわゆるボッチとなった。
ホームルームも終わり下駄箱まで来た時忘れ物に気づき教室に戻った。教室のドアに手をかけようとしたら、教室のなかっから話し声が聞こえた。
「おい。あんなことして良かったのかよ」
東くんだ。
「あんなことって何?私があの子嫌いなの知ってるでしょ。東くんが協力してくれて良かった。こんなに上手くいくなんて思ってなかった。だいたい、あの子、生意気なのよね。私たち友達なのなんて思ったこともないし、本当に嫌いなのよ」
え!
何?何の話し!
私たちは友達だった。いつも一緒にいて、お弁当を2人で食べ、いっはい話しもしたし、笑い声が絶えなかったはずだ。
彼女は私が嫌い。それ、どういうこと。
頭が回らない。意味が分からない。
「やり過ぎただろ。おまえ。あんな空泣きみたいなことまでしてさ。」
空泣き。つまり嘘泣き。あの涙は嘘泣きの涙なんだ。
私は騙された。そんなに私のこと嫌いだったのか。
高校を卒業するまであと3ヶ月くらいあるけど、彼女と前のように友達でいることも
誰か新しい友達ができることもないだろう。でも、もし何年か後に彼女に会ったらどうして私を嫌いか聞いてみたい。
彼女に今は聞く勇気がない。
また雨が降りそう天気。今にも空が泣き出しそう。空が泣く。私の心も土砂降りだ。
君からのLINE
定時に仕事が終わり、帰宅するためにバスに乗る。バスは混んでいて座ることはできないが、駅までならそれほど時間もかからない。駅前のバス停でバスを降りると君からのLINEに気がついた。
「ビールない。買ってきて。」
それは一大事。宅飲みできるビールがなければ今日1日が終わらない。仕事の疲れがあっても、コンビニに寄ってビールを4本買ってから帰る。
君からのLINEに気づいて良かった〜。
気がつかなければ、今日はビールなしになるところだった。
良く冷えたビールを飲み、君の作った料理を食べ、僕の1日はゆっくり、ゆっくり終わっていく。
小さな幸せ。
バンザイ。
命が燃え尽きるまで
命が燃え尽きる。
それは死を意味するのだろうか?
時間とともに誰にでも平等にいつか訪れるもの。
命が燃え尽きるまで、ずっと戦い続けるのは辛いから時々は休憩しながら、あなたと2人で静かで穏やかな生活をその時が来るまで送っていきたい。
夜明け前
夜勤が終わる夜明け前。
身体的にも精神的にも自由になるまであと少し。やっと解放される。
頑張れ。頑張れ。
と自分に言い聞かせ、朝日を眺めながらボーとする短い時間。
昨日の夕方からひっきりなしに聞こえてくるサイレンの音。救急車かパトカーか、はたまた消防車か。このサイレンは運命の別れ道だ。
プルプル〜
◯◯救急です。交通事後の方で右足に痛みあります。足を動かすと痛みが強くなるため、一時的に固定をしています。
バイタルは…。
こんな入電ばかりだ。
夜間は本当にいろいろな人がやって来る。
鼻血が出て止まらない。お腹が痛い。
手をスライサーで切った。子供の熱が下がらない。お風呂で転倒した。
重症者から順番に診ていくが、待つのは辛く苦情も多い。苦情対応も仕事の1つだ。
それでも、「夜中に悪いねぇ。ありがとう」なんて言葉を貰えれたら「これからもがんばろう」と思える。自分って割と単純だ。
緊張の連続で責任重大な仕事だけど、その分やりがいのある仕事だ。